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会見・コメント

2025-05-06 11:03 追加

NECレッドロケッツ川崎・佐藤淑乃 「1年目のシーズン、1年目の鮮やかな涙」 SV女子

SV女子

成長の過程を追っていく中で、ターニングポイントを見つけることができる。
シーズンの途中で、佐藤は間違いなく一変した。
昨年12月。NEC川崎は世界クラブ選手権に出場し、佐藤自身もワールドクラスの攻防を肌に沁み込ませた。

「世界を舞台に戦う」
新たな風景を見たことで佐藤淑乃のプレー、一つひとつに凄みが増した。
会見でのコメントも、より落ち着きを感じるようになった。決して偉ぶるわけではなく、柔らかな雰囲気は保っている。ただ、言葉の端々から静かな自信が伝わってくるようになった。

新年早々の1月4日、代々木第2体育館で開催されたリーグ戦でもその違いを感じることができた。
対戦相手はクインシーズ刈谷。セッターとして姉の佐藤彩乃が所属している。
この日、姉の彩乃は2枚替えでコートに入り、妹の淑乃と対峙した。普段から姉妹仲が良いが、この対戦の中で「姉妹対決」と煽られることには双方ともやや警戒をしている様子が窺えた。
そういったこともあり、彩乃選手にはあくまで1人の選手として「佐藤淑乃」の感想を聞いた。対戦選手として開幕からの違いは感じるか、という点についてである。
質問の意図は理解しつつも、おそらくはできうる範囲で彩乃選手は私的な部分にも触れてくれた。
「(淑乃から)少しだけ、世界クラブ選手権の話を聞きました。世界のチームと戦ったことによって、彼女自身がすごいモチベーションを上げているんだな、高いところを目指そうと思ってプレーしているんだなと感じました。それが今日の試合にも出ていました」

同日、佐藤淑乃にも同じことを聞いた。心境の変化があったのか、ということだ。
「世界クラブ経験して世界のトップの選手たちと戦うことができました。勝つことはできなかったんですけれども、ボコボコにされたわけでもないし、やってみた感触として、絶対に勝てないわけでもないんだなって。自分のプレーもそうですし、チームとしても手ごたえは感じました。それを日本のリーグの中でどう表現するか。どうやって他チームを圧倒して勝つか。世界を経験して、自分の中でもマインドだったり、試合に臨む気持ちはすごく変わったと思います」

話を戻す。
ファイナルの敗戦は、佐藤にとっては痛みの一つとして記憶されるのかもしれない。しかしこの、本人には辛かったであろう試合後の記者会見の中でも佐藤淑乃というバレーボール選手は鮮やかな色彩を描き出していた。

「大阪マーヴェラスさんのバレーボールはすごく完成度が高かったです。それに負けないように、今日はGAME1よりもっと自分たちらしさを出す改善をして挑んだ試合でした。それでも相手のフロアディフェンスに嵌められるシーンだったり、決まりそうで決まらないボールが何度もありました。今日はその部分で何回も苦しめられたと思います。でも、自分たちがやってきたバレーボールっていうのをしっかり出せた場面もありました。自分たちはまだこれから成長できると思っています。今シーズンの自分たちの努力も認めて、頑張っていきます」

佐藤淑乃は大粒の涙を瞳に浮かべた。
それは単なる悔しさなのだろうか。むろんいろいろな感情はあっただろうが、心が崩れたようには見えなかった。
涙は心の汗というが、激闘を終えた後の深呼吸とでもいうべき行為に思われた。
それもまた戦いの痕跡として、佐藤は潔く、堂々と涙した。

只々自然な姿であった。瞳が輝いた様はアスリートとして1年間の代謝がなされ、生命が循環する姿に思えた。
佐藤淑乃は涙することでこの1年に区切りをつけ、日本代表も含め新たなシーズンに向かって羽ばたくだろう。

「1年目で決勝戦を経験できました。そのことに対してチームに感謝の気持ちがあります。決勝という舞台は、雰囲気だったり相手の勢いだったり、そういったものが全然違うと思いました。このことをしっかり経験できたのは良かったなと思います」

チャンピオンシップ、リーグファイナルを経験して佐藤淑乃はまた強くなった。
佐藤淑乃というバレーボール選手が雛鳥から鳳に変わる時間に、我々は立ち会っている。

撮影 堀江丈

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