2017-07-19 17:35 追加
越川優 さようならの代わりに。
SV男子
「絶対泣かないと決めていたんで」と試合後の会見で述べたように、彼の目に涙はなかった。つい最近、同じ言葉を聞いた気がすると思ったら、3月に引退した木村沙織の最後の試合でのコメントだった。「うるっときましたけど、我慢しました」というところまで同じだ。越川は結構涙もろい印象だったのだが。サントリーと、中垣内祐一が監督として率いていた堺が第12回Vリーグの決勝でフルセットの死闘を演じ、あえなく敗れたとき。北京五輪の出場権を獲ったとき。ワールドカップ2007で、最強ブラジルを追い詰めながら、指揮官の不手際で得点を没収され、それでもあきらめずに戦い続けたが力尽きたとき。昨季のV・プレミアリーグで、紙一重で入れ替え戦を回避したとき。今季のV・プレミアリーグ最終戦でまさかのフルセット負けを喫し、入れ替え戦が決定したとき。目を赤くして、大粒の涙をこぼしていた姿を思い出す。サオリンの引退試合で、思うところでもあったのだろうか。
3年前の黒鷲旗では、越川と同じく「プリンス」と呼ばれていた加藤陽一が引退した。引退試合となったグループ予選最終日、加藤の所属していたつくばユナイテッドの試合のあとに同じコートでJTの試合があった。加藤は一時期JTに所属していたこともあり、JTの選手も加わっての胴上げのあと、騎馬戦のような形でかつがれてコートを一周した。その時に騎馬上の加藤と越川がなにやら会話を交わし、握手をした。加藤陽一引退記事のために集まっていた記者たちがそれを見逃すはずもなく、引退記者会見のあと、JTの試合を終えた越川の元に、私も含めた数名の記者がぶら下がり取材をした。
加藤とどんなやりとりをしたのか、加藤の引退についてどう思うかを聞かれてコメントしたあと、記者たちがきびすを返そうとするのに、越川は「ちょっとちょっと! 今日の僕の試合については何も聞かないんですか?」と、とがめたのだ。黒鷲旗のグループ予選で、プレミアのチームが決勝トーナメントに駒を進めることはごくごく当たり前のことなので、ほとんどニュースバリューはない。しかし、こう言われてはしかたない。記者たちは神妙に、その日のJTの試合についてもコメントをメモしたのであった。これも、ある意味非常に彼らしいエピソードである。取材対応は常によく…しかし、「自分」をアピールすることを忘れない。
あの時、越川に「(加藤さんはやめてしまうけれど)あなたは、もっとずっと長くやってくれますよね?」と聞いたら「頑張ります!」と笑顔で返してくれた。それなのに、あれからたった3年で、こんな記事を書くことになるとは、思いもしなかった。いや、越川は引退ではなく、ビーチに転向なのだけれど。でも、黒鷲旗で、というよりもインドアで彼のプレーを見ることは、もう終わりなのだ。あの時私が想定していたのは、当然インドアでの現役続行だった。
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コメント
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山田太郎 [Website] 2012.04.20 13:00
越川選手のことはよく知らなかったけど、バレーの嫌なしがらみに翻弄されて素晴らしい選手の貴重な時間が過ぎてしまったのかと思うと切なくなりました…