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2013-04-17 00:23 追加

Evidence-based Volleyball事始め

データ分析から見えてくるもの-Evidence-based Volleyball事始めの第1回。

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はじめに

ある日体調が悪いので病院に行って診察を受けたときの話です。

 

患者「ちょっと体調が優れないのですが……。」

医師「ああ、ネギを首に巻いて寝ていれば大丈夫ですよ」

患者「いや、そういう民間療法的なものではなくて……。」

医師「それでは、このチョコレートはいかがです?おいしいですし、栄養もありますよ。」

患者「あの、薬をいただきたいのですが……。」

医師「そう、ではこの錠剤をどうぞ。」

患者「この薬を飲めば大丈夫なのでしょうか?」

医師「医者の勧める薬が信用できないのですか?」

 

もし、あなたがこの患者だったらどれを処方してもらいますか?

わけのわからないやり取りから始まりましたが、はじめまして。今回より「Evidence-based Volleyball事始め」ということで、この場をお借りしていろいろと書いていきたいと思います。

 

Evidence-based Volleyballとは

このEvidence-based Volleyballですが、実は造語で元々はEvidence-based Medicineをもじったものです。Evidence-based Medicineを日本語にすれば、「根拠に基づいた医療」といったところでしょうか。簡単にまとめると、提供される医療サービスは、現時点で最も信頼できる情報(=エビデンス)を基にして選択されるべき、というものです。

「エビデンス」とは、理論的に導かれる原理原則や、これまでずっとこうしてきたという経験則ではなく、設定した目的を達成できることが統計学的に証明された、という意味です。したがって、たとえ権威のある大学病院の教授が勧める治療法であっても、その効果が統計学的に証明されていなければ、それはエビデンスとはいえません。一方、ネギを巻くような民間療法でも、効果が統計学的に証明されれば、それはエビデンスといえます(なかなかそんなことはないでしょうが)。

冒頭の例のように、体調が悪くて病院に行く場合、治療の効果をデータ化して検証することは比較的簡単ですが、検診で血圧が高いと言われて病院に行く場合はどうでしょう。治療すれば血圧は下がるでしょうが、数値が下がることが治療の目的ではないはずです。

そもそも高血圧といった、いわゆる生活習慣病を治療する目的は、患者さんが5年後10年後に、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気を発症するのを未然に防ぐことにあります。ですから、血圧を下げることによって、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクを低下させることがデータを用いて証明されて初めて、その治療法の効果を検証できたことになります。これこそが信頼できる情報、すなわちエビデンスです。

データを集めて、それを検証するのは楽な作業ではありませんが、なぜこのような方法が生まれたかというと、人の命という何よりも重いものと向き合う現場で、より確実な方法が求められたからです。

もちろん、効果が証明された治療法が絶対ではありません。エビデンスがあるからという理由だけで、治療法を盲目的に選択するなら、医師の知識や経験は一切要求されないことになります。エビデンスを踏まえた上で、目の前の患者さんにとって何が最善なのかを判断するからこそ、医師としての知識や経験さらには、1人の人間として患者さんと対峙する能力なども問われるわけで、それこそがEvidence-based Medicineです。

一方、エビデンスそのものも、治療法の進歩にともない内容は常に更新されていくのですが、その都度データによる根拠が求められます。

さて、いいかげんにバレーボールの話をしましょう。ということで、この医療サービスをバレーボールに置き換えたものが、Evidence-based Volleyballになります。バレーボールで勝てなくても死んでしまう人はいないとは思いますが、「チームを強くしたい、試合に勝ちたい」と強く思っている人は少なくないはずです。

では、「試合に勝つこと」を目的にするなら、どうすれば良いのでしょうか。先ほどの患者と医師のやり取りを思い出してください。あなたは、ネギを首に巻きますか? それとも医師の勧めるままに薬を飲みますか?

