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コラム

2013-06-28 20:17 追加

ミーハー排球道場 第4回ブロック 【その2】

ミーハーバレーファンの「こんなことがわからない!」にお答えするコーナー。今回は「ブロック」の2回目。

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国際大会をテレビで見てバレーファンになった方や、バレーマンガを読んでバレーに興味を持った方の「こんなことがわからない!」にお答えするコーナーです。
バレーボールのルールや戦術について書かれた『バレーペディア』(日本バレー ボール学会編・日本文化出版)の編集・執筆者の一人である渡辺寿規先生がお答えします。渡辺先生はツイッターの#vabotterでつぶやいています。第4回は「ブロック【その2】」です。

 

「少年ジャンプで連載中のバレー漫画『ハイキュー!!』に、【リードブロック】【コミットブロック】【デディケートシフト】などのブロック用語が出てきましたが、いったいどのようなブロックなのでしょうか? また、それぞれのメリット・デメリットなどを教えて下さい。」

 

◎ まずは、前回の復習から

守備(ディフェンス)の最前線であるブロックには、サッカー・バスケット・ハンドボールなどの球技と同様に、【マン・ツー・マン】と【ゾーン】の、2つの対照的な戦術が存在します。バック・アタックを含め、4人以上のアタッカーが攻撃に参加するのがあたりまえとなった現在のトップ・レベルのバレーボールにおいては、【マン・ツー・マン】はノー・マークとなるアタッカーを自動的に作ってしまう致命的な弱点があるため、【ゾーン】が基本戦術となっていましたね。

【ゾーン】戦術を機能させるうえで画期的な進化をもたらしたのは、アタッカーではなくセットされたボールに反応する【リード・ブロック】の発想でした。相手のアタッカーに「1対1」で対抗できない代わりに、①「2枚ないしは3枚ブロックを揃えて組織的に対抗すること」、ならびに、②「ブロックとディグの連係を図って【トータル・ディフェンス】を構築すること」が可能であり、バレーボールにおけるディフェンスが飛躍的に強化される結果に繋がりました。

①及び②を達成するには、守るべき9つのスロット(※1)を3人のブロッカーがどのように分担するか? がカギとなります。具体的には、3人のブロッカーの「配置」すなわち「ブロック陣形(=シフト)」が重要であり、【スプレッド・シフト】【バンチ・シフト】【デディケート・シフト】などに分類されます。

 

◎ 【スプレッド・シフト】とは?

【スプレッド・シフト】とは、両サイドのブロッカーがアンテナ寄りに「広がった(= “spread”) 」ブロック陣形を言います(図1)。守るべき9つのスロットを3人のブロッカーで均等に分担する形となるため、無防備になるスロット(ゾーン)は存在しない点がメリットとなります。

※図・表はクリックすると拡大して表示されます。

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では、【ゾーン】戦術を機能させるうえで重要な、①「2枚ないしは3枚ブロックを揃えて組織的に対抗する」という観点からはどうでしょうか? … ブロッカー同士の間隔が広いため、各ブロッカーが担当するスロット幅の重なりが少なくなり(図2)、結果的に「2枚ないしは3枚ブロックを揃えること」自体が困難となります。

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一方、②「ブロックとディグの連係を図って【トータル・ディフェンス】を構築する」点についてはどうでしょうか? … ここで『Coaching & Playing Volleyball(CPV)』2012年1/2月号・第78号((有)バレーボール・アンリミテッド )の8〜11ページに掲載された、興味深いデータをご紹介したいと思います(*なお、この引用は(有)バレーボール・アンリミテッドの許可を得て掲載しています)。

 

◎【トータル・ディフェンス】と相性が悪い【スプレッド・シフト】

平成23年度関東大学一部秋季リーグ戦全66試合を基に、ブロック枚数とスパイクの効果について解析したところ、表−1のような結果が得られた(※2)とのことです(以下表1及び写真1~6をCPV第78号より引用)。

三角ゾーンとスパイク効果率

ここで登場する「0.5枚ブロック」「1.5枚ブロック」「2.5枚ブロック」とは、写真1〜6のような状態で定義されています。「1枚ブロック」「2枚ブロック」「3枚ブロック」の状態が「完成ブロック」、「0.5枚ブロック」「1.5枚ブロック」「2.5枚ブロック」の状態が「不完全ブロック」として、ここでは扱われています。

