2017-07-12 08:00 追加
全日本女子 中田久美監督に聞く(後編)「初年度は課題をひとつずつクリアするところから」
全日本代表 女子
外国人コーチの起用と大事にしたいこと
――全日本女子に外国人コーチが入ったのは初の試みですが、監督のお考えで採用されたのでしょうか?
中田:はい、そうです。いろんな視点が大事だと感じていました。まして、日本をネットの向こうから見ていた人ですから。私たちがいくら外国に行ってバレーを学ぼうとしても、全く違う、真似のできない視点を持っているわけじゃないですか。それをジャパニーズスタイルの中に入れたらどうなるのかを試してみたかったわけです。
――それは、中田監督ご自身がイタリアにコーチ修行に行かれたりして思ったことでもあるのでしょうか?
中田:イタリアに行かないで呼んできてしまえというね(笑) それをこの日本人の選手たちがどうやって使っていったらいいのかというところに興味を持ち、トライしてみようと思ったわけです。それでトルコのフェルハト・アクバシュコーチを紹介してもらったところ、彼も日本のバレーにすごく興味を持っていて、実現に至りました。郎平さんとかジョバンニ・グイデッディさんの下でやっていたという実績もあり、ナショナルレベルの経験があるので、私自身も発見や学ぶところがあるのかな?と思っています。
――そういった新しい流れがありつつも、監督が現役時代から受け継いできたものであったり、変わらずに守っていきたい女子バレーの伝統という部分もあるかと思うのですが、そのような部分で大事にしているところはありますか?
中田:昔もやっぱり日本は高さとパワーでくる外国チームとどう戦うのかを考えてプレーするというのは変わっていないと思います。世界が急に大きくなったわけではありませんから。そこの部分の頭の使い方の部分はすごく大事だと思います。同じことをやっていては限界があるというのは今も昔も変わらないことです。でも、なぜ日本と世界の差が開いたのかというところがすごく問題なわけです。強い国が増えたのはもちろんだけど、外国が当たり前のことを当たり前にできるようになってきた。昔はブロックを抜ければほとんど決まっていたものが、それをAパスに持っていく技術が必要になった。すごいサーブをすごい場面で打ってくる技術があったり、ミスが少ない。例えば、ブラジル、中国、ロシアなどが当たり前のことを当たり前に、確実にやってきてるわけです。では、日本の当たり前って何なのかといったら、二段トスを打ち切ることももちろん大事だけど、やっぱり技術という部分では世界の最先端を行ってなければならないと私は思います。今はそこがちょっと大雑把になっているのかな?と。
――そこを改善するためには何が必要だと思いますか?
中田:最初に話したAパス時のレセプションアタックの数字を上げるという目標はそのために設定したものです。特にAパス時の決定率、効果率を上げることを基本として、データを積み上げていくべきなんじゃないかと。もちろん、Aパスが入らなかった時の高いブロックに対しての点数の取り方は大事ですけど、それは既に世界の上位に入ってるんです。それなのに、現在の日本はAパスが入った時の数字がよくない。本来の武器であったものがなぜそうなってしまったのかと素朴な疑問を抱きました。Bパス、Cパスの数字がそんなにいいのなら、当然、Aパスの部分を上げたらもっとよくなるはず。海外のチームのいいサーブを何とか上に上げるという作業ももちろん大事だけど、それをAパスに持っていくという技術を追求すべきなんじゃないかとも思います。
――最後に、初采配となるワールドグランプリの目標をお聞かせください。
中田:まずはファイナルラウンド進出ですね。
――そして、今年度最後の大会となるグラチャンではメダルを狙いますか?
中田:現時点では4位以内が目標かな?(笑) でも、初年度だからといって負けていいとは思っていません。その時々でベストは尽くすし、勝ちにこだわりたいとは思うけど、一方で課題を明確にして、それを解決していくという作業が必要だと思います。ただ、もう(東京五輪という)着地点が決まっているので、そこで結果が残せるようにチームづくりをしていきたいと考えています。
聞き手:高井みわ
写真:中西美雁
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