2023-12-20 12:00 追加
NEC・古賀紗理那「ブロックは好き放題しつつ、ディフェンスのしやすさを心がけている」、金子隆行監督「サーブとブロックが重要。引き続き強化したい」 皇后杯決勝会見
SV女子
●金子隆行監督
まずは2連覇できたことは非常に嬉しく思いますし、このプレッシャーの中、選手たちが試合ごとに成長していってくれたことに本当に感謝しています。数字の部分など、いろいろまだしっかり見直してはいないのですが、我々が今後戦っていく上で、サーブやブロックが非常に重要になってくるんだなっていうのを今大会通じて本当に感じたので、これを引き続きリーグに向けて準備していきたいと思います。今回、我々は優勝できましたが、久光さんだったり、昨日戦ったJTさんだったりがリーグで絶対やり返してくると思うので、そういったチームよりもさらに進化できるように、引き続き頑張っていきたいと思います。
――今大会、甲萌香選手をスタートから起用していますが、彼女の評価は?
金子:甲に関しては、昨シーズンまで出場機会が少なかった選手ではありますが、本当に毎日コツコツと努力している選手だったので、その努力が実って、こうやってコートに立てるチャンスがあって、一生懸命彼女なりに今できることは出してくれたのかなとは思います。ただ、今日の決勝などではもう一声ほしい部分があったので、そこで上野(香織)がチームに安定感をもたらしてくれたというのが非常に大きかったかなと思います。
――試合後のコートインタビューの中で、「男子だけではなく女子も応援に来てほしい」といったことを仰っていましたが、あの発言の背景、どういった思いがあるのかなどを教えていただけますでしょうか?
金子:僕の子どもの時は、ワールドカップなどのバレーボール中継をテレビで食い入るように観ていて、そういった中で満員のお客さんの中でプレーできるのはすごいことだと印象に残っていました。昔のリーグに比べたら今は観客動員なども波があるように感じていて、お客さんが来てくれることは非常にありがたいことですが、本当にバレーボールの価値を感じて来てくれているファンの皆さんがどれだけいるのかなっていうところが、僕の中ではまだまだ不安な部分があります。その不安を解消するためには、やっぱり現場である僕らがバレーボールの魅力をどんどん発信して、休日のこの時間を使ってでも観に行きたいって思われるバレーを全チームがどんどんやっていけたらいいのかなと思ったので、ああいう発信をさせていただきました。
――今日の試合、先ほど上野選手の話もありましたが、2枚替えで入った柳田光綺選手がアタックで9得点を挙げるなど、途中から入った選手も非常に活躍していたと思います。スタメンで出ていない選手、途中から入る選手に対して、常に意識づけしているようなところがあれば教えてください。
金子:これはうちの伝統だと思うのですが、試合に出られないからといって努力をやめる選手は本当にいなくて、 自分がどういう形でもチームに貢献するという意識を持っています。これは今年、うちのバレー部も45周年になりますけれども、脈々と引き継がれているものなのかなと思います。だからこそ、ああいうふうに途中から入ってもチームの流れを変える、チームに影響を与えられるっていうプレーができるのかなと思うので、これは本当にチームとして大事にしてきたものが形に表れているのではないかなと思います。
――第1セットで今季コンスタントに活躍されている長岡選手を交代させて、早々に久光のプランを変更させたというところが、ひとつの大きな勝負の鍵だったのではないかと思います。そこの部分に関して、どういう対策がうまくいったのか、差し支えない範囲で教えてください。
金子:JT戦も外国人選手、オポジットが鍵になってくるというところで、古賀をそこにマッチアップさせました。久光の長岡選手も非常にキャリアがあって、経験値豊富な選手ですので、やはり彼女に一番強いブロックを当てるというところで、まず古賀をしっかり1対1で駆け引きさせるような指示でマッチアップさせました。序盤からそれが効を奏して、しっかり抑えてくれたことが大きかったのかなと思います。