三角ゾーン

表−1をご覧頂くと、「完成ブロック」に比して「不完全ブロック」では、(相手の)スパイク効果率が随分高くなる傾向にあることがおわかり頂けるでしょう。特に、「1枚ブロック」よりも「1.5枚ブロック」の方が(相手の)スパイク効果率が高い傾向にあるという結果は、意外に思われる方が多いかもしれません。

この結果は、どのように解釈すればよいのでしょうか? …「1.5枚ブロックと三角ゾーン」と書かれた写真5をご覧下さい。ここで想定されている「三角ゾーン」とは、両サイドのブロッカー(この写真ではライト・ブロッカー)が相手のアタッカーに正対して、余裕を持ってブロックに跳んでいるのに対して、センター・ブロッカーがライト・ブロッカーと並んでブロックに跳ぶことができず、いわゆるブロックが割れた(=ブロッカー同士の腕の間が空いてしまっている)状態のことです。【リード・ブロック】で反応する場合、セット・アップを確認するまでブロッカーは動き出せないため、「アタッカーの踏み切り動作と同じタイミングでブロックに跳ぶ」ことは難しく、このようにブロックが割れてしまうケースがしばしば生じます。「ブロックが割れると(相手の)スパイク効果率が極端に上昇する」と言えば、直感的にも理解しやすいのではないでしょうか?

【スプレッド・シフト】は、各ブロッカー同士の間隔が広いため、ブロックが割れやすいブロック陣形です。ブロックがたとえ割れても、それをディグでカバーできれば問題ないのですが、実際には相手のスパイク効果率が極端に上昇するわけですから、どうやらそれは難しいということがわかります。つまり【スプレッド・シフト】は、相手のスパイクに対してブロックとディグの両面で組織的に対抗する【トータル・ディフェンス】を構築することが、極めて困難なブロック陣形であることを、このデータは雄弁に物語っているのです。

この結果から「センター・ブロッカーが無理してサイドまで追いかけない方が、三角ゾーンが発生せず、相手にスパイクを決められずに済む」と結論づけられているのですが、肝心のブロック陣形に対する言及がありません。日本のバレー界では、大学男子カテゴリに限らず、ブロッカー陣が【スプレッド・シフト】で構えている(ように見える)シーンが目立つこともあって、暗黙のうちに【スプレッド・シフト】が大前提になっているようです。

【スプレッド・シフト】に見えると言っても、当の選手自身は〝ただ何となくスプレッドっぽく〟構えているだけ、というケースが実際には多く、これは前回解説したとおり、日本のバレー界ではプレー経験者や指導者の間でも、ブロックに関する戦術理解が浸透していないために生じる現象です。

「相手にスパイクを決めさせないために、どのような【ゾーン】ブロック戦術を採れば効果的か?」という風に意識すれば、2枚ないしは3枚ブロックを揃えること自体が難しく、ブロックが割れた場合にディグではカバーしきれない【スプレッド・シフト】は避けて、別のブロック陣形を採用した方がよいだろうという結論が、浮かび上がってくるのではないでしょうか?

 

◎【バンチ・シフト】とは?

【バンチ・シフト】とは、3人のブロッカーがコート中央(センター)に集まるブロック陣形を言います(図3)。「バンチ(bunch)」は「束」の意味で、3人のブロッカーが「束になって」集まっているように見えるため、このような名前で呼ばれます。

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3人のブロッカーがコート中央に集まって構えるというのは、選手自身が相当に意識しないとできません。ですから、【スプレッド・シフト】とは違って〝ただ何となくバンチっぽく〟構えるというケースは、通常はあり得ません。

では、この【バンチ・シフト】には、どのような戦術意図があるのでしょうか? …【ゾーン】戦術の下で【バンチ・シフト】を採用する場合、図4を見て頂くと、各ブロッカーが担当するスロット幅が、センター付近の広い範囲で重なることがわかります。つまり、センター付近のスロットからの相手の攻撃に対して高い確率で、①「2枚ないしは3枚ブロックを揃えて組織的に対抗すること」が可能になります。

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一方、センター付近に3人のブロッカーが集まるため、両サイドのアンテナ付近、スロット5やスロットCへのマークが甘くなります。では【バンチ・シフト】の場合、スロット5やスロットCから攻撃されるとお手上げなのでしょうか?

