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コラム

2013-05-10 23:41 追加

2012/2013V・チャレンジ女子総括

女子チャレンジリーグ今年度の総括

V2/V3 女子

V・チャレンジリーグ女子2012/13シーズンは、去る3月17日の最終戦をもって全日程を終了しました。チャレンジマッチ出場権のかかる2位以内は、予想を覆すことなく上尾メディックスが2年ぶりの優勝、日立リヴァーレが準優勝という結果でした。

もともとプレミアチームだった選手層の厚い日立と、プレミアチームのパイオニア・NEC・廃部になった武富士から監督はじめ選手が流入した上に、年々着実に大学生を中心として戦力補強に成功した上尾が、今シーズンもやはり一歩も二歩も、他のチームの上を行く状況はゆるぎませんでした。しかし内容を振り返ると、それとは別に、実に様々なことが起こったシーズンでした。

○開幕前のできごと

去年のシーズン終了直後、チャレンジリーグ女子チームの廃部が相次いで発表されました。三洋電機レッドソア、健祥会レッドハーツ、Befcoビービースターズの3チームです。どれも親会社の経営難に因るところと報道されました。一方、Vリーグ準加盟のJAぎふ(愛称は後日、リオレーナに決定)が、全国6人制バレーボールリーグ総合男女優勝大会での成績によりVリーグ加盟を正式に認められ、チャレンジリーグに参戦を果たすという明るいニュースもありました。よって2012/13シーズンは、前年の12チームから10チームに削減されたかたちでリーグをむかえることとなり、リーグ戦の日程は例年より発表が遅れて、2leg制各チーム全18試合、前年より4試合少ない日程の組み合わせとなりました。

発表が遅れたのは、もしかしたら3leg制全27試合という案もあったのかなと、穿った見方をしたのを思い出します。ですが、基本的に仕事を持ちながらのアマチュアスポーツです。チーム予算もハード面やソフト面のサポートもまちまちでしょう。プレミアを目標に資金でもそれと遜色ないチームと、平日昼間は普通に仕事をして夜間の練習も週の半分あればいい方というチームが、共存しているのがチャレンジリーグです。インターバルのある日程に行き着いたのは、そのせいかと考えます。

三洋電機の公式サイトでは、選手それぞれの受け入れ先を探しているとの告知がありました。今ではすっかり岡山の欠かせない戦力となっている佐々木姉妹など、実際に受け入れ先が見つかった選手は恐らく半分にも満たないかもしれませんが、別のチームで活躍するそういった選手たちの元気な姿は、今シーズンわずかですが見ることができました。

静岡浜松で元Befcoの監督のもと、クラブチームの「ブレス浜松」が立ち上げられました。一方、香川高松では元健祥会の監督のもと、クラブチームの「せとうち PRIOR」が立ち上げられました。どちらも、チャレンジ昇格を目標に掲げたチームだそうです。JAぎふやGSS、柏のあとを追いかけるチームが誕生しました。

○新勢力の台頭

今シーズン監督の交代したチームは、上尾のコーチだった藤本監督の就任した柏エンゼルクロス、諸隈新監督を迎えた仙台ベルフィーユの2チームでした。そのなかでも仙台は、地元密着というテーマを素直に表現して着々とアピールに成功していく様が見て取れました。スポンサーのゼビオの新アリーナ開設に伴うNECとのエキジビションマッチ、地元のスポーツクラブや小中学校の生徒を対象としたバレーボール教室、ゼビオの協力を請けてのチームグッズ販売、街に配布するポスターやチラシなど、大きいものから小さいものまで多岐にわたります。これは実際、ホームゲームの集客数に表れているように、バレーに興味のなかった人たちも会場に足を運んでくれた印象があります。伝聞で知る限りでも今シーズンの仙台の客層はバレー会場の客層とは違ったようで、私が実際に観戦した熊谷や江戸川の大会での仙台サポーターを目にしても、去年とは違うなと感じました。

