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コラム

2020-05-23 08:00 追加

カーテンコール山添信也(パナソニック)どんなときも変わらないひたむきさ

V1リーグ 男子

山添はもともと派手さはないが、いい選手だと思っていた。パナソニックの長身ミドルブロッカー枩田優介がなかなかうまくいかなくなったときに、さっと出てきて鋭いクイックを打ち込んでいた。いつしか、山添がスタートを務めることも多くなっていた。

2015/16シーズン。監督が南部正司氏から川村慎二氏に代わって2年目。1年目はまさかのファイナル6全敗で6位に沈んだ。当然この年は浮上が絶対に義務付けられていた。秋にはワールドカップが開かれ、「NEXT4」と名付けられた若者たちが人気を席巻していた。そのうちの一人、山内晶大がパナソニックに内定し、帯同した。パナソニックのミドルの対角は、ブロックが得意な白澤健児と、クイックが得意な山添の2枚だった。山内は、山添のポジションに入ることになった。

このシーズンもなかなか勝ち星をつかむのに苦しんだパンサーズ。レギュラーラウンド後半になって、三島であった東レ戦だったか。2セットを連取され、第3セットもかなりリードを許した後半に山添が投入された。山添はクイックともう一つ彼の武器であるサーブで崩し、ブレイクを奪った。しかし、投入されたのはすでに終盤だったため、彼の頑張りも実らず、その試合はストレートで敗れた。だが、私は見ていて初めて「山添信也」という選手のプレーに心を打たれた。自分より遥かに長身で、全日本に抜擢された内定選手にポジションを取られたら、普通は腐る。しかし、山添は一切そういう雰囲気を見せず、この試合での投入のされ方も、見ようによっては「敗戦処理」であっにもかかわらず、全身全霊でチームのために戦った。そのひたむきさは、いつの時代であっても、かなり貴重な資質だといえるからだ。

そのシーズンのファイナル3で、パンサーズは再び東レと戦うことになった。山内は怪我をして出られず、山添と白澤が対角を組んだ。試合は死闘だった。セットを東レがとれば、パナソニックも取り返し、勝負の行方は最終セットにもつれ込んだ。第5セット序盤。山添のサーブで東レのサーブレシーブを崩し、白澤がキルブロックで仕留める。これがなんと6連続で決まった。東レはここで戦意を喪失。パナソニックが決勝に駒を進めることとなったのである。山添のサーブは剛速球サーブではないが、コースを狙い、適度な力で攻めるジャンプサーブだ。6連続止めた白澤もすごいが、効果的なサーブをいれ続けた山添もすごかった。

そしてまた少し時計の針をすすめる。2018/19シーズンのファイナル6で、白澤が体調不良で欠場した試合があった。ファイナル6はもちろんどの試合も絶対に落とせない。このとき白澤のピンチヒッターを務めたのが山添であった。久しぶりのフル出場だったが、山添は攻守に活躍して勝利し、ヒーローインタビューにも選ばれた。なんと、現役生活で最初の(そして最後の)ヒーローインタビューだったという。これもやはり、たとえ控えに回っても常に全力で準備し続ける山添の姿勢がもたらした勝利だったと言えよう。2018/19シーズン、パナソニックはここ15年の間どのチームもなし得なかった連覇を成し遂げる。山添のこの地道な支えも、連覇になくてはならないものであった。

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