全日本バレー、Vリーグ、大学バレー、高校バレーの最新情報をお届けするバレーボールWebマガジン|バレーボールマガジン


バレーボールマガジン>コラム>河野裕輔のエール!! 22稿 ついに届いた銅メダル! 元代表・Vリーガーによる男子バレーコラム

コラム

2023-08-19 13:06 追加

河野裕輔のエール!! 22稿 ついに届いた銅メダル! 元代表・Vリーガーによる男子バレーコラム

男子バレーコラム

全日本代表 男子

元バレーボール日本代表で、V1リーグのJTサンダーズ広島でも活躍した河野祐輔さんによる男子バレーコラムです。今回は、もちろんあの46年ぶりの快挙について。

皆様こんにちは。河野です。7月23日、龍神ニッポンは大きな国際大会では46年ぶりとなる銅メダルを手にした。(2009年のグランドチャンピオンズカップでも銅メダルでしたが、グラチャンは6か国の参加であり、ランキングポイントの付かない大会でした)今回の前の銅メダルは1977年のW杯だという。VNL終了時において世界ランク5位という素晴らしい位置にいる龍神達だが、今回はその戦いの振り返りと今後の展望に焦点を当ててみたい。

■日本・名古屋ラウンド~龍神の快調な船出 フランスにリベンジ!~

このラウンドではイラン(6/6)、セルビア(6/9)、ブルガリア(6/10)、フランス(6/11)の4戦が行われ、名古屋市のガイシホールに詰めかけた満員の観客の中、素晴らしいスタートダッシュを切ることができた。2023年の龍神の仕上がりはどのようなものか、とワクワクしながら観戦していたが、このラウンドのターゲットゲームは初戦のイラン、最終戦のフランスの2戦だったのではないか。

初戦はどのチームも非常に難しいゲームとなることが多いが、龍神は今までやってきたスタイルを変えることなくさらに精度を向上させて臨んだ。昨年と比較して大きく成長したと感じられたのがディフェンスだ。日本のサーブから始まるトータルディフェンスに各国がハマる様子は、見ていて非常に小気味いいものであった。MB(ミドルブロッカー)小野寺太志、山内晶大のブロック効果率も上がっているのでは?と感じることも多かったこのラウンド、シャットアウトやワンタッチもそうだが、きっちりと相手のコースを限定するブロックが成功しておりその結果、相手はリベロ山本智大のところに「打たされる」のだ。

ここの精度が上がることにより石川主将の言う「アタックディフェンスからの切り返し」が龍神の強力な武器の一つとなったことは間違いないであろう。そして若手中心のフランスとはいえ3-1で勝ち切ったことによるメンタルの優位性獲得、強豪国からの勝ちという収穫があったことも大きかった。

■フランス・オルレアンラウンド~歴史が動いた!大きな収穫~

このラウンドはカナダ(6/20)、キューバ(6/21)、ブラジル(6/22)、アルゼンチン(6/24)の4試合がマニラの大観衆の中行われた。ここでの大きな収穫は30年ぶりのブラジルからの勝利と東京オリンピック銅メダルのアルゼンチンからの勝利だ。特にブラジル戦ではサイドアウトの切りあいに持ち込み、強みであるアタックディフェンスからの攻撃でブレイクを狙うという戦術を機能させられたことが大きい。今までであれば先にレセプションが乱れアウトオブシステムの状態から被ブロックによる失点、というのが多く見られたが、今回の龍神は徹底したブロックフォローとリバウンド獲得という技術において、世界でもトップレベルの仲間入りを果たしたと言っていいだろう。

そしてここでは新しいヒーローが誕生した。OP(オポジット)宮浦健人だ。西田有志と同じ左利きのOPだが、タイプが違うと感じた。西田は思い切りの良さと強烈なスイングで得点していくタイプ、宮浦はコースを狙ったりブロックアウトを多用するスタイルに見えた。この二人のOPが交互に活躍する龍神は相手にとっては非常に嫌なチームになったな…と私はTVの前でニヤニヤしていた。

そしてこのラウンドでブラジルにフルセット勝利ということが、つづくアルゼンチン戦のフルセット勝利につながったことは言うまでもない。強豪に勝つということは、それだけで非常に大きな収穫となる。厳しい状況でも選手が勝ちを具体的にイメージできるということは非常に難しく、勝つという経験の中でしか養えないものだからだ。

■フィリピン・パサイシティラウンド~浮き彫りになった課題と確かな前進~

このラウンドは中国(7/4)、オランダ(7/7)、イタリア(7/8)、ポーランド(7/9)の4戦が行われ、2勝2敗、龍神達は通算10勝を収めることができた。ここで筆者が注目したいゲームは7/4の中国戦だ。1セットを失い2セット獲得、さらに1セットを失ってフルセット勝ちというゲームであったが、日本の良いところと課題が浮き彫りになったゲームであったと考える。ランキング的には格下の中国であったが、その戦術は日本をしっかり研究し尽くした素晴らしい戦術であった。名づけるなら「相手のシステム破壊に特化」である。

中国は自分たちがアウトオブシステムになってもハイセットで勝負できるという強みを生かし、とにかく強いサーブで日本のインシステムでの攻撃を封じるという作戦を取った。その結果サーブで崩されると中国のハイセットによる攻撃に対応できないという事態に陥った。これはポーランド戦でも起こったことだが、強烈な個による1点突破に対する対応というのが龍神に残った課題だと考える。また、その対応としてディグフォーメーションを微妙に変えることによって中国戦では勝利することができたことは日本の強みであろう。そして龍神が対応しづらい強烈な個というのが世界でも大幅に減ってきた(=龍神のサーブ、ブロック、ディグ力の向上)ことも重要な強みである。

>> コラムのページ一覧へ戻る

同じカテゴリの最近の記事

コメント

Sorry, the comment form is closed at this time.

トラックバック