ここで【トータル・ディフェンス】の概念を、もう一度思い起こしましょう。相手のスパイクに対して、ブロックとディグを連係させて組織的に対抗するのが【トータル・ディフェンス】でしたね。【バンチ・シフト】の場合、スロット5やスロットCへのマークが甘くなる代わりに、ブロッカー同士の間隔が狭いため、ブロックが割れることは滅多にありません。スロット5やスロットCから攻撃を仕掛ける相手のアタッカーは、クロス方向で揃うブロック陣を避けるようにして、ストレート方向へスパイクを打ち込んでくる可能性が高くなるため、その状況をあらかじめ想定して、ディガーをサイド・ライン上に配置することが可能です(図5)。

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この状況で、サイド・ライン上に配置されたディガーは、例えばスロット5から攻撃される場面では図5のように、身体の右側に来る強打には反応する必要がなく、ブロックに当たって緩く弾んだボールにだけ、反応すればよいのがおわかり頂けるでしょう。実は、この戦術のメリットは、相手のスパイクがサイド・ラインを割る、あるいはアンテナに当たるなどして、スパイク・ミスになる可能性が高い点にあります。

攻撃側からすれば、スパイク・ミスを恐れてアタッカーにプレッシャーがかかるだけでなく、セット(トス)が短くなってスロット5ないしはスロットCまでボールが届かない場合には、2枚ないしは3枚ブロックが揃うクロス方向にしかスパイクが打てなくなる可能性が高いため、ボールをセットする選手にもプレッシャーがかかるのです。

【バンチ・シフト】は『バレーペディア改訂版 Ver. 1.2』(日本文化出版)にも書かれているように、「コート中央(センター)付近からの攻撃に対して効果的なブロック陣形である」と、一般的には理解されているように思います。しかし上述のとおり、【ゾーン】戦術の下【バンチ・シフト】を採用する意義としては、一見すると弱点に思える両サイドのアンテナ付近から相手が攻撃を仕掛けるように仕向けておいて、それに対して万全の【トータル・ディフェンス】を敷いて待ち構えることによって、攻撃側を精神的に追い込むことができる側面が大きいということを、是非覚えておいて下さい。

 

◎トップ・レベルにおけるブロック戦術の変遷からみた【バンチ・シフト】の位置づけ

このように【バンチ・シフト】は、ブロックとディグの連係を図って、組織的に相手のスパイクに対抗する【トータル・ディフェンス】を構築しやすいというメリットがあり、それゆえ【バンチ・シフト】は、【ゾーン】戦術における最も標準的なブロック陣形として、もてはやされることとなりました。

1980年代に【リード・ブロック】が誕生して以降、上述のブロック・システム(=【バンチ・リード】ブロック・システム(※3))を世界に先駆けて成熟させ、2000年代前半まで黄金時代を築いたのがイタリア男子ナショナル・チームであると言われています。

この動画は、2004年のアテネ・オリンピック男子決勝戦のブラジル対イタリアですが、この直後に【バンチ・リード】ブロック・システムを崩壊させる画期的なアタック戦術を確立し、黄金時代を迎えることになるブラジルを相手にしても、このオリンピックの時点ではイタリアは【バンチ・シフト】を一切崩しておらず、ブラジルのアタッカー陣にプレッシャーをかけることに十分成功していることが伺える動画です(ブラジルのスパイク・ミスが目立つのが、おわかり頂けるかと思います)。

 

◎いよいよ本題の、【デディケート・シフト】に入ります!

これでようやく、ご質問の【デディケート・シフト】に到達できました。が … 随分長くなってしまいましたので、続きは次回(その3)にて、じっくり解説したいと思います。

文責:渡辺寿規

 

(※1)ネットに平行な水平座標軸を設定して1m刻みにコートを9分割し、数字や記号を用いて呼称するコート上の空間位置。主として、アタッカーがボール・ヒットする位置を呼称するのに用いられる。(『バレーペディア改訂版 Ver. 1.2』(日本文化出版)より)

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(※2)蔦宗浩二(順天堂大学)「3枚ブロックと三角ゾーンの秘 〜スパイクから見たブロック枚数と成功の関係〜」

(※3)【ゾーン】ブロック戦術の下で【バンチ・シフト】を基本陣形として、【リード・ブロック】でブロックに跳ぶシステムのことを、【バンチ・リード】ブロック・システムと呼ぶ。日本においては「チェーン・ブロック」なるシステムが存在し、時折【バンチ・リード】と同義であるかのような誤解がみられるが、「チェーン・ブロック」と【バンチ・リード】とは、全くの別物である。

 
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