チームを操る主将でセッターのカンパ（写真：FIVB）

　いよいよ開幕のパリ五輪。男子日本代表はバレーボール競技の開幕戦をドイツと戦う。ドイツは選手村に入る前に、ブラジルと２試合、親善試合を行った。第１戦は３－２、第2戦は３－１でブラジルが２勝した。この２試合のメンバーを振り返りながら、ドイツの戦い方をみてみたい。

■ドイツのしつこいブロックに負けないように

第１戦スタメン
ドイツ：Sカンパ、OPグロゼル、OHブランド、ショット、MBクリック、マッセ、Lツェンガー
ブラジル：Sブルーノ、OPダーラン、OHレアル、ルカレリMBルーカス、フラビオ、Lターレス

第２戦は、下記スタメンで始まり、その後は、両チームともセットごとにメンバーを変え、最終調整。
ドイツ：Sカンパ、OPグロゼル、OHライヒャルト、ショット、MBクリック、ブレーメ、Lツェンガー
ブラジル：１戦と同じ。

　ドイツはサーブが非常にいい。グロゼル、ブランドと強力なサーバーを擁し、MBは高い位置から速く落ちるサーブで攻めてくれば、カンパも力よりはコースをうまくついてくる。この連続サーブに日本のレセプションがどこまで耐えられるかが非常に大きな鍵となる。

　攻撃では、破壊力のあるOPグロゼルは言うまでもないが、むしろOHブランドの方が要注意だ。ストレートを得意とし、ここは日本がセッターでブロックが低くなる場所でもあるので、後ろとの連携でつないでいきたい。ブロックアウトやインナー打ちもでき、彼がブロックを引き付け、グロゼルにつくブロックを減らし打ちやすくしている場面もある。日本はサーブでブランドをしっかり狙い、いい状態で攻撃に入らせないように持っていきたい。逆にドイツはSカンパが196cmの長身なので、OHのブロックの方がやや低くなる。日本はOP西田の攻撃からカンパに球を拾わせ、セッター以外にボールを上げさせるというのも相手に容易にMBの速い攻撃を仕掛けさせない手段になる。ラリーになるとグロゼルが打ち急ぎネットにかけるなどミスをする場面も見られた。しかし、ここで出てくる２枚替えの控えのSティレはこれまた高速のいいサーブがあり、OPカリチェクのキレの良さはグロゼルを上回る。ネーションズリーグの日本戦でもスパイクにブロックにと存在感を示した選手だ。

OHブランドの巧みな攻撃を日本はどう止めるか（写真：FIVB）

　ドイツの攻撃を支えるのは、カンパのいいトス回しもあるが、守備の良さもある。単にレシーブが得意というのではなく、ブロックとの連携でつないでくる。ブロックはしつこく2枚、３枚とついてくるので、ここで日本はブロックカバーや２段トスになった時にあわててミスが出ない様、つないでチャンスを待つ忍耐も求められる。

グロゼル、マッセ、ブランドの高いしつこいブロック（写真：FIVB）

　日本とはグループが違うB組のブラジルだが、今年ずっと苦しんだサーブがここにきてやっと走り出し、サーブ＆ブロックの持ち味が出た。ブラジルのMBにドイツのブロックがついていけない場面もあった。20年来のブルーノ＆ルーカスのコンビも、クラブチームは別々になるので、恐らくパリで見納めと思うと名残惜しい。

■ドイツ主将カンパとグロゼル、世界の頂点を目指す

　2012年ロンドン五輪で５位、2014年世界選手権で３位となったドイツ。当時のメンバーだったカンパ（37歳）とグロゼル（39歳）。共に長い年月苦楽を共にした仲間だ。東京五輪の出場権を逃し、グロゼルは代表を一時離れたが、パリ五輪のために復帰し、見事、出場権を獲得した。ドイツ協会のインタビューでカンパは、「ギョルギ（・グロゼル）と五輪に行くことができて本当に嬉しい。きっとできる！ って今までお互いに何度言ったか分からないから」と喜んでいる。2023年の五輪予選でイタリア、ブラジル、キューバなどを次々と倒し全勝したドイツ。カンパはけがで序盤に14人のメンバーから外れ、客席からチームを見守ることになったが、他のメンバーが絶対にやってくれると、彼が信じていた通りの結果になった。盟友のグロゼルについては、「彼は感情面で引っ張るタイプのリーダーだけど、自分はもう少し静かに客観的にチームを見ていると思う。お互いにいい協力関係ができているし、二人の経験がチームにいい影響を与えていると思う」と語り、二人でチームを引っ張り頂点を目指す。

五輪出場を決め喜ぶカンパ（左）とグロゼル（写真：FIVB）

　ドイツチームは、パリ到着前に、ポーランドでの大会で1勝（エジプト）２敗（ポーランド、スロベニア）、そしてブラジルに２敗となったが、３試合はフルセットの接戦。ヴィニャルスキ監督は、世界のトップのチームと互角に戦えると手ごたえをつかんでいる。現役最後の2014年世界選手権で主将としてポーランドを優勝に導いたヴィニャルスキ氏。当時のポーランドチームのコーチは日本のブラン監督だった。かつての師に五輪という舞台でどう挑むのか。

■開会式の旗手に注目

　史上初の水上入場行進として注目を集める開会式。バレーボールからは、オグジェノビッチ （セルビア女子）、 デ・セッコ（アルゼンチン男子）、トリザー（ケニア女子）が旗手を務めることが発表されている。

■日本男子の試合予定（日時は日本時間）

７月27日 午後４時 対ドイツ
７月31日 午後８時 対アルゼンチン
８月３日 午前４時 対アメリカ

取材：ブラジル在住 唐木田 真里子