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インタビュー

2013-11-19 12:00 追加

越川優 今、僕らがやっていること

グラチャン2013を控えて越川優が語る、ゲーリージャパンの現状

全日本代表 男子

1-IMG_2656――今年、全日本男子は新体制でここまで結果を出せていないですよね。
今は自分たちがやっていること、ゲーリーが導入していることを信じてやっていくしかない。それを、ある程度期限を決めて、「ここまでにやれよ」ってするべき。それは世界選手権だったのかも知れないけど、結局それは出られなくなっちゃったから、それが来年のアジア大会なのか今年のグラチャンなのかわからないけど、そこまではゲーリーに預けたなら、信頼して預けきるべきだと思うんですよ。

「せっかく外国人監督が来たけど、何にもかわんないじゃん」って言われたりするけど、いやいや、やってることは全然違いますよって言いたいですね。今は、なんて言うんだろう、「内容を見て、見守って欲しい」時期なのかもしれない。勝てていない結果だけを見て、現場も見に来ないで決めつけないで欲しいんですね。もちろん僕らも勝ちたい、結果は欲しいけど、僕らがそれを言い過ぎてしまったら、ゲーリーの方向性がぶれてしまう恐れがある。確かに判断しなきゃならない期限はあるだろうし、それを間違えてはいけないとは思います。

――今のお話しをうかがっていると、越川さんは現状では、ゲーリーのやり方を評価し、信じてついていっていると考えていいのでしょうか。
もちろんです。

1-koshikawaservvsNED――サーブについてなんですが、個人的な印象では、以前のあなたは追い込まれた場面でこそ連続エースを取るようなビッグサーバーだったと思うのですが、そのあなたを含めて世界バレー予選ではみんなサーブに苦しんでいましたよね。まあ、あなたがいなかった昨年のOQTでも植田監督自身が「今日はサーブミスで負けた」とコメントするような試合があった状況でしたが。世界バレー予選以降はそこは改善されたのでしょうか?
アジア選手権後、二つの路線でやってきました。一つは今まで通り強いサーブを打って、その成功率を上げていこうというもの。もう一つは、戦術的なサーブ。狙いをつけてコースをついていく。その二つの路線ですね。僕からスタッフにリクエストしたのは、サーブの指示をもっと出して欲しいということ。

――試合中に?
そう、試合中に。ジャンプサーバーにしても、戦術的なサーブについてもね。ワールドリーグで、僕らも色々試しながら、ゲーリーも色々試しながらというところもあったのですが、ジャンプサーバーに対する指示というのがほぼゼロだったんです。フローターサーブに関してはどこどこに打てという指示は出ていたけど、たとえば、じゃあ前の人がミスったときにどうすればいいのか。打ってもいいのか、それともつないでいった方がいいのか、そういった指示が全くなくて。それはチームの戦術だから、ちゃんと指示を出して欲しいと。

日韓戦にしてもアジア選手権にしてもそこが結構曖昧で。もちろん個人のサーブの調子もありますけど、勝負しなければならないときもありますし。サーブの戦術って言うのはもっと要求していった方がいいなと思っていたので、そうしました。で、話は戻りますけど、鹿児島合宿からやってきた二つの路線は、サーブだけでなくてブロック、ディフェンスとつながっていくことなので、その辺の関連も含めてよくなっていくといいなと思っています。

1-yakoyamakohukoshikawabock――ゲーリー監督は「アジア選手権以降はサーブとブロックを強化してきた」と言われていましたが、ブロックの方は? 基本はリードブロックですよね?
基本はリードブロックだけど、状況によってコミットもあります。まずブロックは、目の動き。それについてはすごく「なるほどな」と思ったこともあった。実際それをやりながら、慣れてきて、できるようになってきた。

――目の動きって?
簡単に言うと、ボールから目を離す時間が長い。

――今までに比べて?
今までに比べて。
自分たちがサーブを打ちます、ネットを超えます、で、相手がパスします、そうしたら、ボールがどこに返ったかがわかるじゃないですか。そのあとはボールを見ないでセッターを見る。もちろんその間にアタッカーの動きとかも見ますけど、基本的にはセッターを見るんですね。セッターがボールを上げるまでセッターを見る。上げたらまたボールを見て、どの位置に上がるか。どの位置に上がるかはセッターの動きを見ていればわかるんですけど、上がったあとに、ボールがどの辺に飛んだのかなというのを把握したら、次にすぐアタッカーを見るんです。