新参入のJAぎふは、国体予選でトヨタ車体を破り台風の目となりました。はじめてのリーグで7位という結果にも、選手たちは決して満足していないようです。口にはしませんが、更なる昇格を胸に誓っているのが伝わってきます。

母体は農協とはいいながら、クラブチーム色の強いチームです。むしろ農協が、保険事業や旅行業務など事業の幅を広げる中に、スポーツ事業を組み入れて採算のとれる事業へと発展させることを目標にしているのでしょうか。現在オフィシャルサイトの更新は、選手が行っているようです。そしてその本人が、やはり地元からチームを盛り立てたいと言っています。仙台がとても参考になるし刺激になるとも。どれだけスポンサーを獲得できるか、サポーターとともにこれからの営業活動も気になるチームです。

仙台とJAぎふの2チームは、こうした運営面はもちろんのこと、コートで繰り広げるバレーの内容でも、それぞれ特徴があって楽しませてくれるチームでした。

仙台は諸隈監督も公言しているように、身長だけ取り上げると188cm、184cm、183cmを前衛に揃えることができる、プレミアでもそうない平均身長の高い布陣の敷けるチームです。普通に考えればブロックが売りになるのでしょうが、肝はそこではないようで、試合ごとまたはセットごとに布陣を代えてきます。ときに守備的だったり攻撃的だったり。他と比べて身長のある選手を揃えるチームでありながら、選手のポジションを固定しません。このことからも、身長の高さはひとつのオプションに過ぎないと考えているのだと受け取れました。とくに178cmの渡邉愛以選手を、WS・OP・MBと縦横に起用しており、あとはセッターもやらせればいいのでは? と思いました。

それは冗談としても、OPに188cmの王亜辰選手を固定することなく、WSに入れたりもしくは控えに回したりと、王選手に頼ることはなく、高さは素材の高さではなく、武器としての高さを求めているのがうかがえます。別の側面から見ると、チームに活力を入れるというか、すべての選手にチャンスを与えチームの動脈硬化を防ごうとしていたのかもしれません。事実、高身長選手を揃えて臨んだ試合は、わりとあっさり落としていました。だからこそ、Befcoから移籍した168cmの櫻井樹里選手が攻守に仕事をしているのが目立ってみえました。控えの選手が出て来ても、タイプは違えどカンフルになって、チームがまたさらに活性化される。強いチームの条件のひとつが、仙台の今シーズンの戦い方には見られた気がします。キャプテンの中野清香選手も本来は大黒柱であるべき選手ですが、控えでスタートすることが多く、それがかえって対戦相手には脅威だったかもしれません。

一方JAぎふは、OPの起用法が独特でした。多くの試合でOPは中村早紀子選手でしたが、楽しいのはこの選手がレセプションフォーメーションで真ん中に入った時です。レセプションを受けると、彼女はそのまままっすぐスロット1へ突っ込んで行く。こういう選手は他のチームではあまり見ません。前衛でも後衛でもいつでも攻撃を伺っていました。普通は前衛ライトに開くはずのOPの選手が、レセプションを真ん中で受けて、その位置からネット際へまっすぐに飛び込んでいって、相手のMB1枚と勝負する。このファーストテンポを何度か見ました。チャレンジ女子でもシンクロ攻撃が一般化しそうだと言ったら言い過ぎでしょうか。その可能性さえ感じるJAぎふは、今後に期待を抱かせてくれました。

最終順位6位と7位だったチームは、そんな挑戦を抱えてシーズンを終えています。

○混沌とした中位チーム

そんな2チームの躍進があってか、リーグ3位以下は混戦模様でした。昨シーズン上尾に勝利し3位に食い込んだKUROBEは、スタメンだったベテランの多くがチームを去り、若返りを余儀なくされただけでなく、選手総数でも他チームより手薄のままのシーズンとなりました。去ったベテランは皆プレミア経験者たちでしたが、そのエッセンスは残った者たちに受け継がれたでしょうか。

