2016-08-05 16:44 追加
海外女子バレーのすゝめ 第3回 リオ五輪直前!因縁渦巻くA組、混戦必至のB組
リオ五輪女子バレープレビュー
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ロンドン五輪からの4年間が驚異的なスピードで過ぎ去り、世界中を熱くするスポーツの祭典が再び幕を開ける。 厳しい予選を勝ち抜いた各国の選手もリオの地に集い、オリンピックという最高の舞台へ向けて調整を進めている。雰囲気も一段と高まってきた。
リオデジャネイロ五輪・バレーボール競技の決勝戦のチケットは、男女とも即座に完売したそうだ。オリンピック3連覇を目指す女子バレーボールに、ブラジル国民は特に大きな期待を寄せている。激戦・混戦が予想される今大会、ややマニアック?だが注目すべきポイントをいくつか挙げていきたい。
バレーボール競技女子・予選リーグのグループ分けと、決勝トーナメント以降の順位決定方法は以下の通り。
【A組】 ブラジル(開催国、WR2位) ロシア(欧州大陸予選1位、WR4位) 日本(アジア大陸予選1位、WR5位) 韓国(世界最終予選、WR9位) アルゼンチン(南米大陸予選1位、WR12位) カメルーン(アフリカ大陸予選1位、WR28位)
【B組】 アメリカ(北中米大陸予選1位、WR1位) 中国(2015W杯1位、WR3位) セルビア(2015W杯2位、WR6位) イタリア(世界最終予選、WR8位) オランダ(世界最終予選、WR11位) プエルトリコ(世界最終予選、WR17位)
【決勝トーナメント】 A組1位×B組4位 B組1位×A組4位 A組2位or3位×B組2位or3位(抽選により2つの対戦カードを決定) 以降、トーナメント方式により順位を決定
注:WR(世界ランク)は予選グループ分け決定後(2016年7月11日)のもの。また、プエルトリコは自国開催の世界最終予選により出場権獲得
●因縁渦巻くA組
奇しくも今大会は、因縁の対決「日韓戦」で開幕する(日本時間6日よる9時半)。いつからか日本と韓国は「永遠のライバル」などと称されるようになった。これと同様に、他国の対決にも因縁のようなものがあるように思う。特に興味深いのが、ブラジル対ロシアの対決だ。
・長きにわたる、ブラジル対ロシアの因縁
2012年のロンドン五輪。それぞれ予選で別グループに入ったため、準々決勝で早くも両者は激突してしまった。最終セット21-19まで及ぶ死闘となったが、壮絶なぶつかり合いの末にブラジルが勝利。その勢いのままオリンピック連覇を成し遂げた。ただこの準々決勝は、決勝戦と言われても何ら不思議ではないものだった。
両チームの因縁は、少なくとも2004年のアテネ五輪まで遡る。そして2006年の世界選手権、2010年の世界選手権、2012年のロンドン五輪と続く。
2004年 アテネ五輪準決勝 セットカウント2-1とブラジルがリードして迎えた第4セット。終盤に流れを掴み、24-19とマッチポイントを握っていたのもブラジルで、決勝進出は目前だった。しかし、ここからロシアの逆転劇が始まる。ブラジルが出した1本のミスに乗じ、次々と得点を重ねていく。気づけば試合はフルセットへ。最終セット終盤もブラジルが3点のリードを奪い、今度こそブラジルの勝利を確信した。だが、またしても上回ったのはロシアの執念。決勝へ駒を進めたのはロシアだった。
2006年 世界選手権予選・決勝 ブラジルがセットカウント3-1でロシアを下した予選ラウンド。その試合中、両チームの間に緊張が走った。 第4セット中盤、ファビアナの速攻をブロックしたロシア。次の瞬間、ファビアナがロシアコートに怒鳴り始めた。どうやらブロックを決めた直後に、ロシアの選手がファビアナに向かって何かを言ったようだった。ネットを隔てたロシアコートでは、笑顔を浮かべるガモワ。 バレーボールでは、敵チームの選手と激しく口論したり怒鳴ったりするシーンは珍しい。この様子はYouTubeに動画がアップされるなど、大きなインパクトを残した。
両チームは、同大会の決勝でも対戦。またしてもフルセットの激闘を繰り広げたが、予選で敗れたロシアが雪辱を果たし、金メダルを獲得した。2010年世界選手権の決勝でも同じ対戦カードとなったが、この試合もフルセットでロシアが勝利。世界選手権2連覇を成し遂げた。
激情を抑えることなく真っ向からぶつかるブラジルと、冷徹に、淡々と得点を重ねていくロシア。対照的な特徴を持った両チームが対峙する構図が、この対決に魅かれる一因なのではないかと感じる。
