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コラム

2019-05-11 14:14 追加

“千両役者”サントリー米山達也 格好良すぎる現役引退劇

米山達也引退記事

SV男子

サントリーの応援席に向かって手を振るサントリーの米山達也

あまりに格好良すぎる、こんな劇的な最後があるのだろうか。5月6日にあった黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会の男子決勝は、サントリーサンバーズの偉大なるリーダー、米山達也(32歳)がチームに4年ぶり8回目の優勝を手繰り寄せる活躍を見せ、現役引退する自身の最高の花道を飾った。

 

セットカウント2−1で向かえた第4セットの終盤、22−23から決勝の相手パナソニックパンサーズと1点ずつ取り合う緊迫した展開が続いた。サントリーのロシア代表ドミトリー・ムセルスキーがスパイクを決めれば、パナソニックのポーランド代表ミハウ・クビアクや大怪我から復活した清水邦広が決め返す。シーズン最後を締めくくる大会に、互いの意地がぶつかり合った。

そして、31−31の場面。勝っても負けても最後の試合となる米山に、サーブ順が回ってきた。もしかしたら米山が試合を決めるかもしれない。この日の背番号20には、そんな期待が漂っていた。予兆はあった。第3セット、23−20で米山がサーバーとなると、鋭くドライブするジャンプサーブで2連続サーブポイントを取り、セットの奪取を決めていた。

多くの観客がその活躍を当然覚えており、この場面での米山に対する期待は自然と高まった。そして、期待と緊張感が交錯する中、米山の助走して打ち放ったサーブは、相手コートに突き刺さった。これでついに32−31でリードを奪った。米山は下向きながら咆哮し、右手でガッツポーズ。会場内には異様なムードが漂い始めた。そして、再び米山がボールを手にして、ジャンプサーブ。「無心で打った」というジャンプサーブが、パナソニックの守備を崩した。セカンドボールがクビアクに高く上げられた。既にサントリーの前衛3人が待ち構えていたが、クビアクが後衛から助走して思い切り力強いスパイクで挑んだ。しかし、3枚ブロックの一人、藤中謙也の腕にぶち当たり、スパイクはシャット。赤いユニホームの選手たちが優勝の喜びを爆発させていった。米山が千両役者ぶりを発揮したドラマの様な展開だった。

米山のジャンプサーブ

ラストサーブは盟友・永野を狙ったが

試合後の会見で、米山は現役最後のサーブを笑顔で振り返った。

「ラストの1本は本当に最後だったので、学生時代から一緒にやっていた(パナソニックのリベロ)永野(健)選手を狙おうと思ったんですけど、結局そこにはいかなかった。藤中キャプテンが決めてくれて良かった。(その前のサービスエースは、質問で)言われて『あ、エースだったんだ』みたいな。いつもどおり思い切りいってやるぜという気持ちでした。覚えてなかったです。さっき言ったように、最後なので、知っている人に骨を拾ってもらおうと思って狙ったんですけど、そこにいかなかったという、ちょっと恥ずかしいところですね(笑)」

スタートメンバーとして出る機会は少なくても、今回の黒鷲旗での米山は、出れば活躍した。特にサーブで魅せた。ミスをしないように力を抑えたサーブではなく、強烈に打って相手守備陣を崩し、なおかつミスも少ない。米山がサーブを打つとサントリーに流れを呼び寄せていた。また、スパイクやレセプションでも活躍するなど、引退する選手とは思えない活躍ぶりだった。

第4セット終盤でのサーブのことを聞かれると、米山は無心だったと明かした。

「その前(第3セット終盤)のサーブもあまり記憶になかった。昔から、高校時代(埼玉県立坂戸西高校)の恩師から『無心になれ』と言われていた。無心の状態でできたのかな。最後になるとは別に考えていなかった」

重要な場面で、サーブ順が回ってくる。記者は、“持っている”とは思わされたが、 米山は「いや、特に感じなかったんですけど、(試合が)終わった後に、色んな身内から『お前持っているな』とは言われた。自分的にはたまたま。持っているとかは別に思ってないです」と否定したが、会見に同席した藤中は「あの場面でチーム全員が期待していた。やってくれると思っていたことを本当にやってくれたなという感じ」と称賛していた。

サントリーの仲間たちから胴上げされる米山達也

後輩たちにエール「1日1日を大切に」

チームの後輩たちに送る言葉を聞かれ、米山は言葉を選びながら伝えた。

「こればっかりはわからないけど、正解は一つじゃない。自分がやってきたことも、正解かもしれないし、正解じゃないかもしれない。自分はこうだ、と教わってやってきたから最後優勝できた。それでもリーグ戦はチーム在籍10年間で優勝ができなかったから、自分がやってきたことはだめだったのかなと思ったりもします。まだ現役生活やれる選手は、まだチャンスがある。そのチャンスが何回まわってくるかわからないですけど、終わった時に僕みたいに後悔のないように1日1日を大切にやってもらいたい」

何度か涙がこぼれそうな場面があったそうだが、「最後は笑って終わりたいと思っていた。耐えて泣かなかった自分よくやったぜと思います」と報道陣を笑わせた。

約11年に渡る現役選手生活を鮮やかに終えていった。

子供たちを抱きかかえるサントリー・米山達也

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