2014-04-20 19:49 追加
小学生バレーの競技人口を増やす為には 第一回〜富士山方式で競技人口が増えるのか〜
小学生バレーの現場からの声
Others
長女が入部した小学生バレーボールチームにかかわるようになって、丸2年が経過しました。他の保護者からの要望を受けて始めたコーチ業ですが、今では楽しくて仕方がありません。子供ってとにかく、吸収が早いんです。教えたことがどんどんできるようになります。時には教えてないことまで出来るようになっていたりします。一緒に笑って、泣いて、勝って、負けて、年がら年中これだけやって生活できないかなぁと思ったりもします。それくらい楽しいです。
さてこの度、「競技人口が増えない理由」について、何か書いてくれないかとのご依頼を頂きました。指導者としてはたった2年の新米(しかも資格も何も無いど素人)ですけど、実際に現場に立つことで色々と感じていることがあります。あくまでも一個人の意見として、読んで頂けたらと思います。そしてあくまでも、「小学生バレーボールの競技人口が増えない理由」であることを予めご了承ください。それでも、他のカテゴリに当てはまる事柄も多いと思います。
さて、皆さんは「富士山方式」という言葉をご存知ですか?これについては「「富士山方式」: 千酔亭日乗 」に書かれていますので、以下に引用します。
これは二宮清純氏の著書「勝者の組織改革」という本に出てきた言葉です。Vリーグ発足前、識者として意見を求められた氏にバレーボール協会の幹部が言ったのだとか。『頂上が噴火することで裾野を広げた富士山のように、バレーも頂点たる全日本を強化し、爆発的に強くなることで底辺を広げる』…という理屈。
全日本が強くなれば、競技人口は増える。強い全日本を見た人たちが、その姿に憧れたり、バレーボールに興味を持ったりして競技を始めるはずだと。そういうことなんでしょう。
本当にそうでしょうか。
私が長女のチームにかかわり始めたのは、2012年のこと。丁度ロンドンで全日本女子がメダルを獲る直前ですね。長女のチームは長女が入る以前、人数が6人にも満たなくて試合に出られない期間が数年間あったと聞きます。全日本女子が世界選手権で銅メダルを獲ったのは2010年、ロンドン五輪が2012年。人数が足りなくて試合に出られなかったチームが、一時期は15人もの部員を抱えるチームになりました。まるで、全日本女子の戦績に呼応するかのように。
この結果だけ見ると、まるで「全日本女子が強くなったから部員が増えた=競技人口が増えた」ように見えます。本当にそうなのか、ふと疑問に思って、つい最近、部員の子どもたちに聞いてみました。
「この中に、全日本女子がメダルを獲ったのを見て、バレーボールを始めようと思った子はいる?」
手を挙げた子は、13人中2人でした。うち一人は、半分は知り合いに勧められたからだと言いました。1.5人です。ビックリしたのは、全日本女子がロンドン五輪で銅メダルを獲得したことを知らない子が一人いたこと。さすがにそれはどうだろう、と思いましたけど。
このような結果から、「全日本が強くなれば競技人口は増える」と言えるでしょうか。もちろん、13人中1.5人もいれば上々の結果である、と言えるかもしれません。しかし実際のところ、2010年以降も人数が足りず、大会に出られなかったり、6人ピッタリだったり、スタメンの半数を入ったばかりの1年生が占めていたり、というチームがいるのをこの目で見てきています。私がかかわるようになってから、長女のチームは安定して部員を揃えていますが、それはもしかすると、ただ単に運が良いだけなのかもしれません。
では、どうすれば子供たちがバレーボールに興味を持って、始めてくれるのでしょう。子供たちがバレーボールを始める主なきっかけは、親がバレーボールをやっていて楽しそうだと思ったとか、従姉妹のお姉ちゃんがやっていたからとか、小学校の先輩に憧れてとか、クラスの友達がやっていたからとか、放課後に体育館で練習しているのを見て興味を持ったとか、親に入れと言われてとか、無理やり連れて来られたバレーボール教室で意外と楽しいと思ったとか、そんなだったりします(長女のチーム調べ)。
確かに、全日本が強くなることは、競技人口が増える要因の一つかもしれません。しかし、それだけで「爆発的に」増えるとは思えませんし、実際増えていません。競技人口の増加には、全日本が強くなる以前に必要なことが、山ほどあると思います。そのいくつかについて、次回以降に書いて行きたいと思っています。
文責:太田鉄次郎
都内某所の小学生バレーボールチームでコーチを務める。
コーチ歴2年の新米コーチ。
中学からバレーボールを始め、現在もクラブチームで競技を続ける。競技歴は20年以上。
一人でも多くの子どもたちにバレーボールの楽しさを知ってもらうことが、お世話になったバレーボールへの恩返しと考え、日々競技に指導に邁進中。
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