2015-06-23 12:05 追加
帰ってきた男たち リオ五輪を控えたブラジル男子
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■サントス効果
セルビア戦、オーストラリア戦と出場したリベロのサントスに、監督は「期待通り」とブランクを感じさせない動きに満足げだ。本人は、「カムバックということにこだわらず、他の選手と同じです。代表に選ばれた責任を果たし、自分のいい仕事をするだけです」と集中する。セルビア戦では、WSのソウザがサントスの前にオーバーハンドでレセプションに入るも後ろにボールをそらせるミスをした。「今のはリベロにまかせるボールだろ」とすかさず叱咤する場面もあった。
サントスがチームに入ったことで2つの効果がある。まずは、ブラジルチーム内でのリーダーシップ。常に大きな声を出し、「チームで起爆剤の様な役目だけれど、それは全員に求められること。常にアグレッシブにゲームを進めないといけない」と皆を引っ張る。そしてもうひとつは、相手チームにプレッシャーを与えることだ。オーストラリアのキャプテン、トーマス・エドガーは、「過去に対戦したこともあり、素晴らしい選手だということはよく知っています。ブラジルの手ごわいブロックを抜いても、まだ彼がレシーバーとして後ろにいるのですから、ブラジルコートにボールを落とすことは容易ではありません」と、やりにくさを認めている。
■1-7の恐怖
2014年サッカーW杯準決勝。優勝、最低でも決勝進出と“国家使命”とも言える期待を背負ったブラジル代表が、まさかの1-7という大敗を喫した。前の試合で怪我をしたエースのFWネイマールを欠き、彼の分も頑張らなくてはという気持ちが空回りしてしまった。この試合に衝撃をうけたのはファンだけではない。リオ五輪を目指す監督や選手たちにとっては「自分たちもああなるのだろうか」という恐怖とプレッシャーをもたらした。そこで、昨年、個人、団体を問わず様々な競技の監督たちが集まり、今までの経験をもとに良い点、悪い点などを話し合う会議がもたれた。参加したレゼンデ監督は、様々な観点から選手へのサポートを話し合い、またサッカー代表の広報担当からは、マスコミ対応やバッシングのすごさまで体験談を聞いたという。
リベロのサントスの他に代表チームに戻ってきたのが、監督からコーチとしての招集がかかったアンデルソン・ロドリゲスだ。「軍隊女子代表監督やクラブチームでのコーチをやって、教えることに自信をつけてきたところへ、監督から話を頂き、引き受けました。とても誇りに思っています。選手としてコートに立ちたいという気持ちはもうありません。今は若い選手たちをのばすことしか考えていません」と言う。サントスもアンデルソンもともに五輪の優勝経験もあれば、決勝で負けた悔しさもある。チーム内でスタッフと選手の間の兄貴的存在になることで、いい潤滑油になっている。
リオ五輪という大舞台が近付いていることで、チームはプレッシャーを感じているのだろうか。二人とも「まだ五輪の話はでていませんし、こちらから話してもいません。それよりもお互いコーチとして選手として、しっかり自分の仕事をして、なぜ自分が代表チームに選ばれたのか証明し、責任を果たすことです。選ばれただけでは何の意味もありません」と話している。監督によれば、「二人とも後輩の面倒見がよく、いい手本になっている」という。きっと彼らがこれから訪れるであろうプレッシャーと戦う上で、チーム内で重要な役割を果たすのは間違いない。
■早く戻りたい!
さて、カムバック組とは逆に、レゼンデ監督は昨年の世界選手権での不適切な態度により10試合の出場停止処分中で、レオナルドコーチが監督代行としてワールドリーグの指揮を執っている。練習にはいつも通り参加しているが、試合中は会場の片隅で見守っている。昨年は、スポンサーのブラジル銀行の資金を協会幹部が流用するなど、なにかとごたごたが続いた。協会から謝罪があったのかと問えば、「全然。こういう時、日本人ならきちんと説明や謝罪をするんだろうけど、ブラジルではね……」とチクリ。
試合中はベンチ前でいつも熱くなる監督だが、現在の心境は、「落ち着いてゆっくりなんて見ていられません。コートにいる時よりもっとテンションが上がります。早く戻りたいです」と、うずうずしているようだ。レオナルド監督代行がセルビア戦、オーストラリア戦と、全員のメンバーを交代で試したが、それぞれの仕上がりに満足しているという。
サントスの他にも初戦から絶好調のMBリアド・リベイロは8年ぶりの代表復帰、30歳で初めて大会に招集された(親善試合に参加したことはある)リベロのチアゴ・ブレンデリなど新旧揃った楽しみなチームだ。早くコートに戻りたい、そして新しいスタートを切りたい、戦いたいと、監督の熱い思いは尽きることがない。
文責:唐木田真里子
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