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2012-11-15 13:04 追加

レゼンデが目指したバレーボールの姿 第1回

ブラジル男子代表監督、レゼンデによるバレーを考察したコラム。

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photo courtesy of FIVB

こちらは、バレーボール学会員の手川勝太朗氏によるコラムです。テーマは「レゼンデが目指したバレーボールの姿」。今回は「北京オリンピックで見えた課題」をお送りします。

○1章 北京オリンピックで見えた課題 -オポジットを機能させること-

2008年の北京オリンピック決勝。男子ブラジルナショナルチーム(以下、ブラジル)はアメリカに敗れ、準優勝に終わった。その時、レゼンデ監督が見たものは何だったのだろうか。また、その後の4年間、レゼンデが目指したバレーボールはどのようなものであったのだろうか。レゼンデの取り組みを振り返ることで、ここ数年間でバレーボールがどのように進化したのか、また、これからどのように進化していくのかを見ていく。

<2008年の北京オリンピック決勝で見えた課題>
・「オポジットの攻撃を機能させること」
・「控えのオポジットを確保すること」
・「サーブ・レシーブがアタック・ライン付近に返球された時にMBの攻撃を機能させること」

北京オリンピックの決勝戦で、アメリカのスタンリーをはじめとする強力なサーブに崩されたブラジルは、ネットから離れた位置からMBの攻撃を有効に使うことができなかった。
アメリカは第2セットの序盤までにバンチ、もしくはデディケート・シフトから「仕掛けて」オポジットのアンドレを潰すことに成功した。ブラジルのサーブ・レシーブのボールの返球位置がネットから離れた局面で、前衛MBの攻撃をほとんど使えないブラジルに対して、アメリカはブロック・システムをバンチ・リードにして、ブラジルのBick(=後衛WSのバック・アタック)をフォローした上、さらに両サイドからの攻撃を封じ込める戦術を用いた。また、ブラジルのサーブ・レシーブのボールがネット際に返球された局面では、アメリカのMBはブラジルの前衛MBのクイックにコミットしておいて、両サイドの攻撃に対してスプレッド・シフトからリード・ブロックで対応していた。
あの時、控えのオポジットがいて機能していたら…サーブ・レシーブがネットから離れた局面でMBが機能していたら…レゼンデの頭にはこうした課題が浮かんだに違いない。

まず「オポジットを機能させる」ことや「控えのオポジットを確保すること」は、結果的に、ビソット、テオ、ウォレスといったオポジットが選出され、有効に機能するようになったと言える。ロンドンオリンピックの決勝戦でも、怪我をしたビソットの代わりに出場したウォレスは大活躍をした。
しかし、ブラジルは決して「オポジットの個人技」に頼っていたわけではない。今回は「オポジットを機能させる」ことに注目して、レゼンデの取り組みを振り返る。

photo courtesy of FIVB

2009年、ブラジルはビソット(OP、212cm)やルーカス(MB、209cm)の加入によって大型化した。(北京オリンピックまでのOPのアンドレは196cm、MBのアンドレ・エレルは199cm)
レゼンデは大型のオポジットによって、ライト側の攻撃を意識させたかったはずである。しかし、ビソットには大きな課題があった。それは、ライト側からファースト・テンポの攻撃に参加するときに、いわゆる一歩助走(右利きの場合、左足を前に出しておいて、ラストの両足踏切だけ助走を行う動作)を行うことであった。ビソットの最高到達点は370cmあるものの、不十分な助走ではその高さを出すことは出来なかった。
(ちなみに、ロンドンオリンピックの決勝戦でオポジットとして活躍したロシアのムセルスキーの最高到達点は375cmであった。こちらは一歩助走ではなく、しっかりと助走をしていたため、ほぼ最高到達点の近くでヒットしており、その高さを生かす攻撃を行った。)
そこで、2010年にはMBのルーカスにCクイックを打たせたり、後衛WSにセッターのすぐライト側からのBick(A1)を打たせたりすることで、セッターのライト側からの攻撃が2つある状況を作る攻撃戦術が多く見られるようになった。
http://www.youtube.com/watch?v=gL6vwaJVC5w
リード・ブロックをするブロッカーの目線で考えると、セッターよりライト側の攻撃の選択肢が1つの場合、ライト側にセット・アップさせるのを確認すると同時に全力でブロックを跳ぶことができる。しかし、ライト側の攻撃の選択肢が2つある場合、ブロッカーは、ライト側にセット・アップされるのを確認したあと、さらに2人のスパイカーのどちらにセット・アップされたのかを判断する必要がある。そのため、ブロックに跳ぶのが遅れてしまう。こうした状況でビソットにスパイクを打たせることで、オポジットを有効に機能させていた。
もちろん、こうした攻撃戦術ははじめからレゼンデの頭の中にあったものではないだろう。2009年にはルーカスは個人技としてCクイックを打っていたが、その中で、こうした攻撃戦術の有効性に気づいたのであろう。
(2011年からは、こうした戦術(特にA1Bick)があまり見られなくなった。これは、しっかりと助走を取るテオやウォレスが先発する機会が増えたこと、ビソットも2歩助走ながら助走を取ることが出来るようになったことが関係しているはずである。また、世界的にブロック戦術としてシンクロ攻撃の可能性が高い局面でコミットする場面が増えたことも関係している。)

レゼンデは、個人技ではなく、組織として、システムとして課題を克服していることが分かる。では、北京オリンピックで見られたもう一つの課題である「サーブ・レシーブがアタック・ライン付近に返球された時にMBの攻撃を機能させること」に対してレゼンデはどのような方法で解決したのであろうか。次回はこのあたりをテーマにする。

文責:手川勝太朗

 
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