2016-09-18 09:55 追加
リオデジャネイロオリンピック バレーボール女子振り返り
~大会全体の傾向と日本の位置づけ~前編
Others / 全日本代表 女子
2016年リオオリンピックバレーボール女子は既報の通り中国が優勝し、日本は予選はA組4位で準々決勝に進出し、アメリカに敗れ5位という結果となりました。本記事では、リオオリンピックと2012年ロンドンオリンピックの全体の傾向をデータを元に比較し、その中で日本の位置づけがどのように変化したのかを見ることにより総括を試みることとしたいと思います。
全体の傾向と日本の位置づけを見るために、公式帳票の各項目についての統計を取りました。その図を下記に示します。
まずは、ロンドンとリオの全体を比較すると大きく変わっているのがサーブ、レセプション、ディグです。
サーブについては得点、失点ともに増えている結果となっています。レセプションに関してはレセプション成功率が大きく下がっており、レセプション失点率も増えています。サーブとレセプションを合わせて考えると、サーブの効果がロンドンオリンピックより上がっており、レセプションが崩される場面が多くなっていることが分かります。その代償としてサーブの失点というリスクも負っているようです。ディグについてはロンドンよりDig(良いディグ)の本数がかなり減っています。ただ、Receptions(プレーをつなげることができたディグ)との合計本数を見ると変わっていません。大会毎の記録員による基準のばらつきの可能性もある内容となっています。
また大きく変わっていませんが、セットに関してはリオのほうがランニングセット(ブロックが1枚orつかない状態でアタックが決まったもの)率が上がっています。
スパイクとブロックはアタック決定率、アタック効果率、ブロック得点/セット、リバウンド本数/セットと各指標ほぼ変わらない結果となっています。
全体を見るとサーブで攻められ、レセプションは崩されていますが、攻撃力については低下しておらず、ブロック失点が変わらないことから崩されることに対して対応をしていることが伺えます。またリバウント本数、ディグ項目の合計本数がほぼ変わらなかったことから、1得点当たりのラリーの本数に関してはほぼ変わらなかったようです。
一方日本のデータに注目をしてみると、日本が目指していた四つの世界一「サーブ」「サーブレシーブ」「ディグ」「ミス失点の少なさ」のうち指標で評価が可能なサーブ、サーブレシーブ、ディグについてはロンドンと変わらず平均値を上回っており一定の成果は上げています。ただレセプション失点率は全体平均とほぼ変わらずロンドンに比べると倍以上となっており、全体の流れに抗うことができなかったようです。
ブロックに関しては得点はロンドンとほぼ同じで全体平均をかなり下回っています。それを補っていたリバウンド本数に関しては全体平均は上回っているものの、リオの方が1本/セット近く減っています。
筆者が注目したのは、セットとスパイクがロンドンでは平均かやや上回っていたのがリオでは下回ってしまった点です。
セットのランニングセット率はロンドンに関してはほぼ変わらなかったのがリオでは5%近く下回りました。この指標のみではブロックが1枚orつかない状態の多さは分かりません(スパイクが決まらないとカウントされないため)がアタッカーが有利な状態で打つ回数が少なかった可能性があります。
スパイクに関してはアタック決定率がリオで下がったことによりアタック効果率も平均を下回る結果となりました。
バレーボールは得点を取ることにより勝利に近づくスポーツなので攻撃につながるセット、スパイクの指標がロンドンよりリオの方が相対的に下がったということは勝利に対し不利に働きます。次回は日本のセット、スパイクのデータに関してもう少し詳細に見たいと思います。後編に続きます。
黒羽白
引用データ
・FIVB http://www.fivb.org/
・Rio2016 Volleyball https://www.rio2016.com/en/volleyball
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