2015-07-28 20:02 追加
世界のバレー会場から WLファイナル
海外バレーコラム、今回はワールドリーグファイナル
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5月16日から始まったワールドリーグはフランスが優勝を飾り、先週末7月19日に閉幕。決勝はセルビアを相手にストレートで勝利し、初の金メダルを手にしました。3位決定戦ではアメリカがポーランドを破り銅メダルを獲得。決勝、3位決定戦こそストレートで決着がつきましたがファイナル6はどの試合も激闘が繰り広げられ、現在の男子バレー界は各国の力が拮抗していることが伺えました。
ファイナル6に勝ち上がってきたのは以下の5チーム。グループ1プールAからセルビア、イタリア、プールBからアメリカ、ポーランド、グループ2からフランス。ここに開催国ブラジルが加わり、3チームずつ2つのプールに分かれ総当たり戦が行われました。
(プールI:アメリカ、フランス、ブラジル/プールJ:ポーランド、セルビア、イタリア)
各プール上位2チームが勝ち進める準決勝。しかしここが予想以上に激戦、全チームが1勝1敗と勝率で並んだのです。プールJはポイント差でポーランド(4p)、セルビア(3p)が勝ち抜け、イタリア(2p)がアウト。プールA最終戦をブラジルで行ったイタリアは、そのまま現地でファイナル6に向け照準を合わせていましたが、直前にチーム内事情でザイツェフ、トラビカなど主力選手を含む4名が帰国。この異例の事態もあってか本来の力を出せず、1ポイント差で準決勝進出は叶いませんでした。
さらに接戦だったのがプールI。こちらは全て3-1で決着しておりポイントは3点で同点、セット率も同じ。よって最終的にポイント率で決着を付けることとなったのですが、これが微妙な差。0.03差でホームのブラジルがフランスに及ばず、まさかのファイナル進出を逃す事態となったのです。ブラジルがこれまでメダルを逃したのはここ10年では2012年の6位と2008年の4位。どちらもオリンピックイヤーであり、照準をそちらに合わせたとも考えられますが、今回は真っ向勝負。インターコンチネンタルラウンドから不安定だったブラジルは、スパイカー陣の決定力が上がらず5試合がフルセット。イタリアとセルビアには計3試合、勝利を譲る場面もありました。通年なら最終的には調子を合わせてくるはずがそれも間に合わず、ファイナル6では出場停止中だったレゼンデ監督の指揮に戻るも、準決勝には届きませんでした。
翌日には現地時間10:00から準決勝。第1試合はアメリカ対セルビアの戦いが行われ、セルビアが2セット先取というスロースターターにしては珍しい走り出しを見せました。が選手層の厚いアメリカはベテランミドルブロッカー、リーを投入し反撃に出ると、第3第4セットを連取し同点に。しかしこの日、アンダーソンやサンダーなどスパイカーにミスの目立ったアメリカは波に乗ることができません。第5セット終盤はセルビアのグルビッチ監督の采配が効き、最後はピンチサーバーのオコリッチのサービスエース、アタナシエビッチから交替したスタロビッチの強打で15-12とセルビアに軍配が上がりました。
第2試合はフランス対ポーランド。テンポのいいフランスが2セット連取しこのまま逃げ切るかと思いきや、インターコンチネンタルラウンドからフルセットでの戦いを強いられていきたポーランドは最後まで粘りを見せます。2セットを奪い返し、第5セットもデュースへ持ち込みますが、マッチポイント、クレクのスパイクをヌガペットがブロック。一旦ポーランドの要求でネットタッチをビデオ判定に持ち込ませますが接触は確認できず、17-15でフランスの決勝進出が確定しました。
