2015-02-03 17:58 追加
「小学生バレーの競技人口を増やす為には」閑話休題
小学生バレーについてのコラム
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前回の記事を掲載していただいてから、随分と期間が空いてしまいました。すみません。前回が昨年の5月ですから、もう9ヶ月ですか。時の流れるのは早いものです。本当にごめんなさい。
さて、この9ヶ月の間ですが、私の周りで様々なことが起こりました。小学生バレーボールの指導者として、色々なことを考えさせられる出来事ばかりでした。すぐに記事の続きを書いていきたいところですが、間が空きすぎてしまったこともあり、閑話休題ということでリハビリも兼ね、この9ヶ月の間にどんなことがあったのかを書かせていただきたいと思います。
昨年の夏に、指導者講習会を受講してきました。小学生バレーボールチームとして、日本小学生バレーボール連盟主催の都道府県大会などに出場するためには、受講必須となる講習会です。はっきり言って、仕方なく参加しただけで内容にはあまり期待していなかったのですが、なかなか面白いお話が聞け、「これは是非やってみたい」と思う練習メニューなどを教えていただくことができ、大変有意義な2日間だったと思います。
さて、講師の方のお話で、特に興味深かったのは、バレーボールの競技人口の話です。現在、小学生バレーボールの競技人口は、年々減り続けているとのことでした。ざっくりですが数字も挙げられて、「なるほどそうだなやっぱり減っているんだな」と思いました。しかし、ハッとさせられた部分がありました。それは、男女トータルでは減少しているのだけれども、実は女子は年々同じようなペースでずーっと減り続けているが、近年、男子は微増しているのだ、ということでした。ただし、あくまでも JVA-MRS(https://jvamrs.jp/)の登録ベースとのこと。ですので、最近になって男女混合の部ができたので、これまで人数が足りず、試合に出場できないからと登録していなかった男子がバタバタと登録したからかも、というのを要因の一つとして挙げられていました。そしてもう一つの要因として挙げられていたのが、マンガ・アニメの「ハイキュー!!」でした。「ハイキュー!!」の人気によって、バレーボールを始める男子が増えたのかもしれない、ということでした。
もちろん、これら二つの要因は、講師の方の推測でしかないようでしたが、やはり面白いのは、女子が減って男子が増えている、という現象ですね。全日本では、女子が世界選手権、五輪で銅メダルを獲得し、男子は五輪へ出場すらできなかったというのにです。まさに全日本の戦績と競技人口増加はリンクしないことの証明だと思いました。
また講師の方は、指導者に必要なものは何か、という視点でもお話をされていました。実は、伝統のある、かつて強豪と呼ばれたようなチームが子供を集められず、潰れていくケースが多いそうです。古いやり方を変えられず、頑なに「結果を出してきたこれまでのやり方」が一番であると信じ、時代の変化に着いていけないチームから無くなっていくと、そんなお話をされていました。そんな中で、指導者に求められる最も大事な能力は、コミュニケーション能力だとおっしゃっていました。子供たちをはもちろんですが、保護者ともしっかりとコミュニケーションをとり、お互いの齟齬をなくしていくこと。これこそが今、指導者に求められる資質とのことでした。
なるほどなあ、ためになったなと思った指導者講習会から帰り、自分のチームの指導にもメニューを取り入れたりしていたのですが、ふと、不穏なニュースが流れてきました。同じ地域で活動するチームの指導者の方が、チームを去ることになったというのです。どうも原因は、保護者との行き違いとのこと。その指導者の方とは試合会場など同じになるたび何度もお話させていただいたのですが、本当に温和な方で、試合や練習などでも声を荒げることのない方でした。そんな方でも、保護者と衝突して指導の現場を離れることになる。もちろん、私が知らないだけで、裏ではいろいろあったのかもしれません。しかしまさかあの人がと。まさに、講習会でお話を聞いたばかりの、コミュニケーションのこじれによってです。自分の指導者としてのあり方、立ち位置を、色々と考えさせられる一件でした。
