2014-10-12 21:51 追加
世界選手権女子2014の考察 アタック配分データから
世界選手権2014の考察
全日本代表 女子
はじめに
イタリアで開催されている世界選手権、残念ながら日本は2次ラウンドでの敗退となりました。直近のWGPが好成績だったため、世界選手権でも同等の成績を期待してしまうのが人情というものかもしれませんが、現実はそう甘くはないようです。
なんにせよ結果は既に出てしまっているので、ここから前進していくしかありません。しかし、考えようによってはチーム改善のための好機でもあります。勝っている時は、たとえ明確な修正点があったとしても、チームをいじり難いものですが、負けた時は「勝っているから良いじゃない」が無い分手を付けやすい状況だからです。
こういう時にやってはいけないのが、勝ったからOK、負けたらダメというALL or Nothingな考え方です。負けたから全て作り直しではいつまでたっても成果積み上げができません。良いものは残し悪いところを改善するためには、結果だけでなく、試合内容の吟味が必要です。
アタック配分データから世界選手権を振り返る
というわけで、世界選手権の試合内容を吟味していきたいと思います。今回はWGP終了時に見たアタックの配分データを見ていきたいと思います。
ロンドン五輪以降、2014年のWGPまでのアタックの配分データについては「WGP2014の考察 ロンドン五輪からの2年間-世界選手権を前に(http://vbw.jp/7857/)」を参照してください。ロンドン五輪以降、全日本はチームは“MB1”から“Hybrid6(以下ハイブリッド6)”という戦術の変遷の中で、 MBの枚数を減らすことで、特定の選手に集中していたアタックを分散する方向へとチームのスタイルを変えてきました。この流れが世界選手権においてどうなったかを見てもらえればと思います。
まずは世界選手権の全9試合の結果と、2014年のWGP-Finalのアタック配分データを以下の図1に示します。
WGP-Finalのアタック配分と比較すると、世界選手権のデータは1st(打数が一番多かった選手)への配分が多く、3rdと4thへの配分が少なくなっています。世界選手権の傾向としては、特定のアタッカーへ集中する傾向があったといえます。
このデータは全9試合のデータをまとめたものなので、もう少し条件別にデータを見てみたいと思います。以下の図2には勝った試合と負けた試合別にアタック配分のデータを示します。
データを見ると、図1にで見た特定のアタッカーへの集中傾向は勝った試合でより顕著であることがわかります。一方、負けた試合ではアタックの配分はWGP-Finalのデータに近いものであることがわかります。
さらに詳細なデータを見るために、試合ごとのアタック配分データを見てみたいと思います。まずは1次ラウンドのデータを以下の図3-1と図3-2に示します。
続いて2次ラウンドのデータを以下の図4-1と図4-2に示します。
以上のようにデータを俯瞰すると、試合によって特定のアタッカーに打数が集中するタイプの試合と、WGP-Finalのデータと似た分散したタイプの試合があることがわかります。分類すると以下のようになります。
・集中型
○勝利:ベルギー(BEL)、キューバ(CUB)、プエルトリコ(PUR)、ドイツ(GER)
●敗北:中国(CHN)クロアチア(CRO)
・分散型
○勝利:ドミニカ共和国(DOM)
●敗北:アゼルバイジャン(AZE)、イタリア(ITA)
こうしてみると、試合によって戦い方と結果がかなり違うことがわかります。
まとめ
今回用意したデータはここまでです。Hybrid6を掲げて挑んだ全日本チームですが、全ての試合を同じように戦ったわけではないということを確認してもらえればと思います。
こうした結果が、全日本チームが意図したものなのか、それとも相手にやり込められての結果なのかということは現在あるデータからはわかりません。さらに分析を追加していく必要があるのですが、できれば世界選手権の全試合の結果と全日本の試合結果を比較したいので、以降は世界選手権の日程が終わり次第分析したいと思います。
少なくとも現段階でいえるのは「相手が大きいから負けた」という単純な理由ではないだろうということです。そのような白か黒かで結果を塗り分けるのではなく、一つ一つの試合内容を吟味していくことが重要かと思います。
最後に、今回グラフに示したデータの詳細な数値を以下の表1-1と表1-2に示しておきます。
文責:佐藤文彦
「バレーボールのデータを分析するブログ」
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ の管理人
Coaching & Playing Volleyballにて「データから見るバレーボール」も連載中
バレーボール以外にも、野球のデータ分析を行う合同会社DELTA にアナリストとして参加し、「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート」や、「セイバーメトリクス・マガジン」に寄稿している。
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