2017-11-17 08:29 追加
「メインディッシュは試合、前菜、食後のデザートでも観客を楽しませる」 躍進ジェイテクトを支える早野GMの“マネジメント論”(後編)
GMに聞く
SV男子
(前編からの続き)ジェイテクトSTINGSの早野容司GMにお話を伺った。後編はカジースキ獲得秘話や、スーパーリーグについてなど。
カジースキ獲得秘話
——ジェイテクト所属の選手でなかった増成氏、アーマツ氏という外部人材を指導者として登用しました。また2015年には、世界トップレベルであるブルガリア代表エースのマテイ・カジースキの移籍加入劇には、世界中のバレーファンがビックリしたと思うのですが、どういった経緯だったのでしょうか?
早野GM:エージェントの方と色々会って、私もイタリアへ直接会いに行きました。最初は、「僕はアジアでやったことないからノー」、2回目は「両親がアジアがわからないからダメだ」と断られました。そこでエージェントや両親を口説きました。
でも3回目でも、「彼女がイタリア人だから日本には行きたくない」と断られたので、そこも口説きました。4回目で、「僕にノーという選択肢はなくなった。わかった、契約する」と遂に契約できました。
——えー!粘り腰ですね。
早野GM:普通は1回口説いてダメならダメじゃないですか。でも何がだめなのと考えます。選手(のこと)もそうですし、何が問題なの、何が障壁なの、それを取り除いたらどうなのと考え、行動します。次また出たらクリアするよという姿勢です。
——そこまでしてカジースキを獲得したかった理由はなんでしょう。
早野GM:それも人間力ですよ。あと彼はめちゃくちゃ性格が良いですよ。そして彼は世界のバレーを知っています。テクニックを選手に教えてくれる。そしてチームメイトも「マティ、マティ」と慕う。
マティはどんなにトスが悪くて、アタックをミスした時でも「ごめん」と言う。そうなると、チームの和がよくなりますよね。相乗効果です。
彼が言った中で、皆が「えっ!」て驚いたのは、「セッターのトスを信じるな。それくらい色んなことを想定してジャンプしろ。お前らのやってることは、ここにボールが来るもんだとして飛んでるだろ。それじゃダメだろ」。
出産したカジースキの彼女も徹底サポート
——なるほど。チームメイトの和も高まるし、技術面でも意識改革がされますね。そのカジースキですが、私は果たして今シーズンもプレーするのかと疑問を持っていました。昨年明けにイタリア人の彼女が妊娠したという話題が出ていたので、いくら契約が残っていても解除してイタリアのチームに戻るのではないかと予想していました。
早野GM:そこは大丈夫で、そこでも何が不安、問題になるかを考えました。カジースキの子供が生まれて、彼女や子供が日本にきて、一番問題なのは病院だとか、彼女も多分そこが一番不安なんじゃないかなと。例えば、向こう(イタリア)にいれば親が助けてくれる。向こうの母親にきてもらうとか、いろんなアイデアだしました。
あと、カジースキに「子供の夜泣きはどうするんだ」と話しました。彼は「子供は可愛いじゃないか」と言ったんですが、「いやいや、お前はプロのバレーボーラーだろ、睡眠はどうすんだ」と諭して、解決策を話し合ったりしました。パフォーマンスに影響しますので。
——そこまでやるんですね。GMとしてやるべき仕事と考えて。
早野GM:そうですね。
——GMとして他にどんな取り組みをしていますか?
早野GM:監督には「とにかく試合の責任をとってね」と。GMは、監督が「こういうことをしたい、だからこういう選手がほしい、こういう選手を口説いてくれ」と要望のあった選手をリストアップします。そこで我々が、スカウトと一緒に科学的にリサーチしていきます。会社でやる様なマトリックスをよく使います。例えば、選手の名前、出身校、両親と様々なデータをプロファイルする。それに対して、我々の望む選手、性格とか、色んなことがでてくるわけです。その中で、マルとかペケをつけていく。この選手がいいよねと皆で納得して、どういう順番で、誰が、いつ、誰に、どのようにアプローチをするって全部決めちゃうんです。
——ちなみにスカウティングは何人体制なんですか?
早野GM:4人です。リーグが始まると、関西はあなたがいってね、関東は誰と誰で分担してと指示します。中部は誰でもいけますし。そして監督とコーチは絶対生で見させます。そして、「この選手がいい」と言ったら、私たちが動いて、高校の恩師や大学の監督にお願いします。チームのビジョンを説明し、「選手で10年、社員で30年面倒みます」と話します。
——ちなみに、マトリックスの具体的な項目は?
早野GM:まぁいろいろとあります。それは(笑)。
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