――今まではずっとボールを追っていたの?
やっぱりボールを追っている時間が長かったです。それが、ボールを追う時間を減らして、相手の体の動きを見る時間を増やして読むっていう感じ。トスもそうだし、スパイクに関しても相手のアタッカーの癖を読んで、っていうリードブロック。

――なるほど。
その中にもちろんコミットもオプションで付け加えていくわけですけどね。リードブロックって今までボールについていくみたいなイメージがあったじゃないですか。確かにボールにはついていくんですけど、読むのはボールではなくて、相手のプレイヤーの動きを読む。

――結構意識の変換をしないといけない?
そうですね。そういところなんか、今回実際のゲームでどれだけ結果が出せるかというのをみんな楽しみにしています。

だから、さっきも言いましたけど、もちろんチームとしても選手としても「結果」は欲しい。でも、それも大事だけど、やってきたことがゲームでどれくらい結果が出るか、ということの方が僕は今は大事だと思っていて。

――見る方にもそこに注目して欲しいですか。
そうです。ただやっぱり見ている方は「何をやってきているのか」ということは知らないわけだから、ちょっと複雑なところはあります。

――なるべく伝えられるように頑張りますね。
それを伝えていただけるとすごく有り難いですね。ゲーリーが代表監督になって半年ですけど、半年と言っても実質チームとして練習しているのは2ヶ月ちょっとくらいです。5月の20日に始まって、ゲームをやりながらお互いを知るために色々やって。8月にゲーリーが「こういうことがしたい。こういうことが必要だ」と言って、やり始めて。で、そこに不運にもあれがあって、色々言われるわけですよ。

――私も書きました。
まあそれはいいんです。ああいう結果だったからね。でもそれに対しての声を聞いていたんじゃ、改革は進まないと思うんですよ。僕らは今、言ってみれば「中学一年生」のようなものなんです。

――それは、どういう意味で?
今まで20年バレーをやってきて常識だったことと全然違っているんですよ。サーブレシーブ一つ、スパイク一つ、ブロック一つとっても、変えていってるんです。だから、バレーを始めたばかりの中学生と同じ。逆に、これまでたたき込まれてきたことを変えなければいけないから、さらに大変かも知れない。中学一年生は真っ白な状態で教わるわけだから。

――これまでの常識と違うことというのは? サーブレシーブについては、世界バレー予選の時に千々木君に少し聞いたのですが、体の正面で取ることにこだわるなとうかがいましたが。
そうそう。これまではレシーブは必ず体の中心でとれ、それが間に合わなくてもできるだけ足を動かして足の間でとりなさいって言われてきたんですよ。それを、「いや、体の外で取るんだよ。腕をこうやって出して取るんだよ」って言われるわけです。

――変えることに勇気が要る?
要りますね。不安もある。不安は今シーズン月に一回は試合がある。だから、どれだけ今までの物を捨てていいのかっていう葛藤があったわけですよ。あったというか…今でもあるわけで(笑)。もちろん、これまで培ってきたものがあるから、何とか試合になっているというところもありますけど、新しいことをやるのは怖いですよ。4月にバレーボールを始めた中学一年生が、期末の末にスパイクが打てるようになるかっていうとならないですよ。僕らは今そういう状況なんですね。極端に言うと。

ゲーリーの教える新しいやり方に慣れて、いかにゲームの中でもやっていくか。その中でも結果はもちろん欲しいので、今までやってきたこととの融合もはかりつつ、というところです。それが今年だと僕は思うんですよ。ある程度割り切らないと。そうじゃないと、結局外国人じゃダメじゃないかって後戻りしちゃったら、アトランタ、シドニー、アテネと出られなくて、北京は出るだけで終わっちゃって、っていうその状態に後戻りしてしまうと思う。

東京五輪が決まって、この中のメンバーが何人出るかわからないですよ。出られても一人か二人だと思いますけど、リオを東京につなげるために、ある程度日本のバレーの方向性を決めておかないと、東京はまたただ出られるだけになってしまう。東京五輪という視点から見ればリオは通過点かも知れないけど、はっきり言ってここにいるメンバーにとってはメインはリオなんですよ。リオで戦うためにゲーリーが呼ばれて、今改革している所なんだから、今は判断を迫る時期ではないと思うんですね。

1-IMG_2659

聞き手:中西美雁
写真:FIVB、中西美雁

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