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コラム

2014-05-18 20:46 追加

Evidence-based Volleyball事始め 第10回 続・サーブ効果の効果-サービスエースの影響

バレーボールを「分析」という視点から読み解く連載

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はじめに

今回も前回に引き続き、サーブ効果について考えていきます。前回の分析では、

“サーブ効果が増えることで、試合に勝利する確率は高くなる。”

という分析結果を示しました。しかし、この結果はサーブ効果と同時にサービスエースが増えたことで勝利する確率が高くなっただけで、サーブ効果自体には勝敗を左右する影響力はないのではないか?とも指摘しました。

今回はこの可能性を実際に検証してみたいと思います。今回のような分析のパターンを知っておくことで、単純に「勝敗と関連がある」と言われたデータであっても、第3のデータの影響を想定しやすくなるのではないかと思います。

サーブ効果とサービスエースの関連

こういう場合は、最初に第3のデータと相関を見ておくのがセオリーです。今回はサーブ効果とサービスエースの関係を確認します。サービスエースが影響しているのであれば、サーブ効果とサービスエースの間には相関関係があるはずです。データを以下の図1-1と図1-2に示します。

z1_1z1_2

どちらも関連が無いといって良い結果だと思います。関連が無かったので、この時点で以下のようにまとめて分析を終えても大丈夫です。

サーブ効果が増えると試合に勝利する確率が高くなる。しかし、サーブ効果が多いほど、サービスエースも多くなり、試合に勝利する確率が高くなったのはこのサービスエースの影響である可能性が考えられる。そこで、サーブ効果とサービスエースの関係を分析したが、関連は認められなかったので、サービスエースの影響を想定する必要はないだろう。

といった具合です。これで終わりでも良いのですが、分析のノウハウをお伝えしたいというのもあるので、サービスエースの影響があったと仮定してもう少し分析してみたいと思います。

もうちょっと分析する

さて、問題を整理すると、サーブ効果と勝敗の関係を見たいのに、サービスエースが邪魔をして見たい関係を見ることができない状態です。なので、サービスエースの影響を除きたいわけですが、方法はいくつかありますが今回は、

データをサーブ得点率が同程度のグループに分類し、そのグループ内でサーブ効果の増減と勝敗との関連を分析する

という方法をとります。具体的には以下の図2に示すように、サーブ得点率の値から3つのグループを作ります。

z2

分類の基準は第7回で示した、サーブ得点率の平均値と標準偏差の値を使って、平均値±標準偏差の値を基準にデータを3グループに分けた形です。図2は男子のデータですが、女子でも同様の基準によってグループ分けをしてしまいます。

この3つのグループで、サーブ効果が増えることによって試合に勝利する確率がどのように変化するかを分析してみたいと思います。

もし、サーブ効果が増えても勝敗に影響がないのであれば、以下の図3-1に示すような結果になると思います。

z3_1

逆に、サーブ効果が増えることで勝敗に影響があるのであれば、以下の図3-2に示すような結果になると思います。

z3_2

実際のデータはどちらの予想に近い形になるでしょうか?

分析結果

それでは、分析の結果を以下の表1-1と表1-2に示します。

h1_1
h1_2

このデータをグラフ化したものを以下の図4-1と図4-2に示します。

z4_1z4_2

男女ともに3つのグループは、平行線というよりは右上がりの関係といってよさそうです。このような結果から、サーブ効果自体にも勝敗への影響はあるといって良いと思います。

しかし、前回でも指摘しましたが、勝敗との関連の分析結果で重要なのは勝率50%(勝つか負けるかわからない)からどれだけ成績が離れているかということです。

その観点からグラフをよく見ると、勝率が高いのはサーブの得点率が高いグループです。しかも、得点率の高いグループでは少々効果が少なくても勝率は高いままです。一方、サーブの得点率の低いグループでは、効果率が一番高くなっても勝率はせいぜい50%程度で、サービスエースが無くても勝てるとは言えない結果です。

以上の結果より、

  • サーブ効果が増えることで、試合に勝利する可能性は高くなる
  • サーブ得点率が高くなくては、試合に勝利する可能性は十分高くならず、サーブ効果による勝敗への影響はそれほど強くない

ということがいえると思います。ちょっとややこしいかもしれませんが、このデリケートな匙加減を理解しておくことがサーブでは重要ではないかと思います。

まとめ

サーブ効果が増えることで試合に勝利する可能性は高くなるけれど、その影響は非常にデリケートでそれほど強くないというのが分析結果の示すところです。「勝敗に影響はない!」とスパッと結果が出てくれたほうがわかりやすくて良いのですが、世の中そう単純にはいかないようです。

それでは、弱いなりにある勝敗への影響力はサーブ得点と比較してどの程度のものなのか?というのは残念ながら今回の分析からはわかりません。Vリーグのサーブ効果率の計算では、サーブ得点の大体1/4の評価をサーブ効果にしていますが、これが案外いい線を言っている可能性も考えられますし、もう少し倍率の調整が必要かもしれません。

このあたりは今後の課題としていきたいのですが、次回はVリーグのサーブ効果率では考慮されていないサーブミスについて考えていきたいと思います。

 

第1回 Evidence-based Volleyball事始め
第2回 ”アタック決定されない率”
第3回 ”普通”のアタック決定されない率とは
第4回 アタック決定されない率と勝敗の関係
第5回 アタック決定されない率の質
第6回 アイディア募集
第7回 サービスエース考
第8回 続・サービスエース考
第9回 サーブ効果の効果

 

文責:佐藤文彦
「バレーボールのデータを分析するブログ」
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ の管理人
Coaching & Playing Volleyballにて「データから見るバレーボール」も連載中
バレーボール以外にも、野球のデータ分析を行う合同会社DELTA にアナリストとして参加し、「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート」や、「セイバーメトリクス・マガジン」に寄稿している。

 
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