2025-01-13 13:34 追加
吉永有希、笠井季璃、中村悠。若手が躍動するクインシーズ刈谷。「車体」の魂は継承されゆくか
SV女子
GAME2で輝いた新鋭として、内定選手のリベロ・中村悠の活躍も取り上げたい。
高橋悠監督が「他チームに獲られたくなかった」と期待を寄せる筑波大学4年の中村悠はこの日サーブレシーブ成功率61.3%と抜群の安定感を見せ、勝利に貢献した。
全日本インカレで優勝した筑波大学の主将を務め、皇后杯でも準々決勝まで進出し、その後休む間もなく刈谷に合流。主にサーブレシーブを担当するリベロとして試合に出場している。
本人は「どちらかと言えば」ディグの方を好むとのことだが、高橋監督は彼女のサーブレシーブの技術、センスを高く評価している。
「大学とのギャップは感じています。相手のサーブには高さがあって今までのようにやっていたら通用しないな、と」
吉永、笠井と共に会見に同席した中村もまた、悔しい敗戦となった前日の試合を振り返って言う。
「GAME1は第5セットに自分の失点から相手にブレイクを与えてしまった」
サーブレシーブが苦手とは思わない。しかし、自信があるわけでもなかったという中村にSVリーグは容赦ない洗礼を与えていた。
「今日も第5セットまで来て、昨日と同じ展開になったらダメだなって。ここが成長するチャンスだと思いました」
昨日よりは修正できたと思う、とまだ会見には不慣れな中村はやや照れながら控えめなコメントを残した。しかし、将来の目標を問われると、一つひとつの言葉を噛み締めるように次の言葉をつないだ。
「今はまだチームついて行くことで精いっぱいなんですが、早くSVリーグに慣れていきたい。周囲にしっかり声がけする、コミュニケーションを増やす、自分から発信する選手になりたいですね。どのチームもリベロのレベルがすごく高いなって思います。そこに自分も食らいついていく気持ちでやっていきたい」
中村の小さな体から強い意志がうかがえた瞬間だった。
「2日間ともフルセット。選手には非常にタフな試合になったと思う。観客の皆さんも疲れたかもしれませんが、大いにスポーツの醍醐味を味わうことができて充実感を得られたのではないか。まずは両チームの選手を称賛したい」
激戦後の高揚感に包まれながら、刈谷・高橋悠監督は力強く語った。
「オフェンス力の高いNEC川崎を相手に我々のサーブとディフェンスがどう機能するかというところがポイントだった。それができているシーンとできていないシーンはあったがその波を少なくしてくこと、安定して戦えることがこれからの戦いでは重要になってくる。この2日間で、そういったチームの目指す姿が見えた。良い内容のゲームだったと思う」
長いシーズンの中、各チームともまずはチャンピオンシップ(優勝決定戦トーナメント)に進出する条件である8強入りを頭に入れている。8強に入ってしまえば後はトーナメント、組み合わせや開催地における有利不利はあるかもしれないが、その時点でのチームコンディションと完成度が最終的にはものを言う。
8強に到達しなければ話にならないが、そこで燃え尽きても結果にはつながらない。
そういった背景も踏まえてか、シーズン半ば、各チームの選手起用にもさまざまな思惑が見て取れる。
経験を積ませる、選手を休ませる、苦しい場面でも変えずに練磨する、成長を見込んで厳しい場面で投入する、ターンオーバーを確立する、必殺の交替パターンを作る。
年末年始に休みがない異例の日程でもある。答えは一つではなく、どれが正解か断定するのは難しい。不測の事態で方向転換を余儀なくされることもあるだろう。
現状は通過点で「シーズンの最後」に向けて、いかにピーキングするか。道筋は幾通りもあり、その過程で何を積み上げていくかということに各チームの色が出るだろう。
落としてもいい試合があるわけではないが、負けることを許容できないわけではない。
夏季に開催されていたサマーリーグが消滅し、黒鷲旗の開催も危ぶまれている。
選手起用は目先の勝敗だけでなく、チームとしてのモチベーション維持もくみ取って考える必要がある。
「我々にとっても先を見据えた上で、いい経験をさせてもらった2日間でした」
昨季4位と躍進した刈谷たが、現時点ではまだ「中位グループのやや下」に留まっている。しかし、シーズンはまだ半ば。ここでしっかり準備して、8強に滑り込めば問題はない。8強に入ってしまえば、レギュラーシーズンの順位はリセットされるに等しい。
高橋悠監督の言葉には今季のSVリーグの戦い方、特徴が現れていると言っても良いだろう。
撮影 堀江丈
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