2025-03-15 07:00 追加
SVリーグの試合前に開催される日本代表女子U19、U21の紅白戦に、「特定チームの利益につながる」などと物議。主催をJVAからSVLに変更で開催強行も、SV内定選手の参加は一人もない事態に
SVリーグの試合前に開催される日本代表女子U19、U21の紅白戦に物議
SV女子 / 全日本代表 女子 / 大学バレー 女子 / 高校バレー 女子
日本の女子バレー再建に欠かせないアンダーカテゴリーの育成。3月15、16日のSVリーグ、SAGA久光-NEC川崎の試合前に開催されるU19、U21候補選手による紅白戦が、「特定チームの利益につながる可能性がある」などとして、女子バレーの強化関係者やSVリーグ関係者の間で物議を醸している。開催に疑問を呈したSVリーグチームからは内定選手の出場がなくなり、「国内初開催」と日本バレーボール協会(JVA)がホームページ(HP)で銘打った意義ある紅白戦が、残念ながら中途半端な形で開催されることになってしまった。
紅白戦が開催されるのは、3月15、16日。今年1月29日に、JVA、SAGA久光からJVAのU19、U21の日本代表候補による紅白戦が、大同生命SV.LEAGUE女子のSAGA久光のホームゲームのNEC川崎戦(SAGA ARENA)の試合前に開催されると発表があった。
バレーボール関係者や他チームが問題視するのは、SAGA久光が「チケットをお持ちの方は無料で観戦できます」としている点。「アンダーカテゴリーの紅白戦を多くの方に見ていただくのは強化につながるよいイベントだが、特定のチームの試合と“抱き合わせ”する形で企画するのはおかしい」という声が噴出した。
当初、イベントの主催者となっていたJVA内部でも発表直後から「代表候補の紅白戦がこの形式で行われると疑義が生じる」と指摘する声が上がり、SVリーグ(SVL)とも協議。関係者によると、「チケットが販売されており混乱を招かないために、主催をJVAからSVLに変更して開催することになった」という。
SAGA久光はHP上で、2月21日に【U19、U21日本代表候補選手紅白戦 情報訂正のお知らせ】として「主催、主管、共催の情報に誤りがありましたので訂正させていただきます」と記述し、主催と共催を入れ替えている。
U21候補選手が内定選手になっているSVリーグ関係者からは「SVの決勝戦の試合前に紅白戦を行えば強化やSVリーグの発展にもつながるが、内定選手を特定のチームの前座試合のような形で出場させるのは、筋が通らない」として、派遣を見送るチームが続出。3月5日にJVAから発表された出場選手メンバー(23人)のうち、U21は6人のみ。当初、JVAが派遣要請をした12人のうち、春高バレーなどで活躍しSVリーグに内定した選手は出場しないことになってしまった。
JVAによると、今回の混乱は「女子強化担当者の認識不足にあった」という。当時、ハイパフォーマンス本部長代行を務めていた業務執行理事は、「開催を検討していることは知っていたが、詳細はイベント開催公表後に事後報告を受けた」とJVA内で説明している。
一方、SVLはイベント開催公表後に、「SVリーグの試合を主管するのはSVL」と、JVAに指摘。JVAからは「事前に相談するべきだった」と謝罪があった。SAGA久光から事前の相談や報告はなかったという。
JVA、SVLはともに「今回は主催などの建付け(プロジェクトの構成や仕組み)が悪かったが、企画の内容は強化につながる」として、今後は各チームのホームゲームの試合前に紅白戦を行うことなどを検討している。
ただ、バレー関係者やSVリーグのチーム関係者からは「主催をJVAからSVLに変更しても、特定のSVリーグの集客や利益に代表候補が利用された問題は解決していない」という指摘がまだある。
ある関係者は「SVリーグはリーグ終了後に利益を分配する予定だが、紅白戦の集客が分配に影響する」と指摘する。SVLも「利益を分配する方向で、分配方式などの検討に入っているが、集客数は重要な指標の一つ。だから各チームには集客に努力をしていただいている」と語る。つまり、主催を入れ替えても、今回のSVチームのホームゲームと日本代表候補の紅白戦との“抱き合わせ”は、特定のチームの収益につながってしまうというわけだ。
また、今回のイベントを企画した強化担当者が、SAGA久光の対戦相手であるNEC川崎の関係者であった点も、他のSVチームの不信感を増幅させた点も否めない。「特定チームのホームゲームの試合前でなく、SVリーグの決勝に合わせるなどすれば何の問題も起こらなかった」という声が上がるのもそのためだ。
これまで、連携があまりうまくいっていなかったJVAとSVLは、昨年12月21日に「オールジャパンバレーボール新規事業開発プロジェクト(仮称)」を発表。川合俊一・JVA会長と大河正明・SVLチェアマンが報道陣の前で握手をして、連携を強化していくことを誓った。
JVAの國分裕之専務理事は「JVAが(SVLと)連携できることは多々あるので、今回の取り組みを皮切りに様々な機会を設け、各年代の強化につなげていきたい」とコメント。今後は日本のバレー界のため、正しいやり方でさらに連携を強化してほしい。
取材:北野正樹(読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。関西運動記者クラブ会友)
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