2025-01-13 13:34 追加
吉永有希、笠井季璃、中村悠。若手が躍動するクインシーズ刈谷。「車体」の魂は継承されゆくか
クインシーズ刈谷 選手コメント
SV女子
国立代々木競技場第二体育館で開催される球技といえば、バレーボールよりバスケットボールのイメージが強いかもしれない。
SVリーグ女子、2025年初戦。NECレッドロケッツ川崎対クインシーズ刈谷は、新年早々の4日、5日にその代々木第二体育館で行われた。世間はまだ正月休み。最寄りの原宿駅は明治神宮への参拝客とエネルギーが充満する街に繰り出さんとする若者で溢れていた。
近年、東京グレートベアーズがホームゲームを開催しているとはいえ、女子チームがこの会場を使用することは稀だ。
果たしてどんな雰囲気になるだろうかと興味半分、不安半分だったが、結果はポジティブなものとなった。
国際大会の会場にも使用される第一体育館に比べればキャパシティーに限りはあったが、国の重要文化財でもある円形競技場はコロッセウムさながらの熱気に包まれ、濃密なバレー空間を醸造していた。
「まずはこういう場所を満員にして盛り上げたい」
NEC川崎、金子隆行監督も興行としての手応えを感じていたようだった。
リーグは5000人超規模アリーナでの常時開催を目指しているが、将来はさておき、SV女子の現在地としては最適な箱の一つだと評価できるであろう。
SVリーグは原則土日に同一カードを2連戦する。
1月4日のGAME1はホームNEC川崎が勝利。2セットを奪われてから3セットを奪い返す劇的な内容であり、刈谷側の目線で見ればセットゲームの恐ろしさを再認識させられる試合になった。
1月5日のGAME2は一転し、クインシーズ刈谷が逆襲に成功する。セットカウント1-2のビハインドに追い込まれたが、そこから流れを引き戻し、フルセットに持ち込んで勝利を収めた。
この2試合で対照的だったのが刈谷のアウトサイドヒッターのスタッツだ。
刈谷はキャプテンであるパスヒッター鴫原ひなたを休ませ、入団1年目の吉永有希(東京女子体育大卒)と笠井季璃(旭川実業高卒)を2試合ともスタートから起用した。
GAME1は吉永がアタック決定率14.3%、笠井が18.4%とNEC川崎の前に「沈黙」。しかし、GAME2では吉永が32.5%(試合前半では4割台)、笠井が47.1%と結果を残した。
「昨日はサイドプレーヤーの役割について考えさせられる試合になりました」
刈谷が勝利したGAME2の会見の中で、前日の敗戦を振り返った吉永がそう言った。
フルセットでの敗戦が一番悔しい負け方だという。ましてや2セットを取った後に逆転を許したのだから痛恨の極みだっただろう。
「昨日は自分たちの会話が少なかった。特に後半で自分と笠井はお互いに助け合いながらプレーすることができなかった。今日はリザーブとして支えてくれた鴫原主将の力も借りて、アウトサイドヒッターが一人ひとりの選手ではなくコート内のふたりとしてプレーすることができた」
チームの得点源はオポジットのグロベルナ・カヤ。
彼女がより効果的に機能するためにも、アウトサイドヒッターにはオフェンスとディフェンス両面での貢献が求められる。
バランス型だが、より守備に長けた印象のある吉永、ダイナミックな攻撃が魅力の笠井。タイプは違うが、その二人が「ニコイチ」で攻守のバランスを取らなくてはならない。
アウトサイドヒッターはお互いが孤軍奮闘するのではなく、二人で一つ。
前述の吉永のコメントはそのことを指しているのであろう。
GAME1では押さえ込まれたが、GAME2でインパクトのあるスパイクを何本も放った笠井はその第2戦目にコートの中で感じていたことを話してくれた。
「後半はサイドアウトで我慢ができなくなった方が負けると感じていた。サイドアウトは何が何でも1本で切る。相手が凌いだらもう一回切りに行く。特に第5セットはそのことを強く考えていた」
笠井の溢れんばかりの闘志はチームの心に火をつける役割も果たしていた。
クインシーズ刈谷。リーグの方針に従って今季よりチーム名を改めたが、まだバレーファンの間には旧チーム名の「トヨタ車体クインシーズ」あるいは「車体」の方が通りが良いかもしれない。
代々、クインシーズには情熱的なチームカラーを体現するファイターが存在している。
都築有美子、竹田沙希、小田桃香、渡邊彩、藪田美穂子、現主将の鴫原もそうであるし、まだまだ名前は挙がるであろう。
笠井季璃からは、旧チームから脈々と続く「車体魂」とでも言うべき熱量が大いに感じられた。
笠井もまた、クインシーズのシンボリックな選手になっていくのかもしれない。
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