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コラム

2013-08-14 12:27 追加

Evidence-based Volleyball事始め 第5回アタック決定されない率の質

アタック決定されない率の質

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はじめに

前回までに、アタック決定されない率の性質をあれこれと分析してきましたが、今回は、アタック決定されない率の“質”を考えてみたいと思います。

アタック決定されない率は、以下のような方法で計算されるデータです。

アタック決定されない率={相手の(総アタック数 - 得点)}÷ 相手の総アタック数

これに、ブロックポイントを考慮に入れたものが、以下の計算式によって求められる「アタック決定されない率-B」になります。

アタック決定されない率-B=[{相手の(総アタック数 - 得点)}-(味方のブロック得点)]÷ 相手の総アタック数

今回は、この「アタック決定されない率-B」を使って分析をしていきます。

 

さて、第2回のデータでアタック決定されない率は、チームのディグの成績をある程度反映していることを確認しました。ところで、FIVBの帳票におけるディグには以下に示す4種類のデータがあります。

 

  • Digs(セッターがクイック攻撃を使用できるような良いディグ・捕れそうもない難しい強打、フェイントをファインプレーでディグ)
  • Faults(失点)
  • Receptions(Digsのような良いプレーではないが、プレーが継続したディグ)
  • Total Attempts(以上3つの合計)

この中でDigsの数が多くなるほど、ディグの質が高いということができます。こうしたディグの質が勝敗に影響するのか?というのが今回のテーマとなります。

 

分析データ

分析に使用したデータは、2009年から2012年までのワールドリーグ(男子)の430試合860チームと、ワールドグランプリ(女子)の315試合630チームのデータになります。

このデータより、Digs・Faults・ReceptionsをそれぞれTotal Attemptsで割った値を、Digs%・Faults%・Receptions%として、ディグの内訳を示す値として分析していきます。

 

ディグの内訳の基礎データ

まずは、ディグの内訳の基礎データを確認しておきたいと思います。以下の表1に、Digs%・Faults%・Receptions%の分布を示します。

 

h1

 

続いて、これらのデータと勝敗の関連を表2に示します。

h2

本来ならこれらのデータをきちんとグラフにまとめて勝敗との関連を考察すべきですが、今回は本題から外れるので割愛します。

 

 アタック決定されない率とディグの質と勝敗の関係

今回の本題は、アタック決定されない率とディグの質と勝敗という3点の関係です。これを検証するために、アタック決定されない率-BとDigs%の値から、分析データを分類しました。男子のデータを以下の表3-1に、女子のデータを表3-2に示します。

 

h3_1h3_2

 

分類の基準としては、それぞれのデータの、上位25%、50%、下位25%の値をとって4分割したものになります。数値はこの条件に該当するチーム数を示しています。

 

この分類だと、同程度のアタック決定されない率-Bの値のグループに対し、Dig%が異なるグループができます。Dig%が高いということはディグの質が高いということになるので、ディグの質が勝敗にとって重要であれば、アタック決定されない率-Bが同程度であれば、Dig%が高いほど勝利する確率が高くなることが予想されます。

 

それでは、各グループの勝率をまとめたものを以下の表4-1(男子)と表4-2(女子)に示します。

 

h4_1h4_2

 

このデータをグラフ化したものを以下の図1-1と図1-2に示します。

 

z1_1z1_2

 

データとしては、Digs%の高さというよりは、アタック決定されない率-Bのほうが勝敗への影響は大きくなっています。アタック決定されない率-Bが低くても、Digs%が高ければ勝率が50%以上になるケースや、逆にアタック決定されない率-Bが高くても、Digs%が低ければ勝率が50%以下になるケースがほとんど無いからです。

 

したがって、勝利するためには、ディグの質を高めるよりも、アタック決定されない率を高めるほうが重要といえます。質よりも、繋いだ量のほうが重要であると言って良いと思います。

 

まとめ

今回の分析は、質の良いディグを上げることよりも、まずはディグの量を増やすことが重要であることを示しています。アタック決定されない率のデータだけではディグの質まではわからないので、もしディグの質が勝利するために重要な場合は、アタック決定されない率だけを見るだけでは不十分となってしまうところでしたが、今回の分析結果を見る限りそこまで気にする必要は無さそうです。

もちろん、ディグの質が無駄だとはいいません。出来るなら質の良いディグのほうがその後の展開は有利になると思います。ここで指摘したいのは、勝利するための優先順位として、ディグの“質”と“量”を天秤に書けた場合に“量”のほうが重いということです。

チームのディフェンスの戦略を立てていく上で参考になればと思います。

 

引用データ

 

文責:佐藤文彦
「バレーボールのデータを分析するブログ」http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ の管理人
バレーボール以外にも、野球のデータ分析を行う合同会社DELTA にアナリストとして参加し、「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート」や、「セイバーメトリクス・マガジン」に寄稿している。

 

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