そうこうしているうちに、自分のチームの部員が一人辞めることになってしまいました。理由としては、練習がつまらないとのことでした。他にも色々と、そのお子さんの保護者の方には去り際に苦言を呈され、結構凹まされたわけですが、要約すると、「親としてはバレーを続けさせたいが、娘は練習がつまらないというので、なんとか続けさせる為に練習内容をもっと楽しめるように工夫してもらえませんか?」ということでした。これにはうちの監督が毅然とした態度で「うちのやり方は変えません」と言い、結局は辞めて行くことになったのですが、これもまた色々考えさせられた一件でした。
その保護者の方に言われて、一瞬考えてしまったのが、「子供たちが以前のように、楽しそうにバレーボールをしていない。見ているとなんだか辛そうだ」という意見でした。確かに練習などでは、厳しい言葉が飛ぶことがあります。気のないプレイをしたり、同じことを何度も繰り返したりすると、「何やってんだ!」「何度同じミスすれば気がすむんだ!」となることもあります。そういう厳しさはあります。そういった声をかけるのも、子供達のスキルレベルに合わせて、変わっていくものです。確かに以前に比べ、子供達のレベルが上がってきているので、期待も込めて厳しい声が飛ぶ場面は多くなったと思います。ただ、例えば、「馬鹿野郎!」だったり「このブタ!」とか「医者に診てもらってこい!」とか(実際に私が過去、聞いたことのある指導者の暴言です)、人格を否定するような言葉は、監督も含めスタッフは一切発していません。ゲキを飛ばすことはあっても、その人間性を攻撃するようなことはしません。それだけは絶対にしません。バレーボールの本当の「楽しい」って、ちゃらちゃらへらへら適当にやる事ではないと思うんです。勝ち負けのあるスポーツなんですから、勝った方が楽しいし、勝つことでしか得られないものってあると思うんです。そしてその喜びをより大きくするには、ある程度の厳しさって必要だと思います。小学生ですから、どこまでやるかっていうのは難しいところがありますが、私はできれば、その「勝つ喜び」そして「負ける悔しさ」を知ってもらって、もっともっとバレーボールを好きになってもらいたいです。
とはいえ、このような「とにかく勝ち負けとかどうでもいいので、バレーボールに触れて、楽しんでほしい、楽しみたい」と思っている層は必ずいると思います。そういう層を、うちのチームでは受け入れる器がないんだな、というのをこの時実感しました。例えば週6日、平日は夜9時まで練習しているような強豪チームからすれば、うちは比較にならないぐらいゆるーくやっているはずなのですけど、それでも受け切れない層があるということです。受けられる限り受けていきたいと思っていましたが、ここらが限界だな、と思いました。
子供たちが習熟度を増していくと、だいたい「もっと上手になりたい、勝ちたい」と思う層と、「いや別にいつもの練習がなんとなく楽しければいいや」という層に必ず別れていきます。そうなった時に、どうしたらいいのか。この辺りは、前回書いた「保護者の選択肢の一つに『子供にバレーボールをやらせること』を追加してもらう」にも通じていく話です。次回は本編に戻って、その私なりの考えを書いていきたいと思っています。
<過去記事>
「小学生バレーの競技人口を増やす為には」 第一回 ー富士山方式で競技人口が増えるのかー
http://vbw.jp/5929/
「小学生バレーの競技人口を増やす為には」第二回 ー保護者の選択肢にバレーボールを追加するー
http://vbw.jp/6236/
文責:太田鉄次郎
都内某所の小学生バレーボールチームでコーチを務める。
コーチ歴3年の新米コーチ。
中学からバレーボールを始め、現在もクラブチームで競技を続ける。競技歴は20年以上。
一人でも多くの子どもたちにバレーボールの楽しさを知ってもらうことが、お世話になったバレーボールへの恩返しと考え、日々競技に指導に邁進中。
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