2015-07-06 19:59 追加
ワールドリーグ2015現況とセルビア会場
ワールドリーグ2015セルビアを中心としたレポート
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「アイドルも顔負け!? 黄色い声援上がるセルビアバレー会場」
5月末に始まったワールドリーグも、7月の第1週目を以てファイナル4(グループ2)、ファイナル6(グループ1)への進出国が確定、いよいよ佳境へと突入しています。日本が戦ったプールD(グループ2)は、フランスの全勝でファイナル4行きが決定していましたが、プールC、Fは最終週でようやく決定。開催国ブルガリアとともにアルゼンチン、ベルギーが、実質の決勝ラウンドであるファイナル6進出を懸けて戦います。その後、ファイナル6で待ち構えている開催国ブラジル、プールAから勝ち上がったセルビア、イタリア、プールBから勝ち上がったアメリカ、ポーランド、この6チームでメダルを争うのです。
そんなワールドリーグ真っ最中のバレー界、日曜の午後6時半、日暮れにはまだ時間がかかるセルビア・ベオグラードの会場前では、試合開始時刻1時間半前にも関わらず駐車場には大型バスが何台も到着し、小中学生の団体が列をなし続々と会場へと向かっていました。クラブのユニフォームを着用したバレーチームや私服の子供たちの団体、また、保護者の付き添いなく来ている小中高生たちの姿も多く見られます。もちろん子供のみならず老若男女各世代のバレーファンが会場へ集結。開場とともに観客席へと流れてゆきました。
他国に比べ若年層が目立つセルビアの会場、午後8時という遅い開始時刻にも関わらず多くの子供たちが訪れる理由の一つはチケットの価格にもあるのでしょう。2015年ワールドリーグ、インターコンチネンタルラウンド・イタリア戦、セルビアの首都ベオグラードの会場では1枚300ディナール(約350円)、ノビサドの会場では1階席300ディナール、2階席200ディナール(約230円)と破格の値段で会場前にて販売。(因みにセルビアでは水1.5リットルが約50円、路面電車1回約100円)
また、サッカーやバスケットボールに人気を譲るバレーボールは、収容人数8150席の会場を満員にすることはできませんが、逆にそれが子供たちには好都合なのかもしれません。応援に燃え上がる青壮年に人気のサッカーは時に警官の手を煩わす大惨事を引き起こすこともあるため、その点において危険度の低いバレー会場は安心の場所。実際に会場へ来ていた若い女の子のグループは「バレー会場は安全」と言っていました。
無料で配布されるスティックバルーンを手にした観客で盛り上がる会場は、若者たち、特に女子の高く黄色い声が会場中に響き渡り、まるでアイドルのコンサート会場にでもいるような雰囲気に包まれています。DJがサーブ時に名前を叫べば「キャーーーッ」の声。セッターのヨボビッチ(23歳)、ミドルのリシナツ(22歳)、オポジットのアタナシエビッチ(23歳)は日本のNEXT4に対抗していうならば、セルビアのNEXT3といえるでしょう。タイムアウト中エンド側を走るヨボビッチやリシナツは、サイドへ近づく度にその付近の団体から「キャーッ!!」と声が上がるほど。タイムアウト中のこのような声援は珍しく、まるでそこにジャニーズのアイドルがいるようでした。
そんな彼らはもちろん試合後もファン対応に追われていました。セルビアの選手のほとんどが他国のチームに所属しているため、自国のファンと触れ合えるのはこのナショナルチーム活動の時期のみ。少年少女たちに人気のアタナシエビッチは写真やサインの要望に応えながら沢山の子供たちに話しかけ、スターの壁を感じさせません。またこの日誕生日を迎えたオコリッチには試合後大きなセルビア国旗型ケーキが贈られ、多くのファンから「おめでとう」の声も。選手はインタビューの声が掛かるまで可能な限り、試合後のコートでファン対応をしていました。
ファン対応に追われていたのは監督も同様。黄金時代を築いた代表引退後、イタリア、ロシアと海外でプレーし、今季ペルージャの監督を経て代表監督に就任したグルビッチは今もなお、セルビアバレーのレジェンドの1人として人気を集めていました。観客席にはセルビア国旗の他に、彼が活躍したセルビアモンテネグロ時代の国旗も掲げられ、その時代のユニフォームに身を包む観客もいるほど。青壮年ファンの支持もここにしっかり見受けられました。
