2014-01-17 20:52 追加
トータルディフェンスを見て楽しもう 第2回 ブロック&ディグのフォーメーション
トータルディフェンスを語るコラム第2回目。
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こんにちは。萬和臣(よろずかずおみ)です。
前回はバレーボールの競技構造と、ルールや戦術の変化から『サーブ&ブロック』が重要性を増して、バレーボールが40年前とは違う競技になってきたことを書きました。『レセプションの局面』だけを考えていてはセットが取れず、『ブロック&ディグの局面』を考える事こそ現代バレーの勝敗を左右します。
ここまでのことを理解された方にはすでにバレーボールという競技が今までとは違った見え方がしていると思いますが、今回はそこでもう一歩踏み込んで、バレー解説者がたまに触れる『ブロックとレシーブの関係』という言葉を掘り下げていきましょう。
ブロックとレシーブの関係って何?
前回触れたように、バレーボールという競技は、サーブを除くと以下の3つの局面に分けられます。
① レセプションの局面。
② ブロック&ディグの局面。
③ チャンスボールの局面。
そして現代バレーでは『サーブ&ブロック』で攻めて、サーブ側もレセプション側も②ブロック&ディグの局面が最も重要になる事を確認しました。
この②の局面で取るフォーメーションが、バレー中継で言われる「ブロックとレシーブの関係」ということになります。
今回のテーマは、数種類に分類される②の局面のフォーメーションの形と名前を覚えてもらおうということではありません。お勉強は複数の技術書を読み比べながら、指導者や選手が各自で理論の再構築をすればよいことです。私の場合は観戦専門なので、「ペリミターフォーメーション」を基本として、状況に合わせて「エリアフォーメーション」と「スライドフォーメーション」を駆使して戦うのが現代のバレーボールのトータルディフェンスなのだとざっくり覚えています。
次回、スライドフォーメーションを簡単に取り上げますが、その前にまず「何に対してフォーメーションを整えるのか」ということを考えていきましょう。
バレーの技術書をお持ちの方はディグフォーメーションのページを開いてみてください。
するとひとつ気付くことがあります。実はブロックについてきちんと説明していない本には、ディグフォーメーションを解説する図などは載っておりません。
ディグフォーメーションの軸となるのはブロックであり、ブロックの位置が決まるからこそディグの位置が決まり、相手のアタッカーを追い詰める手がかりをつかむことができるのです。
技術書の中には「マンアップ」「マンダウン」の2種類しか記載されていないものもあるかもしれません。「マンアップ」とはバックセンターを守る選手がアタックライン付近まで前進する△のフォーメーションを指しますが、三角形の頂点の選手がフェイントカバーをするこのフォーメーションは中学男子や高校女子でもまず見かけません。攻撃力が一定レベル以上のバレーボールではフェイントカバー専任のディガーを置いておく余裕はありません。従ってマンダウンがディグフォーメーションのベースとなります。
また「ブロックができる選手が2人の場合」というような前提で2-2-2などのもっともらしい名前をつけたディグフォーメーションを記載しているような技術書もあります。しかし6人制バレーボールのトータルディフェンスを考える場合、「ブロックができない選手」が前衛に立っていることがすでに問題外です。あくまでもブロックがトータルディフェンスの軸なのですから、前衛の選手全員がブロック参加できるのが当然で、「ブロックができない選手」を放置しておくような指導者による技術書が存在することにそもそも問題があります。
追い詰める相手はサイドアタッカー
サーブで攻めることを大前提として、リードブロックについてきちんとページを割き、ブロッカーの配置やブロック戦術についても触れられているような現代バレーボールを考えた技術書を見ていくと、ひとつ気が付くことがあると思います。
こうした技術書にはブロックを軸としたディグフォーメーションの俯瞰図がついていますが、なぜか相手のサイド攻撃に対する図しか載っておりません。なぜでしょう?
実際にコートの後衛サイドのポジションに立ってディグの構えをしてみるとよくわかりますが、相手の前衛センターアタッカーがスロット1(絶対スロットでAクイックを打つ位置)から攻撃をしてきた場合、その距離はわずか5メートルほどです。とても近い。
高い打点でスパイクをされた場合、ブロックで打つコースを限定してもらったとしても打てるスペースはかなり残り、ディガーは全てをカバーしきれませんから一か八かでブロックの空いているコースに移動して、痛いし怖いけれども強打に対して体ごと当たりにいくしかありません。本音を言えばブロックを3枚整えてもらって、ワンタッチかフェイントを拾う形にして欲しいし、その前にサーブで攻めて相手の前衛センターが攻撃に参加できない状況を作りたい。
日本国内の「高速」バレーボールではセッターがアタッカーを振り回しクイッカーが低い位置から不十分な体勢でスパイクを打ってくれますので、センターのスパイク決定率は男子60%、女子50%もあれば合格点とされます。しかし本来はセンターアタッカーが高い位置から充分な体勢で本気でスパイクを打ち込んできたらブロックとディグの関係では対処が不可能になるのです。だからこそ、「まずはセンター線から」「センターからの攻撃を絡めたい」という話になるのです。
バレー解説者の中には同じ口から「サーブミスはいけない」とか「ブロックでヤマを張って」などトータルディフェンスを自ら簡単に崩壊させるような話を熱弁する解説者もいますが…
優れた技術書には、サイドアタッカーを追い詰めるための2枚ブロックをベースとしたフォーメーション図が何種類か描かれているかと思います。サイドアタッカーが攻撃する場合、ネットに赤と白のおめでたい棒が刺してあるため、あらかじめスパイクコースは限定されます。そこに2枚のブロックが揃った場合、ディグのコースをかなり絞り込むことができます。
スパイク打球が遅く力も無い女子バレーの場合は、ブロックが割れた状態でもエリアフォーメーションで対処できることも多いです。
ラリーが続かないと言われる男子バレーの場合でも単調なサイド攻撃しか使えない状況に相手を追い込む(サーブで攻める・スパイクで崩す)と、1セットの中で1度か2度、同じサイドアタッカーのスパイクが続けてディグされる時間帯が生まれることがあります。これが「ブロックとレシーブの関係性」が良くなってきた状態です。
つまり「ブロックとレシーブの関係ができてきた」と言われるような状況とは、まず組織ブロック戦術があり、それに対してあらかじめ決められたディグフォーメーションをベースに、アタッカーのその日その時のクセやコンディションに合わせた修正が整った状況を言います。
この状況でブロック・相手のスパイクミス・サービスエースが出て連続得点をした状況こそ「試合の流れ」と呼ばれるものの正体であるという持論を持っていますが、話が長くなるので今回は割愛し、機会があればそのうち記事にしたいと思います。
サーブで攻めて、相手にサイド攻撃を強い、ブロックとディグのトータルディフェンスによってボールを奪い、こちらからのカウンター攻撃を成立させてブレイクを狙う。相手のセンターを使えない状況にして相手サイドアタッカーをブロックとディグのトータルディフェンスによって追い込み、流れを支配してゲームを制する。
現代のバレーボールは「我慢」だとか「ミスはいけない」というような受身で窮屈な競技ではなく、知恵と勇気と対応力を振り絞ってあの手この手で仕掛け倒してしめしめと思える状況を作り上げていく、頭脳的で攻撃的な競技なのです。
第一回 バレーボールの競技構造
http://vbw.jp/5179/
文責:萬和臣(よろず・かずおみ)
お酒を飲んでバレーを語るのが好きなバレー仙人。ツイッターではkaz10000でつぶやいています。昭和のころからサーブ攻撃論者。
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