この準決勝を含め、インターコンチネンタルラウンドからフルセットの試合を8試合こなしたセルビア、7試合こなしたポーランド、どちらも決勝、3位決定戦では主力で戦い続けた選手にミスが多く、途中交代を強いられストレートで敗れる結果になりました。対して選手層の厚いアメリカは、イランにストレートで敗れるなど途中に大きな谷はありましたが、最後まで力は健在。唯一、フランスチームにファイナル6で黒星を与えることに成功しています。フランスに至っては第2グループプールDで全勝を挙げ、しかも失ったセットは僅か5セットのみという圧倒的な試合時間の少なさで体力温存。第2グループプールEでは2チームが、プールCでは3チームが最終戦までファイナルへの希望を繋ぐ接戦を繰り返していた中、フランスは余力をもってファイナル4を勝ち上がりファイナル6へ辿りつけたことも、大きな勝因の一つだったのではないでしょうか。
思い起こせば10ヶ月前、ポーランドで行われた世界選手権では死のプールと呼ばれる激戦区で見事なスタートダッシュを見せるも、準決勝へと勝ち上がる頃には失速してしまったフランス。長い大会を通して勝ち上がる難しさを経験していただけに、今回は運が味方してくれたのかもしれません。
また、世界選手権では会場裏で気合を入れる大きな掛け声が、会場内にまで届くほどの熱い闘志を燃やしていたフランス代表選手たち。個性的な選手が揃うも、個々の闘志が相乗し強いチーム力を発揮していたように見え、そこも勝利の大きな一因と感じました。準決勝のマッチポイントがビデオ判定に持ち込まれた際、自然と輪になり肩を組む選手たちから見えた信頼関係。大会中、選手たちの提供する楽しげなインスタグラム(SNS)の画像を見てもそれは伝わってきました。
フランスをはじめイタリアやポーランド、ドイツなどの強豪チームで活躍するフランス代表選手の技術力、そして大会を戦い抜く持久力、さらにチーム力に運。今回、その全てを持ち合わせたフランスは、王者にふさわしいチームだったといえるでしょう。残念なのはその王者が今秋のワールドカップで見られないこと。しかし彼らはきっと、来年のリオデジャネイロ五輪で存在感を見せてくれるはずです。
ファイナル6はどのチームが優勝してもおかしくない接戦でした。ブラジルの時代が続いた後、ロシアへと移行するかに思えた男子バレー界ですが、ここへきて予想ができなくなってきました。ファイナル6進出チームはもちろん、アレクノ監督が戻ってきたロシア、ここから修正を測ってくるであろうイラン、アメリカを抑えW杯出場を決めたカナダなど、混戦が予想されます。そんな今秋のワールドカップ、そして来年のオリンピック、世界の男子バレーからますます目が離せなくなりそうです。
文責:宮﨑治美(Harumi Miyazaki)
写真:FIVB
宮﨑治美
長崎県生まれ。2007年ワールドカップをきっかけにバレー観戦を始め、2009年頃から徐々に海外へも観戦に行くように。競技経験はないながらも、コートの中で繰り広げられるドラマ、選手の人間性に魅了され観戦し続けている。
第1回 ロシアリーグ
http://vbw.jp/5161/
第2回 イタリア「セリエA1」
http://vbw.jp/5267/
第3回 韓国Vリーグ「オールスターゲーム」(2013)
http://vbw.jp/5414/
第4回 ヨーロッパ選手権(2013)
http://vbw.jp/5760/
第5回 ドイツリーグ
http://vbw.jp/5923/
第6回 ポーランドリーグ
http://vbw.jp/6613/
特別編 男子世界選手権 第1次ラウンドを終えて
http://vbw.jp/7825/
特別編 男子世界選手権 第2次ラウンドの概要
http://vbw.jp/7911/
特別編 男子世界選手権閉幕
http://vbw.jp/8087/
第7回 2014/15イタリア「セリエ A1」選手動向
http://vbw.jp/8261/
第8回 佳境に入るイタリア「セリエA1」2014/15
http://vbw.jp/9310/
第9回 イタリア「セリエA」2014/15ファイナルラウンド
http://vbm.link/9775/
第10回ワーリドリーグ2015現況とセルビア会場
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