2013-07-10 18:52 追加
レゼンデが目指したバレーボールの姿 第3回
ブラジル男子代表監督、レゼンデによるバレーを考察したコラム、第3回。
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3章 北京オリンピック後に世界各国が取り組んだバレーボール(世界標準の変遷)
前回まで、北京オリンピック後にレゼンデが追い求めたバレーボールの姿について取り上げた。しかし、ブラジルと同様に世界の各国も新たなバレーボールを追い求めていた。バレーボールはネットを挟んだ相手チームとの戦いである以上、他のチームの技術や戦術を研究し、それに対抗する手立てを生み出すことが必要不可欠である。以下はここ数年で起こった「世界標準の変遷」とも言える。
・MBのサーブはスパイク・サーブが主流になった。
2008年の北京オリンピックまでは、ブラジルのブロック・システムは他の国のオフェンス・システム(特にライト側からの攻撃)より相対的に上回っていた。その自信の表れがデディケート・シフトであった。当時、ブラジルにはジャンプ・フローター・サーブを用いたとしても、他の国のオフェンス・システムより優位に立っていたブロック・システムがあったために効果的にブレイクをすることができた。しかし、そうした他の国の攻撃に対して相対的な優位性を持ったブロック・システムは北京オリンピックでアメリカのオフェンス・システムの前に崩れた。
北京オリンピック以後、多くの国が当たり前のようにライト側からのファースト・テンポの攻撃を行うようになった。
それまで、MBのサーブはジャンプ・フローター・サーブが世界標準であったが、2008年以降にはスパイク・サーブが世界標準となった。サービス・エースを狙ったり、相手の攻撃を限定して積極的にブレイクを狙ったりすることができるビッグ・サーブの重要性が高まったためであると言える。
・局面によりリード・ブロックではなくコミット・ブロックを選択するようになった。
これは、ファースト・テンポの攻撃が相手のリード・ブロックに対して有効な攻撃であることが前提にある。ファースト・テンポの攻撃の本質は、相手のリード・ブロックが踏み切る(ジャンプする)よりも相対的に早いタイミングでスパイカーが踏み切って(ジャンプして)行う攻撃であると言える。
そうしたファースト・テンポの攻撃に対応するためには、ブロッカーは相手のスパイカーと同時か、早いタイミングで踏み切ってブロックを行うコミット・ブロックが有効であることが考察される。
複数のスパイカーが、セッターのセット・アップより前に助走を始めるような(いわゆるシンクロ攻撃の)局面では、相手チームの特定のスパイカーをフリーにするリスクを負いながら、積極的に、組織的にコミット・ブロックが選択されるようになった。
・MBのスパイクでコミット・ブロックでは対応できない攻撃が出てきた。
先ほど、ファースト・テンポの攻撃に対してブロッカーが積極的にコミット・ブロックを行うようになったと書いたが、実はコミット・ブロックでも止まらない(対応出来ない)ファースト・テンポの攻撃が出てきた。
(参考:ロンドン五輪・ブラジル女子総括その1 )
北京オリンピック前後では、Bickが「最も決定力のある攻撃」として使われていたが、2011年あたりから、前衛MBの高いファースト・テンポの攻撃が「最も決定力のある攻撃」として使われている場面が目立つようになった。その結果として相対的に後衛WSのBickの本数が減少することも起こった。こうした技術・戦術の理論的な解説については次回以降に詳しく扱う。
・WSにより高いブロック力が求められるようになった。
WSには、新たに「相手のオポジットと1対1の局面で、オポジットの攻撃に対抗するブロック力」が求められるようになった。
言い換えれば、WSの大型化が進んだとも言える。
次回は「コミットしても止まらないクイック」に焦点を当てながら、世界標準のバレーボールについて考察する。
文責:手川勝太朗
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