若い世代のアイドル的人気だけで終わらないセルビア選手、プレイヤーとしてもその高いスキルを各国で認められ、各強豪チームでスタメンとして活躍しています。イタリアのファイナル常連チーム、ルーベ(マチェラータ)には、キャプテンのスタンコビッチにポドラスチャニン。今季イタリアセリエA1の優勝争いにも関わったモデナには、石川選手もお世話になっていたというペトリッチとウロシュ・コバチェビッチが在籍。ポーランドの今季優勝チーム、レソビアにはイボビッチ。強豪スクラ・ベウハトゥフにはリシナツ。イタリアリーグで2季連続得点王のアタナシエビッチや、イタリア、ポーランド、ロシアと活躍してきたニコラ・コバチェビッチなど役者が勢揃ったセルビアは、ミリュコビッチが抜けた穴を埋めつつ順調に世代交代を進めています。
彼らを統括する新監督グルビッチは個々の技術を生かしながら日々チーム力を高めており、セルビアバレーは今まさに進化しつつあります。弱点だったレセプション、リベロとして選出されているマイストロビッチは、リーグではウイングスパイカーとしてプレーしているため不安がありましたが、そこをリベロの1人をレセプションとすることで2人のリベロを同時に使う作戦を実行。イタリア戦でこの形は見られませんでしたがこのような試行錯誤を重ねながら、このワールドリーグ(プールA)では格上のイタリアに3勝1敗。世界ランク1位のブラジルに対しても、4戦中3戦をフルセットに持ち込ませ1勝を挙げるという近年には見られなかった快挙を成し遂げています。その結果2010年以来のファイナルラウンドへ進出。5年ぶりにメダルの可能性を手にしました。
プールBわずか1勝に終わったロシア、世代交代に戸惑いが見えるブラジル、クレクをオポジットにし挑む新生ポーランド、ザイツェフにレセプションを委ね1年前の形に戻したイタリア、今季の各国代表は予想できない展開を見せています。初戦で7連続得点を挙げたアメリカやプールD圧勝のフランス(ファイナル進出は未定)、そして新監督のもと成長中のセルビア。オリンピック前年、金メダルを手にするのは一体どこのチームか・・・。気になる行方ファイナル4は7月10、11日ブルガリアのヴァルナで、ファイナル6は、7月15日からオリンピックの会場ともなるリオデジャネイロ「マラカナンジーニョ(Maracanãzinho)アリーナ」で開催されます。
文責:宮﨑治美(Harumi Miyazaki)
写真:FIVB
宮﨑治美
長崎県生まれ。2007年ワールドカップをきっかけにバレー観戦を始め、2009年頃から徐々に海外へも観戦に行くように。競技経験はないながらも、コートの中で繰り広げられるドラマ、選手の人間性に魅了され観戦し続けている。
第1回 ロシアリーグ
http://vbw.jp/5161/
第2回 イタリア「セリエA1」
http://vbw.jp/5267/
第3回 韓国Vリーグ「オールスターゲーム」(2013)
http://vbw.jp/5414/
第4回 ヨーロッパ選手権(2013)
http://vbw.jp/5760/
第5回 ドイツリーグ
http://vbw.jp/5923/
第6回 ポーランドリーグ
http://vbw.jp/6613/
特別編 男子世界選手権 第1次ラウンドを終えて
http://vbw.jp/7825/
特別編 男子世界選手権 第2次ラウンドの概要
http://vbw.jp/7911/
特別編 男子世界選手権閉幕
http://vbw.jp/8087/
第7回 2014/15イタリア「セリエ A1」選手動向
http://vbw.jp/8261/
第8回 佳境に入るイタリア「セリエA1」2014/15
http://vbw.jp/9310/
第9回 イタリア「セリエA」2014/15ファイナルラウンド
http://vbm.link/9775/
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