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インタビュー

2020-02-20 17:34 追加

越境バレーボーラー 福澤達哉「自分がやろうとしているバレーボールは、代表チームで共有できてきているかなと感じます」

Others / 全日本代表 男子

セッターは元堺ブレイザーズのニコラ・ジョルジエフの弟

――ワールドカップで4位と好成績を上げ、満足感もあるんじゃないですか?

自分がやろうとしているバレーボールというのは、チームで共有されてきたかなというのは思います。若い選手が多いので、一番は結果を出して自信をつけていくことがチームにとって大事なことで、それが今回のワールドカップではいい方向に進んだというのが、僕個人の感想です。(パナソニックでのチームメイトで、ポーランド代表主将の)クビアクとオリンピックで勝つことの難しさのを話していた時に、「今までのオリンピックを思い返してみろ。優勝したチームの平均年齢、大体平均30歳を超えてるよ」。それだけ重要な試合で勝つことの難しさっていうのはあるということですよね。だから、北京の時に出たOQTだって、結局コートの中に立っていたのは荻野(正二)さんじゃないですか。目に見えないスキルだけじゃない部分の大切さは、やっぱりチームに何かしらいい影響を与えるのは常々考えているところです。目先の、自分のパフォーマンス云々よりも自分がコートの中に立った時にどういう表現ができたか、どういう行動が起こせたか、結果チームがどうだっていうそれだけを意識してやっています。

――余計に背負うものはないですか?

あんまりないですね。捉え方としては、自分が信じてやってきた道の証明が、オリンピックに行けるかどうかってことなのかなと。そこに過度のプレッシャーはないです。

――よく「オリンピックのために…」という選手の話も聞かれたりしますが。

オリンピックのためにと思うことが果たして正解なのかは、わからないですよね。やってきたことの120%出せることなんて、まずないわけじゃないですか。だとしたら今できる自分の限界を一つずつ少しずつ超えていくことが一番大事なことであって、自分がこれだと思ったタイミングをオリンピックに持って行くことが一番難しい。だからこそフランスを選んだのはあるし、一日一日一歩ずつ階段を上がっていくその歩幅が、少しでも大きくなればいいなと思ってこっちに来ています。

――実感として歩幅が大きくなっているのは分かりますか?

やっぱりいい経験しているなという思いはありますし、常にプレッシャーを感じる中で、自分をコントロールして戦うことの難しさは当然感じています。その環境に身を置いていることが必ずプラスになってくると思うので、そこは大事にしたいなとは思います。どこに行っても一緒だと思うんですね、僕。練習内容とか練習環境とか、当然違うところは多々あります。食生活も含めて、やるべきことはひとつ…「結果を出すこと」。それに尽きる。最近思うのは選手が自己評価をするじゃないですか、今日のプレーはこうだったと思います…って、それほど意味のないものはないなって思いますね。

――でも、よく質問されますよね?

よく聞かれるんですけど、自分がー観客としてサッカーを見ている時に、ルールとか戦術とか分からないじゃないですか。でも、本田圭佑選手がこうだとか長友選手がこんな考えをもってやっているとか、そこには興味はある。だとしたらそっちを発信した方が、よっぽどいいんじゃないかなと思います。

――SNSでは、戦術に関し否定的に捉えている意見も見かけますが…。

楽しみ方はそれぞれであって、そういう玄人好みの人に対しては、そういう記事も面白いかもしれない。でも、アスリートが一番説得力がある部分って、白黒がはっきり出るからこそ、そのプロセスが手に取りやすい。この選手はこういう考えでやっているから、これだけの結果を出せてるんだって繋げやすい。石川だったり柳田だったり若い選手で、彼らがどういう心構えでやっているのか、どういう挑戦をやっているのか、バックボーンを説明しつつパーソナリティーの部分を引き出す方が、よっぽど聞いていて楽しい。その人の哲学みたいなものが見える選手ってすごく惹かれるし、そういうのが結果的に集客に繋がったりするんですよね。今の時代ってSNSが発展しているので、いくらでも発信できる。その発信の仕方も、全員がやっていることよりも、何か特殊な発信とか面白い発信、それがたぶんファンを作るということだと僕は思います。

――確かに福澤さんのインスタグラムは興味をそそられます。

僕のインスタグラムは、好き勝手やってるだけです(笑)。

――でも、こういう話とのギャップは大きいですよね。

バレーボールの人気を高めていくためには、これから一人一人の発信力が高まる、今までより見せ方が大事になってくると思います。パーソナリティーの部分の発信力ってバカにできなくて、そういうところの見せ方を含めてプレーヤーの仕事なんだよと。取材してもらうことが当たり前じゃなくて、もっと協会が引っ張ってきていろんなところに発信できればいいとも思うし、自分のパーソナルな部分を発信していける選手が増えていけばもっと面白い、バレー界の盛上りも出てくるんじゃないかなと常々思うところではありますね。注目してもらえる期間なんてそうないぞ!っていう(笑)。
アスリートっていうより表現者、っていう感覚でいないと。当然SNSの扱いは難しいところもあります。それも含めて協会のやるべきマネージメントもそうですし、いろんなマネージメントも多分できると思います。

――そんな深く考えながらのSNSの発信だったんですね…(笑)。

いえいえ、いろんなハードル上がったら、すごくつまらなくなりますからね。僕のは、全然しょうもない、思いついたことをやってるだけのインスタ(笑)。

――全ての延長線上に…というお話でしたが、この先の目標というのはどうでしょうか?

全く無計画でバレーボールだけやるっていうのは、あまり意味がないことだと思うので、バレーボールと並行してその先のビジョンというのは持ちつつ、でも、逆算の仕方だけはしないでおこうかなと思います。当然引退のタイミングというのは頭の中で考えているものはありますけど、今こうして挑戦できているこの時間を一番大切にしたいので。(五輪予選での中断が終わり)シーズンが再開しますけど、その中で自分のパフォーマンスもどうなるかも正直分からないですし、当然ケガとのリスクも隣りあわせとしてあるし、オリンピックに行けるという確証もどこにもなくて…でもそれも含めて、最後にオリンピックに立てているかどうかというのも、アスリートとして選手としての道だと思うので、そうなれるように、この日々努力はしますし、やるべきことをきちんとやりたいなとは思います。

2020年1月15日、パリバレーのホームで行われた対モンペリエの戦いは、惜しくもフルセットの末敗れた。しかし、スタメンから最終セットまでコートに立ち続けた福澤選手。試合後にはこう話していた。
「海外でやっていると、自分のプレーをコートで発揮するのはもちろんのこと、チームが崩れた時に立て直す声かけであったりアクションの難しさを感じます。言語の部分、各選手の国民性など、日本みたいに一筋縄じゃいかないですからね。まだまだ勉強することはたくさんありそうです」。

冷静に現実を受け止めて打開しようとする福澤選手に苛立ちや焦りは見られない。パリで過ごす「最後の海外選手生活」が実り多きものであることを願う。

取材・文:宮崎治美

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