2026-01-28 13:04 追加
東レアローズ滋賀、覚醒中の古川愛梨に越谷章監督からのメッセージ「目的を持ってやってきたことが、良い結果につながっている」 SV女子
東レアローズ滋賀 越谷章監督インタビュー
SV女子
バレーボールSVリーグ、東レアローズ滋賀は1月28日現在、14チーム中13位。かつての常勝チームが低迷に苦しんでいる。
27日、チームは大きな決断をした。
「この度、現状のレギュラーシーズン戦績およびチーム状況を踏まえ、クラブとして総合的に判断し越谷章監督を休養とし、中道瞳コーチが監督代行として指揮を執る体制の変更をすることといたしました」
東レ滋賀は越谷章監督が現場指揮から離れることを公式ホームページで発表、ファンの間に衝撃が走った。
多くの人が感じていることだろうが、現状の苦戦が越谷監督の采配にあるとは思えない。石川真佑、関菜々巳といった代表の主力クラスが次々と海外に移籍し、若手を中心にチームの再構築に取り組んでいる最中である。
東レ滋賀には伝統がある。今、勝てば良いわけではない。これから先、5年、10年チームを支える選手を急ピッチで育成して、再び黄金期を迎えんがための土台作りを行う必要があった。
今季はベテランセッターの田代佳奈美がチームに復帰したものの、シルビア・チネロ・ヌワカロールというリーグきっての点取り屋がNEC川崎に移籍した。攻撃の軸を欠いた影響も否定できない。
東レ滋賀はヌワカロールの後釜としてフランス代表のルシール・ジケルをオポジットに配している。ジケルは攻撃の柱としての責務を果たしているが、同時に、今期急成長を見せている選手がいた。
古川愛梨。2023年、下北沢成徳高校から入団した大型スパイカーだ。

古川は学生時代から将来の日本代表を背負う逸材として期待され、鳴り物入りで東レ滋賀に入団した。
しかし、その前評判に対して、SVリーグでの古川には少しおとなしい印象があった。
同高校の先輩たち…大山加奈、木村沙織、黒後愛、前述の石川真佑のように即活躍というわけにはいかなかった。
いかなかったものの、ここにきて何かを掴み始めている。その成長の痕跡が、「化ける」予感としてひしひしと伝わってくる。
昨年の11月30日、群馬グリーンウイングスとのアウェー戦で古川は「覚醒」した。
GAME1ではスタメンだったジケルが欠場。急遽スタメンでコートに立った古川はチーム最多の24得点を記録し、堂々とエースの働きを見せた。
1-3で試合には敗れたが、収穫のある試合だった。
第2セット終了時点で会場の空気は「群馬の圧勝」に傾いていた。しかし、第3セットで東レ滋賀はデュースの末、30-28でセットを奪取した。
その中で、古川愛梨がコートで吠えた。バレーボールはチームプレーが鍵だが、時に個人の卓越した能力が局面を一変することがある。
それもまたバレーボールの愉悦なのだが、このセットでゾーンに入った古川がまさにその姿を体現した。
「自分が決める」
あるいは、ただただ無心だったのかもしれない。
プレーと気迫で古川がもぎ取ったセットだった。
試合後、記者会見の場で越谷監督は古川選手について次のように話してくれた。

「昨シーズンから徐々に良さは出ていたのですが、それが今シーズン顕著に現れています。しっかり目的を持ってやってきたことが、こうやって良い結果につながっているのかなと思っています」
目的とはどういうことだろうか。
「自分がこういう選手になる、こういうプレーヤーになる、ということです。技術の面でもやりたいことに対して地道に段階を踏んで準備してきたことが、結果につながっていると思っています」
悔しい敗戦の後というだけでなく、移動の都合で時間の余裕がないと運営側から告げられていた中であったが、越谷監督は愛弟子の成長に目を細めながら嬉しそうに言葉を紡いだ。
越谷監督の退席にあたって、またゆっくり話を聞かせてください、と声がけしたところ
「いつでもどうぞ!」
と笑顔を見せてくれた。むろん、この質問だけでなく、列席した記者たちから発せられるたくさんの質問に応じたうえでのことだ。
もう一人、昨季で退団し、現在はブレス浜松で活躍している山下とも選手へのメッセージについても触れたい。
こちらは少し遡り、昨季4月、ファイナルラウンド最終戦でのコメントだ。
山下選手は東レ滋賀の選手としてSVリーグ出場はかなわなかったが、ひたむきに練習し、チームを陰から支えていた。
「山下はSVリーグでプレーしたいという強い気持ちをもってトライアウトで加入してくれました。ムードメーカーで、練習でも頑張り屋さん。今シーズン彼女はめちゃめちゃ伸びたんです。試合で使ってあげられるところがなかったのは本当に申し訳ないのですが、彼女は試合に出なくてもチームのためにすることはたくさんあるという認識を持っていていろいろな貢献をしてくれました。それがみんなの支えになっていましたし、何よりも人間性が素晴らしかった。本当に東レに来てくれて良かったなと思ってます」
古川選手、山下選手、それぞれ置かれた立場は違うが、越谷章の言葉はいずれも、選手への信頼と愛情に満ちていた。
今回の発表を受けて、SNS上でもファンから越谷監督に対する感謝のメッセージが次々に投稿された。
プロフェッショナルな世界の常としてどんな状況でも結果は求められる。流れを変えるために取ったやむを得ない選択であろうことは多くの人間が感じている。
「みなさんとこうやってバレーボールの話をすることが本当に楽しいんです」
以前の会見で越谷監督がそう言ってくださったことが脳裏によみがえった。
現役時代も含め、常にハードな世界に身を置き続けてきた越谷監督。
一旦休むことになったが、またすぐに戻ってきてくれるだろう。バレー界が越谷章を放っておくわけがないのだから。
撮影 堀江丈
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