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コラム

2014-08-17 12:27 追加

ワールドリーグ2014特集 日本の考察  ミドルブロッカーのアタックについて

WL2014総括特集第4弾

全日本代表 男子

はじめに

2014年のワールドリーグの全日本男子チームについて、もう少しデータを見ながら振り返ってみたいと思います。テーマは、チームの中でミドルブロッカー(以下MB)がどれくらいのアタックを打っているのかということについてです。

「レゼンデが目指したバレーボールの姿 第4回(http://vbw.jp/7483/)」でも指摘されているように、現代のバレーボールにおけるMBからの攻撃はその重要性を増してきています。単純にMBにアタックを集めることで勝てるほどバレーボールは単純な競技ではありませんが、MBを使わないことがプラスに作用することはないのもまた事実です。

残念ながら日本はこのMBを試合の中であまり使えないでいます。2014年のワールドリーグの大会通算のデータで、チームのアタックのうちMBが打った打数の割合を日本(JPN)・アルゼンチン(ARG)・フランス(FRA)・ドイツ(GER)で比較すると以下の図1のようになります。

z1

他の3チームと比較して日本のMBの打数が少ないことを確認できます。数値にしてみれば最大で5%強の差ですが、体感ではもう少し差があるように感じた人も多いのではないでしょうか。

以上のデータを持ってきて、「MBをもっと使わなくては駄目だ」というだけでは面白くもないですし、わざわざデータを出さなくてもわかることです。というわけで今回は、もう少しデータを掘り下げてみていこうと思います。

試合ごとに見たMBのアタック

図1のデータは大会12試合の成績を合計したものです。全体的な傾向がつかめるメリットはありますが、1つ1つの試合で起こったことが見えにくくもなります。そこで、日本についての1試合ごとのMBのアタックについてのデータをまとめたものを以下の図2に示します。

z2

この図は各試合でのアタックの打数のうち、ウイングスパイカー(WS)・オポジット(OP)への打数の割合と、MBへの打数の割合を示したものです。上から試合の順番に並んでいます。

この図を見ると、後半のMatch:32のアルゼンチン戦以降、日本でのラウンドではMBへのアタックの割合が増えていることを確認できます。チームとして修正があったことを示すデータといえます。

アタック効果率の比較

ここまではアタックの打数の配分のデータでしたが、あわせてアタック効果率のデータも見てみたいと思います。まずはWS・OPの効果率のデータを以下の図3-1にMBのデータを図3-2に示します。 詳しい効果率の値は表1に示します。

z3_1z3_2

h1

これらのデータから日本について、

  • WS・OPの効果率は、他の3チームと比較してそれほど遜色がない。
  • MBの効果率は、他の3チームと比較すると低い。
  • 大会の前後半で比較すると、MBの効果率は向上している。

残念ながら、日本のMBは他のチームと比較すると強みとなっているとは言えないのが現状です。しかし、まだ他のチームには追い付いていないものの、大会期間中に修正を加えパフォーマンスを向上させたことも事実です。

現状としてまだまだ改善が必要ではありますが、大会期間中という短い期間に修正し成績を向上させたことは評価されるべきかと思います。

背景としてのサーブレシーブ

大会後半のMBの打数の増加と効果率のアップが確認されたわけですが、その背景を考えるに、サーブレシーブが改善されたのではないかと考えデータを確認してみました。サーブレシーブ成功率のデータを図4-1に、被サービスエース率のデータを図4-2に示します。

z4_1z4_2

どちらの変化も微々たるもので、誤差の範囲といって良いものかもしれませんが、確実に言えることは、サーブレシーブの精度が大会後半に入って改善したような事実はないということです。

それでは、なぜMBのパフォーマンスが向上したのかといわれると、現在使えるデータからはそれが良くわかりません。単純にMBを使おうという意識面での変化かもしれないし、なにか戦術的な変更があったのかもしれません。これについては、実際に試合を見た方が何か変化を感じているかもしれません。思うところなどあればコメントをいただけると助かります。

まとめ:MBの使い方

以上、全日本男子のMBのアタックのデータを見るに、残念ながら他のチームと比べると攻撃の頻度と効果率で劣ることがわかりました。しかし、まだまだ差はあるものにの、大会期間中にパフォーマンスが向上していることも確認できました。今後はこの路線を進めて、他のチームとの差をいかに埋めるかが課題といえるのではないでしょうか。

ところで、「コンビネーションを構築するには何年も時間がかかる」と言葉をよく聞きます。しかし、今回示したデータは、

  • 大会期間中という短い時間
  • 国際経験の無い若いMBを起用
  • サーブレシーブが良くなったわけではない

という、普通に考えればあまり良いとは言えない状況においてMBの改善をやってのけた事例といえます。今回は特殊な例かもしれませんが、目的を持ってやるべきことをやれば、案外短期間でもできることなのかもしれません。

現在は全日本女子チームがワールドグランプリを戦っているわけですが、女子においてもMBの扱いには苦労しているようです。男子のデータではありますが、今回示したMBの変化が何かヒントとなれば良いのですが……。

 

引用記事

・レゼンデが目指したバレーボールの姿 第4回(http://vbw.jp/7483/

 

文責:佐藤文彦
EBV(エビデンス・ベースド・バレーボール)連載中
「バレーボールのデータを分析するブログ」
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ の管理人
Coaching & Playing Volleyballにて「データから見るバレーボール」も連載中
『テンポ』を理解すれば、誰でも簡単に実践できる !! 世界標準のバレーボール(ジャパンライム)にデータ解析として参加
バレーボール以外にも、野球のデータ分析を行う合同会社DELTA にアナリストとして参加し、「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート」や、「セイバーメトリクス・マガジン」に寄稿している。

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