2014-01-20 22:18 追加
世界のバレー会場から 第2回 イタリアセリエA
海外でのバレー観戦についてのコラム、第2回目
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第5セット、19-18。ピアチェンツァのエース、ルカ・ベットーリのサーブがビデオチェックの結果エースとなった瞬間、ホームの体育館は大歓声に包まれました。両腕を突き上げる青壮年男性、飛び跳ねる女性達。コートに流れ出し選手に駆け寄る観客は、まるで満員電車から降りて改札に向かう乗客のよう。2014年1月8日、イタリアリーグセリエA1、首位マチェラータとの一戦は、今のイタリアリーグ最高潮の盛り上がりをみせました。
ここ数年、チーム数の減少で衰退の方向に向かっているようにみえるイタリアリーグですが、依然有能な選手が集まる世界トップレベルのリーグであることに変わりはありません。この日のピアチェンツァのスターティングメンバーは、パピ、フェイ、べットーリと歴代のイタリア代表に加え、デセッコ(アルゼンチン)、シモン(キューバ)、カリベルダ(ドイツ)と各国代表経歴を持つ選手達でした。対するマチェラータも、ザイツェフ、コバル、バラノウィッチと現イタリア代表選手に加え、スタンコビッチ(セルビア)、ポドラスチャニン(セルビア)、クレク(ポーランド)と各国の現代表選手が名前を連ねるスター揃いなのです。日本開催の試合でも来日している彼ら、見覚え聞き馴染みのある選手ではないでしょうか。
そんな豪華な顔ぶれのイタリアリーグセリエA1は全12チーム。各チームの保有する体育館を会場に、ホーム&アウェイ方式で基本的に日曜日の18:00より試合を行ないます。チケット料金はチームごとに異なり、会場のチケットブースにて10数ユーロ程の当日券を購入すると観戦ができます(2014年1月16日現在:1ユーロ約140円)。 前売りはほとんどなく、年間パス用の席や指定席があるチームもありました。
会場となるチームの体育館は往々にして公共交通機関では行きづらい場所にあり、観客は車での来場がほとんど。隔週のホームゲームは家族連れや仲間同士のグループなどの定例イベントのようになっており、各会場で挨拶を交わす人々の姿が多く見られました。とはいえ一人観戦者も決して珍しくはなく、体育館に入ってしまえば皆ホームの応援に溶け込んでしまうのでした。
情熱的な性格のイタリア人ですから、サポーターは終始起立状態で声を上げ、サッカースタジアムのように応援の声を絶やしません。静かに観戦しているように見える観客もプレイに応じ感情を豊かに表します。審判の判定に納得出来なければ野次を飛ばし、中には審判の側へ歩み抗議する人もいるほど。観客だけでなく、もちろん選手達も熱く、審判に抗議しイエローカードが飛び出すこともまれではありません。ビデオチェックのシステムが導入され頻度は減ったものの、感情を表に出しやすいイタリア人らしい性格は時々顔を出していました。
イタリアでバレーボールは観戦するというより、一緒に戦う感じでしょうか。特に青壮年男性ファンの勢いは激しく乗ってくると止められません。が、一方で内容が読めてしまう試合には、決着前25点目が入るのを確認する前に退場することもあります。試合内容やチームの調子によってあからさまに応援への熱の入れ具合や集客が変わるイタリアは、いかに面白い試合ができるかが重要。それだけに各チーム選手獲得も変化が激しく、毎年シーズン開幕前の移籍はもちろん、1月3日よりモデナに移籍したレゼンデ(ブラジル)のようにリーグの途中での移籍も珍しいものではないのです。
試合後、観客との接触が自由なイタリアでは、女性や少年に囲まれながらフレンドリーに接している選手が多いのも人気を保つ一つにみえました。サッカー場のセキュリティが厳しい中、バレー選手との気軽な触れ合いは観戦者にとって大きな魅力の一つなのでしょう。ラティーナのようにコート内へ侵入できない会場もありますが、基本的に選手は声をかけられれば断ることなく対応していました。試合後の30分を対応に費やし控え室へと戻るシモンのような選手は稀だとしても、しばらくはコート内に留まり対応しています。それでも対応しきない場合は会場外、バスに乗り込むまでのわずかな距離を囲まれることも。スタッフに腕を掴まれバス中へ引き上げられるまで対応していた人気選手の姿もありました。
観客の声援の大きさやカメラのレンズの向きを見ると、ここ最近国際試合で活躍しているザイツェフやベットーリの人気度が伺えます。2012年ロンドン五輪銅メダル、2013年ワールドリーグ銅メダル、2013年ヨーロッパ選手権銀メダルの成績を残し、べレッタ、ランザなどの若手の成長も著しいイタリアナショナルチーム。国際大会でアピールし幅広い年齢層のバレーファンを獲得している今、それがリーグにも反映されているようにみえました。ターゲットを増やし集客を高め、どれだけバレー界を繁栄させられるか・・・それが、今各チームが抱えているスポンサー撤退問題の解決に繋がるのかもしれません。
文責:宮﨑治美
長崎県生まれ。2007年ワールドカップをきっかけにバレー観戦を始め、2009年頃から徐々に海外へも観戦に行くように。海外観戦数はヨーロッパを中心に4年間で計50試合以上。競技経験はないながらも、コートの中で繰り広げられるドラマ、選手の人間性に魅了され観戦し続けている。
第一回 ロシアリーグ
http://vbw.jp/5161/
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