2014-09-28 11:23 追加
世界のバレー会場から 男子世界選手権閉幕
海外観戦コラムの特別編。男子世界選手権ファイナル
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自国開催で金メダル! 大成功を収めた男子世界選手権ポーランド大会
世界ランク1位のブラジルを破り、開催国ポーランドが40年ぶりの優勝! 2014世界選手権男子大会は、ポーランドにとって最高のストーリー展開で、9/21(日)に幕を閉じました。
62,000人の大観衆のパワーで、セルビアの力を完全に封じ込めたオープニングマッチに始まり、アルゼンチン、オーストラリアと、次々にストレート勝利で勝ち点を上げていったポーランド。自国開催のアドバンテージもあったのか、第1次ラウンドは強豪を避け快勝出来たものの、第2次ラウンドは勢いあるフランス、イラン、アメリカ、格上イタリアに厳しい対戦を強いられ、敗戦やフルセットの戦いをこなしながら、なんとか第3次ラウンドへ。ここで、早くも前回王者ブラジルとの対戦が待ち構えていました。
しかし怯むことなく強気の姿勢を貫くポーランドは、第1、第4セットを逆転で奪い取りフルセットの末勝利。勢いにのったまま強豪ロシアも3-2で打ち負かし、自らの手でファイナルラウンドの切符を獲得します。準決勝の相手ドイツには1セットを与えてしまいますが、手堅い勝利で決勝の舞台へ到達。最後は再び訪れた王者との決戦に全てがかけられたのでした。
9月21日日曜日、キャパシティ11,500人が満員になった会場で迎えた決勝は、地元ポーランドと大会4連覇のかかったブラジルの対戦。5日前の敗戦のリベンジに燃えるブラジルは、第1セット、王者らしく序盤から完全にペースをつかみ試合を進めます。大量リードを許すことになったポーランドは、これまでなら連続得点で巻き返すところですが、ブラジルのブロックに阻まれるなどして機会を得ることができないまま終盤へ。セッターをジズガからザクムニに替え、流れを変えようと試みるも、18-25とおとなしくセットを渡してしまいました。
続く第2セットは開始早々、ミカ、ヴィニャルスキのブロックポイントでポーランドが流れを引き寄せます。中盤にはラリーを制するなどして4連続ポイントで11-7に。しかしブルーノのサービスエース、ルーカスのブロックなど6連続得点で17-17とブラジルが追い上げることに成功。しかし、反撃もそこまで。ブラジルの被ブロックやサーブミスが重なって逆転はならず、25-22とポーランドが2セット目を奪い返しました。
セットカウント1-1で迎えた第3セットは前セット同様、ポーランドのブロックで始まりました。しかしペースを持ち込むまでには至らず一進一退の攻防が継続。2点以上の連続得点を互いに許さず終盤23-23まで進みますが、24点目をポーランドがミカのスパイクで奪い取ると、最後はブラジル、ルカレッリのスパイクがマーカーに当たり終了、これでポーランドが金メダルに大手をかけることになりました。
運命の第4セット、序盤は僅かなポーランドのリードで進みますが、中盤でブラジル優勢に。ピンチサーバー、フェリペの強烈なサーブとルーカスのブロックなどで17-20と逆転に成功します。しかし、ノバコフスキ、ヴィニャルスキのスパイクポイント等で21-21に追いつくと、22点目はブラジル、ルカレッリのセンターライン踏み越しのミスでポーランドに。さらにヴラズウィのブロックで連続得点が入りポーランドが23-21と引き離します。追い詰められたブラジルはここでクイックを使うも、これがネットを超えず24-21と自滅。
マッチポイントを迎えたポーランド、最後にベテランセッターザグムニが選んだのは長きに渡り代表のエースを務めてきたヴラズウィ。絶対的エースの魂がこもったスパイクは真っ直ぐにブラジルコートに突き刺さり、遂に自国ファンの目の前で輝く金メダルを手にしたのでした。
ベストオポジット賞に加えMVPに輝いたヴラズウィの攻撃力や、キャプテン、ヴィニャルスキの攻撃+守備の頼もしさ。クオスのブロック力、クビアクの安定感に若手ミカの飛躍的な活躍、若手セッタージズガとベテランザグムニを使い分ける監督のアンティガ。金メダルを手にすることができた要因はチーム内にいくつも見つけられますが、大きく運命を動かしたのは、なんといっても応援する観客の存在でしょう。優れた技術を持ち合わせたブラジルがここまでミスを連発し、冷静でいられなくなるほど精神を乱した観客の声援。この優勝はポーランドファンがもたらした金メダルといっても過言ではありません。
来場した観客以外にもこの決勝戦には、バレー熱におかされたファンがチケットを持たずとも会場に押し寄せ、交通規制が行われた体育館外の巨大モニター前で約4万人が観戦しました。周囲のレストランやバーでもTV放送を流し観戦を楽しむ人々がおり、バーの店員やホテルのレセプションでは勤務中にも関わらずマフラーを手に国歌を歌い、スコアを追い続ける人々がいました。街中がこの戦いに関心を寄せ勝利を祈り、そして悲願の金メダル獲得決定の直後には夜空に盛大な花火の演出。バレー王国と呼ばれるポーランドはこのような最高の盛り上がり幕を閉じ、世界選手権を見事に成功させました。
試合終了後、観客から聞こえてきたのは「ジェンクイェムイ」と連呼する声。「私たちからありがとう」という意味のポーランド語でした。戦ってくれた選手や監督、チームへ感謝の意を伝える姿は、他の国では決して見られないものではないでしょうか。バレーを愛し、母国を愛するポーランドだからこそ引き寄せた金メダル、技術だけではなくたくさんの思いが導いたこの奇跡のストーリーは、きっとバレー史に残ることでしょう。そして、新たな王者の誕生により今後のバレー界が面白くなっていく予感がするのでした。
文責:宮﨑治美
写真:宮﨑治美、FIVB
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