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コラム

2022-05-12 14:55 追加

河野裕輔のエール!16稿 2021―22シーズンの締めくくり!黒鷲旗ファイナル振り返り サントリーvsジェイテクト

V1リーグ 男子

◆やはり王者は強かった! サントリーサンバーズ2連覇!!
Vリーグ・黒鷲旗と2冠、そして2019年に行われた前大会に引き続き2連覇を達成した。このサントリーの強さの源は何なのか。少し考察してみたい。

Vリーグ公式記録(2021-22レギュラーウンドのデータ検証)を見てみると、サントリーはスパイク決定率1位(53.1%)サーブ効果率3位(7.2)、サーブレシーブ成功率9位(52.8%)と、スパイク力にストロングポイントがあるチームであると言える。
さらにサーブレシーブ成功率が9位であるにも関わらず53.1%のスパイク決定率を誇っている。これについては2つの要素が考えられる。

要素1 ・Bパスからでもサイドアウトが取れるオフェンスデザイン
要素2 ・ムセルスキーを中心としたハイセットからのブレイク力

◆サントリーサンバーズのオフェンスの特徴
サイドアウト(相手チームにサーブ権があるときの得点)、ブレイク(自チームにサーブ権があるときの得点)両面での特徴ともいえるがアタックライン付近からのファーストテンポでの4枚攻撃がしっかりと定着しているため相手は常に3枚のブロッカーで4枚のスパイカーをマークしなければならない状況になる。そしてOPムセルスキーのハイセットを打つ能力はもはや説明の必要はないだろう。218cmの身長を活かし丁寧にコースを打ち分けるのだから、相手にするのは非常に難しい。しかしサントリーのブレイク力は、ムセルスキーだけではないことにポイントがある。BパスからMBポンシーコンはファーストテンポ、小野遥輝はマイナステンポとタイミングの違う攻撃を仕掛け、OH柳田将洋、藤中謙也は後衛においても常に4枚目の攻撃としてパイプ/Bick(センターからのはやいバックアタック)に助走している。よって相手チームとしては、ムセルスキーをマークしたいけれど他のスパイカーもマークを外せない状況にしばしば陥っていた。

総合すると、サントリーサンバーズというチームは「レセプションが多少乱れても、チームとしてのオフェンスデザインは崩れない」という特徴があると言える。これが強力なサイドアウト力に繋がっているのではないか。さらにサイドアウト力がある=被ブレイクが少ないということに繋がり、連続失点をしづらいチームであるともいえる。
それに加え、ブレイクする場面おいてはOPムセルスキーを軸にしたハイセットも武器のひとつとなっているため、どんな状況下でも攻撃能力が担保されているということが言える。固いサイドアウトで連続失点を防ぎ、ブレイクのターンではムセルスキーを中心とした攻撃で連続得点を重ねる。ファンの皆さんも今シーズンこんなゲームを多く目にしたのはないか。

◆Vリーグでの不完全燃焼を晴らしたジェイテクトSTINGS
 今シーズン、コロナ禍の被害を最も受けたチームのひとつであるジェイテクトSTINGS。何度も繰り返された試合日程の変更や中止で、心も体もコンディショニングに苦労したことは想像に難くない。そんなジェイテクトも黒鷲旗にしっかりと照準を合わせてきた。OP宮浦のポジションには都築で対応、Lも興梠が非常に楽しそうにプレーしていたのが印象的だった。さらには途中でフェリペと交代した柳澤広平の連続SAは圧巻。こちらも是非アーカイブで確認して頂きたい。

この大会においてジェイテクトのメンバーの表情を見ていると「当事者意識」という言葉が浮かんできた。リーグの悔しさを晴らす為、選手全員がいつゲームに出場しても活躍していた。この事からジェイテクトは短期間でのチーム力の集中的な向上が起こったのではないかと予測する。チーム全員の集中力がいいタイミングでしっかりと高まることにより相乗効果でチーム全体が上手く回り出す事は大いにあり得る。この成功体験を来シーズンのゲームでも見れることを期待する。

◆最後に

「勝つ」よりも「勝ち続ける」ことは何倍も難しいと言われているが、まさに今サントリーサンバーズが体現し続けている。山村監督はじめ選手、スタッフの皆さんの努力には頭が下がる思いだ。今後も是非強いサンバーズであって欲しいし、日本の全てのチームの目標であっていただきたい。それが日本バレー界の発展につながるのだから。
そしてジェイテクトSTINGSにおいては、コロナ禍というリーグ中のコントロールできないアクシデントを乗り越え、素晴らしいプレーを見せてくれた。

あらためて両チームの選手、スタッフの皆様に賞賛と敬意を送りたい。

今シーズンもこれでひとまず終了だが、パリオリンピックに向けた代表チームが始動している。次はリーグでしのぎを削った面々がチームメイトとなり諸外国と戦っていく国際シーズンの開幕だ。やはりバレーボールは面白い。

皆様、今回も最後までおつきあいいただき有難うございました。今回はこのあたりで。

文責:河野裕輔
写真:黒羽白

※プロフィール 河野 裕輔(かわの ゆうすけ) 1975年8月1日生まれ ポジション OP.OH 古河4ますらおクラブ-古河2中-足利工大附高(現足利大附高)-中央大学-JTサンダーズ(現JTサンダーズ広島) 現在社業の傍ら、V.TVにて解説者、オーカバレーボールスクール埼玉校にてコーチ業を勉強中。

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