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コラム

2019-01-20 10:20 追加

パナソニック・陳建禎“隊長”の人気ぶり V1沖縄大会に台湾から大応援団

陳建禎選手の人気ぶり

V1リーグ 男子

2019年01月19日、陳と記念写真を撮る台湾人ファンたち

バレーボールの男子V1リーグのパナソニックパンサーズは1月19日、沖縄県・沖縄市体育館で堺ブレイザーズに、3−0(25−18、25−20、26−24)で勝利した。16年ぶりのVリーグ開催となったこの試合。地元沖縄や日本のバレーファン以外からも大きな注目を集めていた。パナソニックには台湾代表の陳建禎が所属しているからだ。日本ではあまり知られていないが、陳は台湾では非常に人気のある選手。昨年9月のアジア大会では、キャプテンとして20年ぶりに台湾代表を銅メダルに導いたこともあり、母国の英雄的な存在だ。“隊長”(キャプテンの台湾語表記)、“オウガオ”(黒狗の台湾語読み、欧告の中国語読み)”の愛称で台湾のファンから愛されている。試合では残念ながら、第1セットと第2セットにワンポイントブロッカーとして出ただけだったが、それでも陳は「こんなに来てくれて、とても感動したよ」と話していた。

試合後にあったパナソニックのホームイベントが一通り終わり、観客もだいぶ少なくなった体育館内で、陳が「会場内にいる台湾人の皆、今日はありがとう!下に降りておいで!皆で一緒に写真を撮ろう!」とマイクで呼びかけると、会場内に残って陳との交流を待っていた台湾人ファンたちから「ギャー!」と大歓声が起こった。その後、約50人のファン、そして観戦に訪れていた陳の両親も一緒に、陳を囲んで記念写真を撮った。

こちらの台湾人女性は陳へのプレゼントでお菓子をリュック作風に作り上げた

台湾のバレーファン、陳のファンたちにとって待望の沖縄大会だった。台北からバレーボールチーム仲間の男女11人で訪れた30代の台湾人の男性は「沖縄から台湾は1時間で近いですし、見に来ました。月曜は仕事ですが、有休を取りました(笑)。陳選手は台湾で大学時代から有名で人気のある選手です。今度は大阪での試合を見に行きたいです」と嬉しそうに話した。一緒にいた台湾人女性は、陳へのプレゼントを用意。台湾で購入した大量のお菓子をテープで貼り付けて、ランドセル風に作り上げて、試合後にプレゼントした。陳は笑いながら背負っていた。台湾ではこういうプレゼントが普通なことなのかと思いきや、「いや、あれは特別です(笑)」(前出の台湾人男性)。このグループの大半は沖縄が初めてで、一部は翌日の試合を観戦せずに観光するそうだ。また、11月の丸善アリーナでの大阪大会にも訪れていた台湾のラジオ局の女性レポーターは、取材ではなくプライベートとして友人たちと観戦に訪れ「楽しめた!」と喜んでいた。

この日の試合では、陳の出場機会はわずか2回。第1セット、第2セットにワンポイントブロッカーとして入ったのみだ。残念ながら、得点に直接絡む活躍を見せることはできなかった。

2017年12月3日、ヴォレアス北海道時代の陳

昨シーズンはVチャレンジ2(現V3)のヴォレアス北海道に初の国外移籍し、活躍した。そして今シーズン、アジア枠の選手として、期待を受けて入団したが、パナソニックのハイレベルなポジション争いにここまで苦しんでいる。リーグ戦当初から1レグぐらいまではアウトサイドヒッターとして出場の機会を伺ったが、日本代表の福澤達哉とポーランド代表のクビアク・ミハウの壁は大きかった。また、久原翼も与えられた出場機会を生かして、結果を出していたこともあり、アウトサイドヒッターとしては4、5番手の選手となっていた。

それでも思わぬきっかけから、チャンスが与えられ始める。11月の試合で、セッター深津英臣の代わりにワンポイントブロッカーとして登場すると、ブロックポイントを取ったり、切り返しでスパイクを決めた。そこで、川村監督は陳をアウトサイドヒッターの4、5番手からライト側のワンポイントブロッカーとして使い始めたことで、徐々に試合の重要な場面でも起用されていった。陳自身もライト側のポジションにしっくりくるのか、12月にあった枚方大会の試合後には「アウトサイドヒッターと両方こなせるが、どちらかというと、オポジットの方が、代表でもやっていたこともあってやりやすい」と話した。それでもまだまだ物足りなさはある。

陳はキャプテンとして、昨年夏にインドネシア・ジャカルタで開かれたアジア大会で、台湾代表を20年ぶりの銅メダルに導いたが、常に仲間を鼓舞し、ブロック、レシーブ、アタックにサーブと全ての面でハイレベルなプレーを見せていた。アジア大会、ヴォレアス北海道で見せていたプレーをパナソニックの試合でも出せればいいのだが、どこかまだプレーが遠慮がち。チャンスを与えられ始めていた中での、昨年12月の天皇杯・準決勝。陳はクビアクが負傷退場した劣勢の場面で出場し、ここで活躍したらポジションを奪える可能性があった。しかし、スパイクが打てる場面で3回連続、軟打にフェイントと弱気になってしまい、川村監督も試合後、「あそこはシャットされても思いっきりいってほしかった」と残念がっていた。

ただ、持っているポテンシャルは十分高い。この日の試合後、川村監督は「陳はブロックがうまい。そこからの切り返しで、パンチ力もありますし。また、オーバーパスも上手いので、ワンポイントブロッカーとして使った際の切り返しのトスも上げられる」と評価する。また、台湾のファンの熱狂ぶりに「すごかったですね。沖縄には台湾からたくさん来るとは聞いていましたが、こんなに来るのかと。陳が試合前の練習にコートへ出た時の歓声がすごかったですね」と驚いていた。

陳は試合後、「こんなに台湾のファンが来てくれてとても感動している。(出場機会が少ないが)もっと努力して出られるように頑張ります。多くの台湾人ファンが、私の活躍を期待していることはわかっている。明日出場チャンスを伺って、活躍したいですね」と意気込んだ。

会場にいた台湾人たちにスポーツ人気について聞くと、1位が野球、2位がバスケットボール、3位がバレーボールという。3位は意外に高いと思ったが、理由を聞くと、「台湾代表はこの数年、着実に強くなって結果を出しています。そしてアジア大会でも銅メダルを獲ったので皆応援しています」(観戦に訪れていた台湾人男性)とのことだった。

2018年12月8日、試合観戦に訪れた台湾人たち。台北で同じバレーボールチームでプレーしているという。

今シーズン、パナソニックの試合の各会場、特に東京や大阪での試合では、在日台湾人たちを応援する姿を度々見かける。また、在住者だけでなく、旅行と兼ねて観戦に訪れる台湾人たちもよく見かけた。彼らに聞くと一様に「陳選手を応援するために来ました!」と嬉しそうに話す。ちなみに、ヴォレアス北海道に所属していた時も、VチャレンジⅡの試合にも関わらず、日本在住の台湾人たちが試合会場に陳の応援に訪れていた。

陳はヴォレアス北海道で通訳をつけずに、日本語学校に通ったこともあって、簡単な日本語会話はすでに可能だ。会見で一生懸命、日本語で答えようとする姿には好感をいだかせる。プレーはもちろん、人柄も多くのファンに愛される理由なのだろう。20日の試合、またその後も活躍する姿を、台湾人のファンたちにぜひ見せてあげて欲しいところだ。

フォト:陳選手と台湾ファンたちはこちら

写真・文:大塚淳史

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