2015-06-18 17:45 追加
NEC山田晃豊監督 チーム力がつかんだ勝利
V1リーグ 女子
ーー実はバレーボールワールドの運営会社であるstudio108で2008年に成田明彦先生(元東海大学教授。同大学女子バレーボール部監督)監修の教則本を制作しまして、その撮影に当時1年生だった近江・山口両選手も協力してくれていました。
成田先生には僕も随分お世話になりました。大学時代よりもNECのコーチになってからお話を伺う機会があり、影響を受けた先生のひとりです。
ーー影響を受けた指導者という意味では葛和さん、吉川さん、東海大男子監督の積山和明先生などもいらっしゃると思いますが、どのようなことを学びましたか?
それぞれの監督像がありますが、僕は同じようにはできないし、自分らしさというかメンバー一人ひとりがチームを作っていくというような組織にしたかった。そのために指揮官として何をしたらいいかということばかり考えてきました。だから、自分の今いるメンバーで何がベストなのかということだけでしたね。そういう意味で言うと、大学時代の積山先生の影響も大きいです。当時、4年生がチームを作るという体制で、4年生に責任を預けてくれていました。失敗もしますが、それも成長だということで。だから、何というか、我々はもう社会人ですから、なおさら責任をもって、それぞれがチームを作る。そのためにどういうサポートができるのかということを考えてやってきました。
ーー例えば、どんなサポートを心がけていますか?
僕の役割としては、スタッフと選手というので考えると、スタッフとしてチームをしっかり機能させていく。その中で僕の役割があったり、それぞれのコーチの役割があったりというのがまずあって、チームの強化については本当にコーチ陣の努力でやってきていて…。僕は何をしているのでしょうね?(笑) 軌道修正くらいですよね。チームだけじゃダメだし、周りから見て愛されるようなチームでなければならないみたいなところに行くように、ちょっと横道にそれたら軌道修正してあげるくらいの役割しかしてないと思います。あとはメンバー、選手とスタッフ陣でこのチームを強くしてきたということを改めて感じています。
ーー謙虚ですよね。
(優秀な選手やスタッフに囲まれて)ありがたいというだけですね、本当に(笑)
チーム全員がレギュラーという気持ちで
ーーイエリズ選手の怪我がありましたが、いわゆる大砲の選手がいなくてもチーム力があれば、ほかのメンバーの力で克服できると考えましたか? 柳田選手の成長もありましたが…。
もちろん、怪我、アクシデントがあって、怪我の功名みたいなところも正直ありましたね。イエリズの故障で入った柳田が起爆剤になって、偶発的な力というのも大きかったですね。
ーー秋山選手と山口選手も監督が常に「全員がレギュラーという気持ちで」とおっしゃっているので、イエリズ選手の怪我が大ピンチとは思わなかったと。絶望感はなく、「他の選手で頑張れるよね」と前向きに捉えていたと言っていましたが…。
そうでしたか。どうしても6人がレギュラーでその他はベンチというイメージがあると思うんですね。そうではなく、野球で言う先発と抑えみたいなイメージで僕は考えていて、だから、スタメンで出る人にはその役割があり、後から出る人って、必ずしも劣ってるわけじゃないと思うんですよ。例えば、セッターの秋山は劣っているからサブなわけじゃなくて、苦しい時に出てくるとか、そんな感じでコート上の6人を考えているのは確かですね。
うまく言えませんが、イエリズにしても、ブロックとアタックは得点力という意味で武器ですが、守備の面では不安が残ったりします。そのような中でいかにいいところを補い合えるかと考えた時、イエリズのところにリベロを入れて、センターはバックアタックも守りもできるから、そこに入ってみようとか。そういう意味でみんながレギュラーで役割を補い合える…という形でやってきましたから、確かに、イエリズの怪我や大野の戦線離脱などもありましたが、補い合えるだけのものがあったと思います。
ーーリーグ中にそれが機能するように、夏の間からしっかり基礎を作ってやってきたのですか?
そうですね。大村ヘッドコーチが強化の方のリーダーシップをとってやってくれていますが、彼はよく「トータルバレーボール」と言って、アタックだけはすごいけど、他は今ひとつとか、レシーブだけとか、いわゆるレフトしかできない、センターだけしかできないじゃなくて、やっぱりトータルにバレーボールを知り、技術をつけていって、判断力なども含め、トータルに強くなろうというのをずっと練習の中でやってくれていました。
ーー全日本でやっているハイブリッド6とも近い考え方だと思いますが…。
もともと、僕が監督に就任してからですね。(当時)サイズ的には大きくなく、身体能力的に高いレベルではなかったと思います。選手には失礼かもしれませんが、足りないレベルをどう補うかというところから始まったと思います。レフトが小さいとハイセットになった際、打ち切って点数を取るのは難しい。であれば、センターがハイセットも打ってみたらどうかとか。だから、そういう発想は就任当初から考えていました。例えば、高校や大学も同じなのでは思って、必ずしも自分の理想通りの選手が集まっているわけじゃない。毎年毎年、選手が変わっていって、選手に合わせたチーム構想というのは毎年やっているはずで。だから、高校の試合なんか見ると、ハイブリッド6のようなことをしているチームもあって、むしろ、そういうところにヒントがありましたね。
ーーセンターが後衛でバックアタックを打つようになったのは、リベロの怪我がきっかけですか?
昨年の黒鷲旗だから、ちょうど1年前ですね。そういう取り組みはやっていましたが、試合で披露したのはそれが初めてですね。これも怪我の功名的なことがありました。当時のセッター、秋山、松浦、渡邉、奥山がともに怪我のため試合に出場できず、そして、リベロの岩崎も鳥越も怪我といった最悪なチーム状況でした。セッターとリベロがいなくてどうしようか?と。じゃあ、リベロなしでやろう。バックアタックはみんな打てるようになったので、センター入ってやってみよう。そして、セッターは急造でしたが八幡がトスを上げてというのを試しました。正直、「予選突破できるかな?」という状態でしたが、かろうじて決勝トーナメントには残りました。決勝トーナメントでは負けはしましたが、内容的には本当にそれぞれが補い合って、今の形のベースみたいなのがそこでできて、僕の「気づき」がありましたね。チームで補い合ってやっていけば、ここまでやれるな、と。
ーー昔はセンターがバックアタックを打ったり、サーブレシーブしたりしていましたね。
そう、それが当たり前だった。だから、そういう流れに(日本のバレー界)全体としても、これからのバレーボールの方向性的にもなっていくんだろうなと思っていましたし、全日本がああいう取り組みをするのは必然かなと僕も思います。そういう意味では全日本を応援していますね。あの取り組みは理解できます。
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