2019-01-03 18:25 追加
“熟成したワイン”深津旭弘の存在感 JT天皇杯Vの功労者
平成30年天皇杯決勝関連コラム
V1リーグ 男子
東レのチャレンジが失敗に終わった瞬間、再びJTの選手たちが飛び跳ねてコート中央に集まり喜び始めた。セッターの深津旭弘は、その輪から一人離れながら、顔を下に向け拳を強く握りしめた。控えめな笑顔で、一人なにか余韻に浸っているようだった。そんな深津を、久原が肩を寄せて労い、エドガーが抱きしめて持ち上げて祝福し、深津にも満面の笑みが現れた。
天皇杯の優勝までの3試合、エドガー・トーマスや劉力賓(りゅう・りーびん)の豪快なスパイクやジャンプサーブが目立ったが、やはり深津の活躍無しには優勝を語れない。綺麗な姿勢から丁寧に、アタッカーの打ちやすいトスを上げ続けて、JTのアタッカーたちを牽引した。今シーズンのリーグ開幕戦のサントリーサンバーズ戦では、新加入した中国代表・劉の思った以上のジャンプ力だったのか、劉の高さを生かすトスを測りかねているシーンがあった。しかし、試合を重ねるごとに合っていき、高い打点から力強く打ち抜いている。今やエドガーと双璧を成す存在感だが、それも深津のトスがあってこそ。
また、深津のサーブは、JTのチーム戦術において、大きなウェイトを占める。今大会では劉やエドガーの強烈なジャンプサーブが目立ったが、深津の放つジャンプフローターサーブも効果的だった。一球ごとに意図を感じさせ、それを解釈するだけでも面白い。どこの選手、どこのゾーンを狙うのかというだけでなく、サーブ時の立つ位置を変えたり、味方を壁として利用したり、打つタイミングを早めたり、縦回転を加えたり。その結果、相手の守備が崩れ、深津のサーブ時に連続点が入りやすい。準決勝・豊田合成トレフェルサ戦の第1セット、第2セットの終盤では、深津のサーブから連続点を奪っており、勝利に貢献している。ブロックも上手い。手の出し方が上手く、1枚で止めることも少なくない。決勝はブロックポイントこそ無かったが、準々決勝、準決勝のいずれでも取っている。準決勝後に聞くと深津本人は「(ブロックは)そうでもないですよ」と謙遜していたが、ブロックの上手いセッターがいるのは大きい。
ヴコビッチ監督からの信頼も厚い。12月8日にあったVリーグのパナソニック戦での会見で、深津についてこう評した。「私は(監督就任して)6年目ですが、今年の深津選手のパフォーマンスは、自分が携わったの中でもベストシーズン。熟成されたワインのように成熟してきている」最高の褒め言葉である。
天皇杯優勝を決めた後すぐ、深津は会場をあとにし、表彰式にその姿は無かった。ただ、チームメイトたちが3番のユニフォームと一緒に祝っていた。
写真・文:大塚淳史
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