2013-04-23 18:43 追加
2012/13プレミア男子決勝レポ
2012/13プレミア男子決勝をレポート。
SV男子
先週行われたVプレミアリーグファイナル男子は堺ブレイザーズが3(21-25 26-24 25-20 25-19)1でパナソニックパンサーズに勝ち、2年ぶり5回目の優勝を果たしました。
スコア的には決して接戦といえるものではありませんでしたが、コートサイドで見ていた私にとっては面白いと思える試合でした。その理由を考えていきます。
展開としては、前半、中盤で引き離されていてもリードされているチームがじりじりと差を詰めてきてきっかけがあればひっくり返るのではないかという雰囲気があり、ゲームとして気が緩むシーンが少なく緊張感がありました。
プレーとしてはサーブ、アタック、ディフェンスの順で見ていきます。
サーブでは、強いサーブで攻めていました。ジャンプサーブを持っている選手が全力で打つシーンが多くありました。その中で石島選手はコントロールサーブが多かったですが、勝負どころではリリーフサーバーとして内藤選手を起用し、強烈なジャンプサーブでレセプションを崩しブレイク(サーブ側の得点)に繋げ堺のペースに持っていくためのきっかけを作りました。
アタックではアタッカーがフルスイングでスパイクをするシーンが多くありました。これを可能にしたのはハイセット(2段トス)の質の良さです。ラリーが続くとどうしてもハイセットを上げる場面が多くなります。このとき無理にスピードを求め低くもならず、かといって高くもなりすぎない。丁度良い高さでアタッカーが打ちやすい位置に上がっていました(もちろん多少のミスはありましたが)。さらに見逃せないのが、ファーストタッチの際に高くボールを上げる意識です。チャンスボールのときに加え、ディグ(スパイクレシーブ)の際も上に上げようとしていました。
上に上げることによって相手コートにボールが落ちる可能性が減ります。また各選手が自分の体勢(攻撃の選手であれば助走、セッターであればボールの下に入る等)を整える時間を稼ぐことができます。相手のディフェンスフォーメーションを整えさせる時間を与える面も否めませんが、もともとバレーボールは攻撃側が有利なスポーツなので攻撃面を整えるメリットのほうが上回ります。
トランジション(守備から攻撃に切り替わる場面)でファーストタッチで各選手の攻撃体勢を整える→ハイセットを精度良く上げる→アタッカーが力を出しきれる状態で打つということの大切さが見えてきました。
ディフェンスではディガーの位置取りが良く、強烈なスパイクを上げるシーンが多くありました。特にパナソニックの永野選手が目立ちました。ブロッカーの飛ぶ位置からボールが抜けてくるコースを読み取り、そこに位置取りをし、ボールの正面に入りディグを上げる。見た目は派手ではありませんが、素晴らしいプレーです。いわゆる「ブロックとフロアディフェンスの関係で」ディグが上がっていました。
サーブのスピードがある→スパイクのスピードがある→全力スパイクをディグしラリーが続くという男子バレーのスピードと力強さが良く出た試合だったのが面白かった要因に挙げられます。
プレーに加え、選手の気迫が表に出ているのも良かったです。前述のように選手が全力を出してプレーをしていたのが気迫を表に出すことに繋がったと考えます。プレーが面白い上に選手が盛り上がっている姿を間近で見られる。これはたまりません。ライブ観戦の良さを堪能できた試合でした。
ここからは、プレーを見て私が感じたことを書いていきます。
まずは、セッターのセット(トス)の質の違いです。パナソニックの宇佐美選手はボールを「トン」と突いてスピードをつける感じ。対する堺の今村選手はボールを「フワッ」と浮かせる感じ。コートの近くから見ていると軌道が違うのが良くわかりました。この違いにより、ミドルブロッカーの打点は堺の方が高いように見えました。ただサイドについてはそれほど打点の違いはわかりませんでした。ブロックの本数は堺の方が倍決まりましたが、セットの質だけでこのような差が生まれたのかは分かりません。
一つ見えたのはフワッとしたセットにより、アタッカーがコースを見る余裕がありそうなところです。今村選手のバックライトへのセットは軌道が高めで、ペピチ選手に対して垂直に近いイメージで落ちてきます。そのことによりペピチ選手がスパイクをするときに余裕ができます。この余裕を利用して、3枚ブロックの横を抜けるようなクロススパイクを打つシーンが見られました。勿論ペピチ選手の技術の高さがなければ成立しないプレーです。
(左)パナソニックパンサーズ #2 宇佐美大輔選手のセット (右)堺ブレイザーズ #19 今村駿選手のセット
課題として見えたこともあります。ミドルブロッカーの本数の少なさです。サイドに頼ることが分かってしまうとブロッカーにつかれる可能性が高くなりディフェンスが成功する確率が上がります。特にレセプションでいわゆるBパス、Cパスに崩されたときにミドルブロッカーを使うシーンが少なくなりました。パナソニックは縦のBクイックを使うシーンもありましたが単発でした。崩せばミドルブロッカーは使わない(使えない)これはディフェンス側にとって有利に働きます。「レゼンデが目指したバレーボールの姿 第2回」http://vbw.jp/2269/にも書かれているとおり国際レベルではこの課題に取り組み克服をしています。
ミドルブロッカーはネットの近くで攻撃をするという既存の概念を壊していく必要があります。
またVプレミアリーグ男子全体にいえることですが、苦しくなったら外国人選手頼みという点が変わらないところです。(唯一パナソニックは決勝戦は出ていなかったオポジットの清水選手の打数が多い)スカウトの段階で、スパイク力がある選手を選ぶ傾向があり、攻撃力が日本人選手を上回ります。そうなると苦しい場面で決めてくれることが多くなるので頼ってしまいます。堺はペピチ選手が総得点の半分近くを挙げています。外国人選手が決めるスパイクは豪快で良いのですが、外国人選手同士の打ち合いになりすぎると単調になり面白みに欠ける面は否めません。また日本人スパイカーが成長するチャンスを摘むことに繋がります。
これを克服する特効薬はないですが自分が攻撃できる体勢のときは助走に下がる、合図などでセットを呼ぶなど地道なプレーを続けるのしかないのかもしれません。
いろいろと書きましたが、決勝戦が面白かったことに変わりはありません。願わくばレギュラーシーズンでもこのような試合が多くなり、バレーボールに興味を持ってくれる方が少しでも増えることを期待しています。
文責:黒羽白
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コメント
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山田太郎 [Website] 2012.04.20 13:00
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