その答えは1leg結城大会での大野石油相手のフルセットマッチや、負けはしたもののホームゲーム最終週の上尾との試合で、確認できたように思います。やはりこのチームの良さは活きがいいこと。去年まで控えだった吉川ひかる選手が何度かスタメンで起用され、切れのよいアタックを放っていました。WSがブロッカーを抜く姿が気持ちいい。抜くと言いましたが、色摩知巳選手は上尾のブロッカー陣の上を抜いていました。とはいえ、苦戦を強いられたKUROBEでしたので、混戦を極めた3位以下で2つ順位を落としてのフィニッシュとなりました。

混戦を着実に抜け出したのは、昨シーズン(2011/2012)、その前年度(2010/2011)の9位から4位に躍進した大野石油でした。今シーズンは3位につけています。こちらも少ないメンバーだったものの、日本体育大学からの内定選手を昨シーズン後半から正セッターに固定して臨んで来ました。遡れば、2年前のシーズンから大きくメンバーが入れ替わったのはこのチームだったかもしれません。早くから手を打って、たとえそのシーズンが9位に沈もうとも、チーム構成の見直しを怠らなかった結果が、昨シーズンの4位に結実したのかもしれません。補強が効率的になされた印象があります。その新旧交代の流れで、キャプテンがまだ2年目の田中選手に回って来ました。

2年目とはいっても鹿屋体育大学卒ですから、キャリアはあります。この辺りがチャレンジリーグの面白いところです。決して長身ではありませんが、ベストスコアラーとして全カレ優勝に導いたエースが、わずか2年でステージを変えてまたチームを率いる。チームが変わる。大野石油は一見地味なチームに見えます。実際地味なんですが、そこがいい。スパイクカバー(ブロックフォロー)やリバウンド処理、ネット際の意識がとても丁寧に見えます。肝が座っていると言いますか、慌てない。慌てないから、自陣に呼んだトランジションを何回も繰り返せる。地味だがじわじわ効いてくる。派手ではないがその少ないチャンスをものにするアタッカーが田中選手をはじめ、吉安、矢山、平川、大楠の各選手と台頭して来ています。まさにこれからが、大野石油の真骨頂と期待させてくれます。

今シーズン一番の注目チームは、実はPFUだったかもしれません。
シーズン開幕前に颯爽と駆け抜けたのは、PFUが外国人選手をはじめて登録するというニュースでした。PFUがプレミア昇格に本腰を入れ始めた、そう受けとれるニュースでした。外国人を入れれば即ち結果がともなうとか、そういった安直なことではなく、現状のプレミアチームの選手構成を視野に入れた採用に思えました。だれもが上位2チームは安泰と考える現在のチャレンジリーグ女子において、プロ契約(おそらく)で外国人選手を採るということは、それを意味していると考えられました。

そのロマーニャ選手(コロンビア)は当初オポジットの選手ということで、昨年の得点王の川上選手とダブるポジションであるため、PFUは一体何を考えているのかとファンは色めきたったことでしょう。ですがPFUは3戦目からOPの川上選手はそのまま、ロマーニャ選手をMBに起用することで応えます。ミドルブロッカーが出来る選手だった、ということです。レゼンデバレーの取材書(※1)を読むと、ブラジルと日本のティーンズの育成概念の違いが伺えます。コロンビアもその例に漏れず、ジュニアユースの世代のうちはどのポジションも経験するのであろうかと想像されました。

楽しませてくれたのは彼女がサーブのとき。後衛MBがリベロに交代できないローテで、トランジションで後衛MBであるロマーニャ選手がディグからバックアタックに入る。理論的には5枚攻撃が可能になる。PFUの本気度は伝わってきました。そういう愉しみが持てるチームになりました。その先を寺廻監督はどうオーガナイズするのでしょうか。来年の契約はどうなっているのでしょうか。

結果的には不本意なリーグ戦になってしまいましたが、また一化けも二化けもして来シーズン帰ってくるのでしょうか。その前に、アジアクラブ選手権での活躍に期待ですね。
(その2へ続く)

文責:益木 朋

(※1)『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』米虫紀子著・東邦出版

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