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コラム

2017-03-11 11:55 追加

激戦必至!愛知ダービー 勝負の鍵は監督の引き出しと“逆サイド” Vプレミアリーグ男子 ファイナル3

ファイナル3見どころ

SV男子

Vプレミアリーグもいよいよ佳境。きょう11日とあす12日、決勝進出をかけた2位、3位による「ファイナル3」が行われる。ファイナル6(レギュラーラウンド上位6チームによるリーグ戦)の2位・豊田合成トレフェルサと3位・ジェイテクトスティングスの愛知県のライバル同士が激突する。試合の極私的な予想とポイントを挙げたい。

恐らく試合の勝敗を分けるのは、監督の采配と“外国人選手の逆サイド”ではないだろうか。特に豊田合成のアンデッシュ監督が、劣勢時にどの様なタクトを振るのか。そして、両チームの得点源、豊田合成のオポジット(OP、主にライト側からスパイクを打つ)のイゴール・オムルチェン、ジェイテクトのウィングスパイカー(WS、主にレフト側からスパイクを打つ)のマテイ・カジースキ、彼らの逆サイド側のアタッカーが得点を重ねることができるか。

豊田合成とジェイテクトは(もっというと東レアローズもだが)、今シーズンの上位チームはチーム構成もコンセプトも非常に似ている。

両サイドを中心の攻撃。センターの速攻も時々に入れるが本数自体は多くない。豊田合成ならオポジット(OP)のイゴール・オムルチェン、ウィングスパイカー(WS)の高松卓矢、山田脩造。ジェイテクトならWSのマテイ・カジースキ、浅野博亮(或いは高橋和人)、オポジットの清野真一(或いは古田史郎)。それぞれサイドの3人が攻撃の軸となっている。

両チームともサーブを軸にした守備戦術が徹底されている。リードブロックで応じ、常にブロックを1・5枚か2枚で相手攻撃に対応する。また、ブロックの間を抜かれない、MBは遅れてでも跳びに行く、吸い込まないといった、ブロッカーの最低限の意識や技術が徹底されている。

ミスを恐れずジャンプサーブで攻め、崩すことで相手攻撃の的を絞り、3枚ブロックで襲いかかる。豊田合成ならイゴールと高松、ジェイテクトならカジースキと浅野がサーバーの時は連続得点が入りやすい。

豊田合成は「イゴール=豊田合成の攻撃全て」と思われるくらい、イゴールにトスが上がり、二枚ブロックがついたとしても、ものともせずに決める。それにより益々相手ブロッカーの意識がイゴールへ寄ってしまうと、豊田合成の思う壺だ。逆サイド(レフト側)の高松や山田にトスがあがり、対峙するミドルブロッカーが遅れてしまい、彼らの鋭いスパイクがコートに突き刺す。豊田合成の基本的な攻撃パターンはこれだ。

ただ、逆にイゴールの調子が落ちると、一気にチーム力が落ちる。それが見えたのがファイナル6の終盤戦だった。イゴールが調子を落とすと、逆サイドの高松と山田にトスが増えたが、彼ら、特に山田がブロックに捕まってしまった。豊田合成随一の高い能力を持つが、一度悪い流れに捕まるとミスを重ね、表情に出るなど悪循環に陥っていた。その際に露呈したのが、アンデッシュ監督の引き出しの少なさだった。イゴールが調子を落とした際の、次の手を見せられず終いで終盤2戦を連敗した。早々とファイナル6突破を決めていたものの、2位突破になってしまった。この一週間でどう立て直せたのか、アンデッシュ監督の手腕が問われる。

ジェイテクトは逆に上昇気流に乗っている。今シーズン、レギュラーラウンド終盤まで苦労していた。レセプション(サーブカット)や高いスパイク決定力を持つ浅野が怪我で長期離脱したことが大きかった。ただ、ファイナル6直前で復帰してから、一気に好転した。浅野が復帰したことで、守備は安定したが、さらに、後衛センターからのバックアタックが増え、チームとして攻撃の幅が増えた。ファイナル6の突破は不可能に近いと思われたが、終盤2戦の戦いぶりは見事だった。その頑張りにバレーの神様が応えたのか、圧倒的に有利だったはずのサントリーサンバーズがまさかの連敗で、ジェイテクトが最後の3枠目に滑り込んだ。

また、ジェイテクトは増成一志監督が辛抱強く起用してきた、若手陣がリーグ終盤から大きく成長した。MB福山汰一と廣瀬優希、セッター久保山尚が試合を重ねて経験することで、プレーにも自信が出てきている。特に守備から攻撃への切り替えしでの福山の速攻攻撃は、高い決定力を持つ。体をひねってコースの打ち分けが非常に上手い。

ジェイテクトも鍵を握るのが、“外国人選手の逆サイド側”だろう。カジースキという世界的な名手をWS、レフト側に置く。カジースキを軸にしつつ、対角を務める浅野も非常い高い決定力を持つ。レフト側からの攻撃は問題ないが、同じ方向からの攻撃が多ければ当然、相手ブロッカーのマークが集中する。そこで重要になるのが、ライト側からの攻撃だ。

シーズン終盤まで増成監督は、古田をOPの第一選択肢にしていた。古田の持つ高い身体能力とセンス、経験値を期待してのことだったろう。しかし、セッターの高橋慎や久保山と共にトスが微妙に合わないシーンが多かった。ライト側のアタッカーが右利きと左利きという違いも微妙に影響したのかもしれない。最後の最後で増成監督はスタメンに清野を選んだ(古田は右利き、清野は左利き)。清野にしたことで、ライト側の決定力があがり、大逆転劇の勝因の一つとなった。

結果的にだが、ジェイテクトの選手層に厚みをもたらすとになった。どのポジションにも計算が立つ選手が一人以上控える。

今日、明日のファイナル3。現時点でのチーム戦力には大きな差は無い。1点を取り合うジリジリとした展開で、フルセットまで激戦になるのではないか。豊田合成のアンデッシュ監督がどんな采配を見せるのか。そして、両チーム共に攻撃の軸を務める外国人選手の“逆サイド側”がどこまで頑張れるのか。この2点を気にしてみると、さらに試合が面白く見えるかもしれない。

文責:大塚淳史

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