――先ほどおっしゃってた女子バレーと男子バレーの話ですが、監督ご自身も女子を盛り上げるためにいろんなことにチャレンジされていて、練習時間を短くするとか、トレーニングを入れるなど、さまざまな取り組みをされていると思います。本当に個々として盛り上げていくためにチームやご自身としてどういう行動が必要で、今後、リーグもまた再開しますが、どのように考えて、どうなってくれるといいなと思っているのか教えてください。
金子:今、男子バレーが非常に面白いっていうのは、やっぱりつなぎの精度とか、スキル的には細かいプレーの動きがチームとして統率されているというところ、その中に監督の指示だけではなくて、コートの中で自分たちでマネージメントしている印象があります。それだからこそ、ああいう人の心を惹きつけるバレーができるのかなと。ブランさん(フィリップ・ブラン監督)がすごいとか、そういうわけではなくて、やっぱり選手たちが全て理解した上で、コートの中で自分たちでジャッジメントできているのがいいのかなと思っています。
女子バレーがそうではないというわけではありませんが、やっぱりこの日本の女子バレーはまだ僕は弱くないと思いますし、もっともっと成長していくと感じているので…。そういった中で、Vリーグ全体でみんなが同じ方向を向いて、「日本女子バレーというものはこういうものだ」っていうもののもとにオリジナルを出していく必要性はあるのかなと僕は感じています。「男子を見習え」ではなく、日本女子バレー界は日本女子バレー界のすごい強みが絶対あると思っています。その強みを各チームが理解した上で強化していくことが必要じゃないかなと僕はすごく感じているので、まずみんなが同じ方向を向いて前に進んでいくっていうことが大事なのではないかと。僕はこういう場でしか発信ができないので、こういった場ではそういう発信をさせてもらいたいなと思っています。では自分自身何ができるのか、何ができていないのか僕はまだわからないですけど、でも、この女子バレー界をより良くするというところに関してチャレンジしていきたいなと思うので、本当に皆さんのお力を借りながら、どんどん、どんどんバレー界が前に進んでいけたらいいなと僕自身は考えています。
――現在、パフォーマンスアーキテクトの里大輔さんがチームにスタッフとして加入されていますが、それによる選手たちの変化を監督としてどう感じていらっしゃるか教えてください。
金子:昨シーズン、その前ぐらいから走り方、歩き方、立ち方から全部見直して、 ただ「走れ」じゃなくて、どうやったら早く走れるのか、どうやったら爆発的にジャンプができるのかっていうところを選手たちにもちゃんと明確な答えを出した上で評価していて、今まで届かなかったボールが届くようになってきていると思います。今日の古賀にしても、ジャンプ力が相当上がって、ブロックの上から出てますので、彼女はそういうのもしっかり頭で分析してやってくれています。パフォーマンスにも関わってくるので、 フィジカルの部分を、ただフィジカルを鍛えるのではなく、どうやったら高く跳べるかという答えを知った上で強化していきたいというところがあります。毎週水曜日は選手たちもその実感を持ちながら、一番ハードな日になるんですけど、取り組んでくれているので、フィジカルの強化は引き続きやっていきたいなと思います。
――サーブについて、この大会全体を通して良さが出ていたと思います。サーブの大切さを選手たちにどのように意識づけしてきたのかを教えていただけますか。
金子:サーブはサイドライン方向に厳しく打っていくっていうのが昨シーズンのテーマで、6月ぐらいからずっとまっすぐにしかサーブを打たせませんでした。これは僕自身の経験で、そのボールを逆サイドに返さなければいけないので、その時にタイミングが合わなければエラーする確率もあるし、少しでもセッターが動く状況を作れると思ったので…。それを選手たちも信じて淡々とやってくれたことが、今年もサーブの強化につながっているのかなと感じています。選手たちにも、なぜそこに打つのか、あるいはこういうふうにしたいということを伝えた上でやっています。取り組んでくれた選手たちには感謝したいですし、選手たちもただそこに打つだけじゃなくて、自分で緩急をつけたりすることも考えるようにしてくれているので、その辺が今のいい状態につながっているのではないかと感じています。
写真:堀江丈
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