2022-03-29 15:32 追加
バレー界のイニエスタ、クビアク(パナソニック)がポーランド代表を引退「もう代表ではやりきりました。鏡の前に立ってこれまでのプレーや姿勢を見ても、恥じることはなにもない」
クビアクミニインタビュー
Others / SV男子
バレーボールV.LEAGUE DIVISION1MENの強豪パナソニックパンサーズでプレーするミハウクビアク選手。バレー選手としては決して高身長ではないが、多彩なプレーで世界中のファンを魅了している。もちろん日本でもそうだ。観戦者だけでなく、選手の中にも彼のファンは多い。ポーランド代表の主将を8年間務め、その間に世界選手権を連覇した。昨夏の東京オリンピックではコンディション不良で思ったようなプレーができなかったが、リーグ開幕当初はパリ五輪も目指したいと意欲を見せていた。そんなクビアク選手が3月25日、「代表から引退する」と自身のインスタグラムで発表した。SNS嫌いだった彼が代表引退の場に選んだのはインスタグラム…。3月27日のFC東京戦ではストレートで勝利し、バレー界のMVPにあたるVOMを獲得。コートインタビューでは「FC東京の皆さんと、またここ東京で対戦できることを祈っています」と今季限りで活動休止を発表している相手をねぎらった。試合後に、代表引退についてと心に残った試合などを聞いた。
クビアク:今日の試合に勝てて嬉しいです。今日は昨日と同様に、みんないいプレーができていました。私たちはセミファイナルに向けて準備をしています。まだ2試合残っていて、まだ(ファイナル3に進む)チャンスがあるので、それを勝ち取りにいかなれければいけません。そのためにしっかり頑張っていきたいと思います。
――先日ご自身のインスタグラムにてポーランド代表からの引退を発表されましたが、改めて引退を決めた理由と、なぜこの時期に発表をされたのかについて教えてください。
クビアク:私が代表活動を続ける唯一のモチベーションはオリンピックでした。オリンピックは主要な大会の中で、唯一私がメダルを手にしていない大会だからです。オリンピックは4年に1度の開催ですので、そのためにはあと3年間代表活動を続ける必要がありますが、次のパリ五輪のときには私は36歳なっています。代表活動はとてもタフです。四六時中精神を集中させないといけないような大きなプレッシャー中で、自分の身体を奮い立たせモチベーションを保ち続けないといけませんが、そうしている自分の姿がもう見えてきませんでした。もうそれほど若くもありません。そのようなこと計算して、よく考えて今回の決断に至りました。
もう代表はやり切りました。私の目標は、結果的に勝とうが負けようが、最初から自分ができることをすべてやる、すべての試合を最後の試合と思って挑むことでした。代表ではもうそれはやり切ったと思います。鏡の前に立って自分の姿を見ても、自分自身やこれまでの自分の姿勢、パフォーマンスに対して恥じることは何もありません。私は間違いなくできることをすべてやってきました。悔いはありません。
発表のタイミングについては正しかったと思います。代表チームの監督やコーチがチームメンバーの準備をする必要があったからです。新しい監督が自分を呼ぼうとしていたかどうかわかりませんが、私は引退することを決めたのでこの時期の発表になりました。
――ポーランド代表として日本でプレーした試合の中で一番印象に残っている試合を教えてください。
クビアク:一番印象に残っている試合は、2011年のワールドカップでの試合です。その年は私の代表チームでの最初のシーズンで、また初めて来日したのがその大会でした。当時のワールドカップはオリンピック予選を兼ねていて、とても大事な大会でした。その大会では多くの試合に臨みましたが、その中でもセルビア戦が自分にとって一番印象的な試合になりました。あるシーンが記憶に残っているからです。セルビアの選手をブロックしようとしたときに彼のスパイクが私の頭に当たり審判の向こう側へ飛んで行ったんですが、そのボールを追いかけてなんとか繋ぐという場面がありました。そのシーンがとても印象的で今でも覚えています。
ちなみに、パナソニックで一番印象に残ったのは、数年前のファイナル6のJT戦、清水邦広選手が大怪我をした試合です。本当に大きな怪我で、正直言うと、清水さんはもうそれまでのようにはプレーできないのではないかと思っていました。でもここまでリカバリーしてくれて、素晴らしい選手だと思いますし、こうやってまた一緒にプレーできるのはとても嬉しいことです。
――日本にいるポーランド代表ファンの方々へメッセージをお願いします。
クビアク:いつも私たちをサポートしていただきありがとうございます。私たちのファンは本当に世界中にいて、どこでプレーしてもいつも会場は満席です。アメリカの会場に行けばポーランド系アメリカ人の人たちがたくさんいますし、カナダや他の国でも同様です。
日本には特別な感覚があります。日本ではたくさんプレゼントをもらいますし、ファンの人たちのサポートのやり方も他のヨーロッパなど国々と違うからです。ポーランド代表をサポートしてくださり本当にありがとうございます。残念ながら私をサポートすることはもうできませんが、これからも(ポーランド代表への)サポートをよろしくお願いします。日本での試合は毎回楽しみにしていました。最初に来た時からすぐにこの国が大好きになりました。だからこそ私は今もここでプレーしています。
公式な発表ではないが、来季も日本でプレーするのではないかという噂も聞こえてくるクビアク。代表からは退いたが、まだしばらくは我々の前でその妙技を披露してくれるだろう。
取材・文:堤敏樹
編集:中西美雁
写真:縞茉未、FIVB
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