今大会のブラジルはシェイラ、タイーザ、ファビアナ、ジャケリネといったお馴染みのメンバーの、まさに集大成だろう。5月に出産したばかりのセッター、ファビオラも復帰し、注目を集めている。母国開催のオリンピックで優勝し3連覇を飾ることとなれば、1990年代最強を誇ったキューバ以来、二度目の快挙となる。2003年から女子代表監督を務め、北京、ロンドンと連覇へ導いた名将ギマラエスの采配にも注目。
一方ロシアは、ロンドン五輪ベストセッターのスタルツェワがドーピング違反で不出場となった。またガモワ、シャチコワといったベテランが引退し、かつてのような絶対感はない。ただ、ゴンチャロワ、コシェレワの二人を中心とした高い攻撃力は健在。オポジットのゴンチャロワは「金メダルを狙える」と自信を覗かせた。
今大会、ブラジルとロシアが予選リーグで同じグループに組み込まれたことは、両者にとって幸運なことかもしれない。両者が決勝トーナメントに進んでも、準々決勝で対戦する可能性がないためだ。そうなれば2006年の世界選手権のように、この因縁の対決を同じ大会で二度、目にする可能性がある。メダル争いに大きく関わるこの対決から目が離せない。
●混戦必至の「死のB組」
予選A組は比較的恵まれたグループといえるが、予選B組は強豪ひしめく「死の組」。今大会、女子バレーボール競技の結果は、予選B組の結果に大きく左右されると言っても過言ではないかもしれない。アメリカ、中国、セルビア、イタリア、オランダの5カ国から4チームが勝ち抜けるとみられるが、逆に言うと、この中から1チームが予選落ちしてしまうということでもあり、それについては本当にもったいない気がしてならない。 ロシアの二枚看板の片翼・コシェレワは「ブラジル、ロシア、アメリカ、中国、セルビア、オランダの6チームが優勝に絡んでくるのではないか」と話した。ブラジルはもちろん、B組に入った4ヶ国も強く警戒しているようだ。
・カギ握るオランダ 96年のアトランタ五輪で5位に入賞して以来、20年ぶりのオリンピック出場となったオランダ。190cmを超えるような高さのある選手がずらりと揃っている。先日行われた練習試合でロシアに勝利するなど、現在最も勢いに乗るチームの一つだ。今大会のダークホースとの呼び声が高い。
オポジットのスローティエス、ウィングスパイカーのバイスやプラクを中心に、どの選手も高さとパワーを兼ね備えている。特に、アタッカーが攻撃に参加しようとする意識が高く、4人以上のアタッカーが同じタイミングで助走することも。相手ブロッカーは最高でも3枚しかいないため、攻撃枚数で優位に立ち、元来備え持った高さからスパイクを打ち込むことができれば、決定力はぐっと上がる。
オランダがこれを徹底し本番に乗り込んできたならば、中国やアメリカ、ブラジルをも倒して番狂わせを起こす可能性もあり、金メダルさえ夢物語ではなくなるかもしれない。また、イタリアに対しては非常に相性が良いため、オランダにとってはイタリア戦が特に重要な試合になりそうだ。
●日本にとっては
日本は予選A組と恵まれたグループに入り、予選通過の可能性は高いとみられている。準々決勝ではB組から勝ち上がったチームと対戦するが、そのB組では優勝候補のアメリカや中国が予選落ちする可能性さえないとは言えない。細かな差でB組の順位が大きく変動することもあり得るため、日本がA組を何位で通過しようと、準々決勝は同等に厳しい試合になる事が予想される。
●「歴史に残る」五輪に…
開幕目前だが、現地でのトラブルは続出。選手村の風呂でお湯が出ない!トイレが流れない!溢れる!といった話をよく耳にするが、それだけではないようだ。中国チームは練習している体育館の停電に巻き込まれ、韓国チームは乗っていたバスの衝突事故に巻き込まれたそう。こういったトラブルを避けるため、日本チームは選手村への入村を見送り、ホテルに滞在することを決めたという。
治安や設備の不安に加え、ロシアのドーピング問題などで直前まで揺れていたリオ五輪。それでもどうにか開幕まで漕ぎ着いた。様々な面で、歴史に残るオリンピックとなりそうだ。
写真:FIVB
第1回 バレー新興国トルコに見る、選手と観客の関係
http://vbm.link/11284/
第2回 ありがとう、監督!― ニエムチェク監督がポーランド・バレー界に遺したもの
http://vbm.link/11779/
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