バレーボールにおいても、プレー経験のない素人の意見だからダメ、実績のある元選手や指導者が勧めているのだから良いという、根拠のあいまいな考え方はやめて、その効果をデータで検証し、勝率を高めることが統計学的に確認されたものを導入すべきではないか? というのがEvidence-based Volleyballです。

 

 Evidence-based Volleyballが教えてくれること

こういう話をすると、「お前は先人の積み上げてきたものを否定するのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、あまり気にする必要は無いと思います。先人の積み上げたノウハウが何であれ、重要なものであればデータを集めて分析すれば、それが証明されるだけです。ただし、一般的には重要なことと考えられていても、実際にデータを取って分析してみれば、そうはならないケースもあります。

例として、ここではサーブミスとサービスエースのデータを紹介したいと思います。一般にサーブミスは良くないこととされていますが、データを以下の表1-1と表1-2に示します。

 

表1_1

表1_2

これは、第6回Vリーグ(1999/2000シーズン)からV・プレミアリーグ2011/12シーズンまでのレギュラーラウンドの試合結果より、各チームのサーブミス率とサービスエース率それぞれの、勝敗との関係を示したものです。男女別に勝率の推移をグラフ化したものを以下の図1-1と図1-2に示します。

 

図1-1図1-2

サーブミス率と勝敗の関係を統計解析すると、男女ともにサーブミス率が高くなるほど勝率は低下します。反対にサービスエース率が高くなるほど勝率は高くなります。したがって、サーブミスは極力少ないほうが望ましいのですが、図を見てもらうとわかるように、サービスエース率は単純に増加すれば勝率は高くなるのに対し、サーブミス率はある程度高くならないと勝率は低下しません。つまり、確かにサーブミスは良くは無いが、かなり大量にミスをしない限りは勝敗への影響は弱いと見てよいということになります。詳しい分析結果は省きましたが、これがデータを用いて効果を検証するということになります。

ついでに、もう少しデータを紹介したいと思います。次は、サーブミス率とサービスエース率の関係を以下の図2-1と図2-2に示します。引き続きVリーグのデータを用いています。

 

図2-1図2-2

分析の結果は、男女ともにサーブミスとサービスエースとの間には関連がないことを示しています。これは試合結果ごとのデータなのですが、これを各チームのシーズン通算成績で同様の分析をすると、以下の図3-1と図3-2のようになります。

 

図3-1図3-2

分析の結果は、男女ともにサービスエースが多いチームほど、サーブミスも多くなることを示しています。これは、サーブで攻めて得点するには、ある程度ミスも生まれやすくなることを意味していると考えられます。サーブミスはサービスエースの必要経費のようなもの、といったところです。

したがって、サーブミスも、大量にならなければ勝敗への影響は弱いのだから、多少は必要経費と割り切って、ミスを気にせずサービスエースを狙うべきだ、というのがデータの示すところとなります。

「ミスは良くない」と単純に考えるよりは、勝敗との関係がより具体的に見えてくると思います。これが、Evidence-based Volleyballが教えてくれることです。

 

テーマについて

以上、Evidence-based Volleyballとは何か、ということについて書いてきましたが、要するに、何事もデータを用いてきちんと検証しておこうということになります。面倒ですが、結局はそれが一番確実な方法だからです。

と、看板を大きく掲げたのですが、次回から何をやっていこうかと考えたとき、あれもこれもデータで検証していくには、人手と時間とスキルが足りませんので、私としては「ディフェンス」にテーマを決めて分析をして行こうかと思います。

 

具体的には「ミーハー排球道場 第3回ブロック【その1】」で紹介されていた、

アタック決定されない率 = ( 相手の総アタック数 - 相手の決定数 ) / 相手の総アタック数

に注目してみようと思います。この指標がディフェンスの全てを明らかにしてくれるとは思えませんが、指標の持つ意味と、この指標では表すことのできない限界を探ることで、バレーボールにおけるディフェンスを評価するには何が必要で、現状として何が足りないのかが見えてくるのではないかと思います。

革新的なディフェンスの評価方法をいきなり示すことができれば格好が良いのですが、なかなかそう上手くもいきません。現状から一段ずつ積み上げていく地味な作業になるとは思いますが、よろしくお付き合いいただければと思います。

 

引用データ

・ Vリーグオフィシャルサイト http://www.vleague.or.jp

文責:佐藤文彦
「バレーボールのデータを分析するブログ」http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ の管理人
バレーボール以外にも、野球のデータ分析を行う合同会社DELTA にアナリストとして参加し、「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート」や、「セイバーメトリクス・マガジン」に寄稿している。
協力:渡辺寿規
 
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