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コラム

2017-04-22 09:50 追加

海外女子バレーのすゝめ 第7回 なぜ世界のスターは、トルコを選ぶのか

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会場はワクフバンクが所有するワクフバンク・スポル・サライ(Vakıfbank Spor Sarayı)。sarayıは「宮殿」や「殿堂」を意味する。会場内にはワクフバンクがこれまで成し遂げた数々の功績が大きく掲示されており、まさに殿堂という言葉がふさわしい。
トルコのクラブチームは観客席のついたアリーナを所持していることが多く、チームが試合会場を直接管理することでお手頃価格が実現しているのだろう。値段を気にせず、気軽に楽しめる興行として成立している。

この試合、ワクフバンクのスターティングメンバーは全てトルコ人選手で、海外から呼び寄せたスローティエス、ラシッチ、シュ・テイ、ヒルは控えに回った。普段はレギュラーのトルコ人選手(セッターのナズ、ミドルブロッカーのアクマンなど)も温存。試合に出る機会の少ない若手に経験を積ませようとする意図が、少なからずあったのだと思う。
監督のジョバンニ・グイデッティは、オランダをリオ五輪ベスト4に導いた名将で、今年からトルコ代表監督に就任することが決まっている。相手が5位のブルサだったことも関係しているかもしれないが、ジョバンニはすでにトルコ代表監督として始動していると感じた。

第1、第2セットとも、序盤はブルサにリードを奪われる苦しい展開。それでもジョバンニの的確なメンバーチェンジやタイムアウトが功を奏する。次第にコート内での連携が取れ始め、終わってみれば3−0のストレート勝ち。ベンチも含めた地力の差を見せつけた。

試合後、ジョバンニと接触することができた。
「日本は素晴らしいバレー大国だ。大好きな国の一つだよ!」とにっこり。今年からトルコ女子代表監督に就任するジョバンニに「幸運を祈っている」と伝えると、「アリガトウ!コンニチハ!(?)」と日本語で叫びながら去っていった。
トルコのファンは、ジョバンニを監督として迎える準備万端。ワクフバンクの監督を長年務めてきた名将が、今度は代表チームの指揮官として敏腕を振るうことになる。トルコが世界のトップにのし上がる日も遠くはないだろう。

トルコ代表監督に就任するジョバンニ・グイデッティ。左は同代表セッターのナズ・アイデミル

トルコ代表監督に就任するジョバンニ・グイデッティ。左は同代表セッターのナズ・アイデミル


トルコリーグでは、外国籍選手の登録は4名、同時に出場できるのは3名までという規定がある。外国籍選手に対する門戸の広さは、間違いなく大きな魅力だ。
一方、ヨーロッパ・チャンピオンズリーグや世界クラブ選手権にはその制約がない。つまり、チームに外国籍選手が何人いてもよいということ。エジザージュバシュ・ヴィトラにはタイーザ、コシェレワ、ボシュコビッチ、オグニェノビッチ、ラーソン、アダムズの6名が外国籍選手として所属しているが、このうち少なくとも2名がトルコリーグの試合には出られないということになる。毎試合前、チームは何とも心苦しい選択をしなければならないのだ。

外国籍選手の出場枠制限については、どの選手も知っていたはずではないだろうか?それでも彼女たちはトルコでプレーすることを選んだ。それほどの魅力がトルコ・バレー界にあるというのは、面子を見れば納得できる。世界中から集結するライバルと同じ空間で過ごすことは、何物にも代えがたい経験になるはずだ。

レベルが高ければ人気も高い。トルコにおけるバレー人気は、街中の至る所で感じることができる。ヨーロッパとアジアを結ぶ海底鉄道マルマライ線に乗車すると、トルコ・バレーボールリーグの広告がトレインチャンネルに流れた。

日本の電車では、このようなバレーボールの広告は見られない

日本の電車では、このようなバレーボールの広告は見られない


街歩きをしていると、公園でサッカーボールを使ってバレーをする女の子たちを発見。痛くないのかなあと心配にもなったが、サッカーボールでバレーをするというところに芯の強さを感じた。

トルコでは、ハイレベルなバレーをお手頃価格で毎週のように堪能できる。バレーを見る目が肥えているのは大人だけでなく、子どもも同じだ。たとえ味方であっても気の抜けたプレーは許さないし、もっといいバレーを見たいという気持ちも観客席から伝わってくる。
バレーボールを始めとしたスポーツを盛り上げる風土が、文化として根付いているトルコ。この国が元来持つ居心地の良さという魅力に加え、スポーツを心から愛する熱い国民性が、世界のスターを惹きつけているのだと思う。世界をリードするトルコ・バレーの勢いは、しばらく収まることはなさそうだ。

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文責 高住翔
写真 CEV

第1回 バレー新興国トルコに見る、選手と観客の関係
http://vbm.link/11284/

第2回 ありがとう、監督!― ニエムチェク監督がポーランド・バレー界に遺したもの
http://vbm.link/11779/

第3回 リオ五輪直前!因縁渦巻くA組、混戦必至のB組
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第4回 コートを去る、一時代を築いたヒロインたち
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第5回 オレンジ・センセーション―復活のオランダ
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第6回 海外バレーから学ぶ”THIS IS VOLLEYBALL”(世界クラブ選手権・マニラ)
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