2017-11-17 08:29 追加
「メインディッシュは試合、前菜、食後のデザートでも観客を楽しませる」 躍進ジェイテクトを支える早野GMの“マネジメント論”(後編)
SV男子
スーパーリーグについての提言
——それで人を楽しませるという中で、強化があるんですね。それにしても、段階的な強化ビジョンといい見事だと思いました。来シーズンから始まるとされるスーパーリーグについても考えをお聞きしたいのですが、どう見られていますか?
早野GM:そこの動きはある意味、バレーボール全体の転換期として捉えています、例えば、実業団の枠だけで一体感の醸成感とかは、世界で戦うためには実業団はダメだよねとは最近は思います。私もいろんな形で海外バレーを見させて頂いているのですが、海外ではお客さんが日本の黄色い声援とは全く違った熱狂的な応援ですから。これだよね、とは思いました。
例えば、会場をお客さんで満杯にしようと皆言っているが、目的と手段だけは間違えないようにしましょうと意見はしています。目的だけはしっかりしましょう、手段はいくらでもあります。目的がボンヤリとしていると、例えば「バスケットが(Bリーグを)やったからバスケに負けない」とか。これは目標ではない。バレーが例えば、世界一のなにかするとか、世界一のクラブにするとか、いろんな目標がありますよね。そのために何をするかというと、いくらでも手段がある。
今回、私は試合を見ている方が楽しいという言い方をしていますが、本当にスーパーリーグになったとしても、例えば、選手が変わらない中で「なにかあるの?」とは思います。見せ方とか工夫しなければならないですよね。
——確かに劇的に何か変わるのかなというのは、現時点では非常に感じる部分です。
早野GM:バレーボールルールは変えられないけど、例えば、2セット終わったら、選手達は一回コートから引き上げちゃって、その間に観客はバックヤードにいって飲んだりという時間があったりとか、試合終わったら全員がコートに入ってきて、触れ合うだとか、海外でやっていますよね。日本はあまりにファンを軽視していますね。スーパーリーグでは、やはりファンと距離を縮めて、バレーに興味を持ってもらい、バレー観戦は面白いよねと思ってもらえると、メディアも取り上げてくるし、子供達もどんどん興味をもってくれる。
——結局、今やバレーは、メディアにすらなかなか取り上げられません。一部の選手だけは取り上げられますが、メディアに取り上げられにくくなっているからこそ、バレーをやろうという子供達もどんどん減っていてと悪循環に陥っているなとは覆います。
早野GM:うちの選手には、例えば、いろんなところに出るのだったら、写真で出たり、テレビ出るんだったら、スタイリストをつけてやるくらいやらないとと思います。見られる意識がないといけない。バレー選手格好いいよねと。
——サッカーの三浦知良選手が以前同じこと言っていましたね。
早野GM:とにかくファンが喜んでいただくこと。これにつきます。
——チームマネジメントについて熱く語っていただきありがとうございました。
(取材後記)
日本のスポーツ界でGMといえば、Jリーグ、プロ野球を思い浮かべるかもしれないが、バレーボールで、VリーグチームでGMと言われても、何をしているのか、誰が務めているのかなかなかピンと来る人はいないと思う。
インタビューのやり取りをしていて、一つ考えさせられたのが、実業団チームの存在意義、プロ化が全て解決なのかということだった。私自身、日本のバレー界の根本的な低迷の原因はアマチュア体質と仕組み、そして組織だと思っている。ただ、早野GMの話を伺っていると、そもそも「観客をいかに楽しませるか」ということを尽きるのではないかと思わされた。どうやったら、楽しませられるか。徹底的に考えてやり抜く。その線上にチームの勝利もある。
ジェイテクトのプレミアリーグ昇格後の歩みは、お見事というしかない。東日本支社長を兼ねる早野氏がいつまでGMを続けることができるのかはわからないが、現在のVリーグ界隈にはなかなかいない貴重な人材かもしれない(私の見る目がないだけかもしれないが)。前編・後編と長い記事になったが、それでも、ここでは書けなかった貴重な直言や本音等、興味深い話を多くしてくれた早野GMに感謝したい。
プロフィール
早野容司
1960年3月3日、岐阜県出身。日大三島高校、日本大学と進み、卒業後は豊田工機(現ジェイテクト)に入社。バスケ部に属し実業団リーグで活躍。東京転勤を機に現役を引退した。「27〜45歳まで東京とかで営業していました」と営業一筋。2005年からバレー部のGMとしてマネメジントに関わる。16年からは東日本支社長についており、GMと兼ねながら忙しい日々を過ごす。
文:大塚淳史
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