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ゲームレポート

2014-01-13 12:46 追加

春高男子決勝と東京五輪へ向けての視点 

2014春高男子決勝ゲームレポートと東京五輪への提言

高校バレー 男子

鹿児島商業-星城 0(21-25 20-25 20-25)3

ネット際にAパスを入れて攻撃を組み立てたい鹿児島商業。生命線は左利きMB(No.3黒瀬継太)のCクイック。セット・アップ前に踏み切るマイナス・テンポであるものの、見慣れない左利きの攻撃であり、相手が対応するまえに勝負を決めてしまいたい。 しかし、対する星城高校はビッグ・サーバーが多く、常にAパスを狙うことはリスクを伴う。実際に、返球が大きくなりすぎてダイレクトで押さえ込まれる場面が見られた。 試合は、終始、力強いビッグ・サーブ(ブレイク率を上げるために打つ強いサーブ)や、高い打点での力強いスパイクが目立った星城高校の勝利となった。

一般的な解説では、コンビバレーを展開するためにサーブレシーブが重要であると言われている。それは本当に事実なのだろうか。 一度、高校カテゴリから離れ、トップ・カテゴリである各国のナショナルチームの戦術の変遷から、どのような攻撃戦術、ディフェンス戦術が有効なのか。また、これからの日本のナショナルチームに関わるであろう春高出場選手のあり方についても考える。今回は、サーブとスパイクという「見えやすい」プレイに着目する。 (トップ・カテゴリで行われているプレイ、戦術は高度なものではなく、誰でもできる合理的なものが自然淘汰されて残ったものであるという認識が必要である)。

まず、サーブであるがいわゆるビッグ・サーブの重要性が高まっている。 http://vbw.jp/5179/ こちらの記事で書かれているように、ブレイクのチャンスはサーブから始まる。 石川、武智、山崎ら複数名のスパイク・サーブを用いるビッグ・サーバーがいた星城高校。一方の鹿児島商業はジャンプ・フローターを基本としたサーブ戦術を採用していた。 一般的に、ジャンプ・フローターを主に用いてブレイクをしていくためには、強固なトランジション戦術が必要となる。その核となるのはブロック戦術である。 星城高校の攻撃をブロックで押さえ込めていた訳ではない鹿児島商業は、ビッグ・サーブというオプションが必要であったと言える。

次に、スパイクであるがここ数年、いわゆるファースト・テンポの攻撃をMBだけではなく、サイドからの攻撃やバック・アタックでも行うことが標準的な攻撃戦術となっている。 ここ数年のテンポの議論の中で、どのテンポのスパイクの局面の中においても、助走が重要であること、打点の高さが重要であることが再認識されている。 結果的に、どちらのチームも力強い助走をして、高い打点から打ったスパイクがハイセットであってもテンポに関わらず有効であったことは意外な事実かもしれない。 また、低いセットを打ったスパイクは、その多くがブロックにワンタッチを取られていてあまり有効ではなかったことも意外な事実かもしれない。 TV解説では「時間差」と言われていた攻撃が、実は「ファースト・テンポの攻撃」であり、それが相手ブロックに対して有効な「早くて高い攻撃」であった局面が両チームともにたくさん見られた。 このテンポの解説については別のコラム(レゼンデバレー)で述べることにする。

今回は、比較的「見えやすい」プレイであるサーブとスパイクに着目したが、どちらもトップ・カテゴリの流れから見ると「サーブはビッグ・サーバーを増やす」「スパイカーは助走を確保し、なるべく高い打点で行う」ことが重要であると言える。では、実際に高校カテゴリではどうだろうか。 「サーブ・ミスはもったいない」ためにサーブ・ミスのリスクが高くなるビッグ・サーバーを増やす選択をしないチームが多い。 実際には、多くの試合が3セットマッチであるため、統計的に分散の大きくなるビッグ・サーブよりも、安定した結果が出やすいジャンプ・フローターを選択するケースが多いはずである。 また、スパイクでは、サイドは低くて速いセットを打つか、ハイセットを打つのかの二者択一になる傾向が見られる。MBでは特に白帯ギリギリの低いクイックを打つチームも多い。 世界の強豪国では、日本で大学生くらいの年齢のカテゴリであっても、上記の標準的なコンセプトのもとで育成・強化を行っている。そのため、トップ・カテゴリに上がった時に、高さやパワーの違いに戸惑うようなことはあったとしても、コンセプトの違いで悩むことはあまり無いようである。

日本では特定の戦術に特化して高校カテゴリで結果を出した選手が、上のカテゴリで適応できずに苦しむことが少なくない。 2020年に東京オリンピックが開催されるが、現在の高校生は十分主力選手になる年代である。 東京オリンピックで結果を出すためには、それを見越した育成・強化をおこなうことが必要である。 短期的なスパンで下部カテゴリにおいて結果を出すための方法論と、長期的なスパンでトップ・カテゴリにおいて結果を出すための方法論は、必ずしも同一ではない。 例えば、今回は大きく扱っていないブロックでは、世界の強豪国が選手に徹底的に習得させている正しい反応の仕方やブロック・ステップ、配置など、さらにはそのブロックと連携するサーブやディグなどが徹底されているチームは全国大会とは言え多くない。 これらの技術や戦術は習得するまでに、形となるまでに時間を必要とするものも少なくない。もしかすると、そうした技術の習得に使う時間を、別の技術の習得に費やしたほうが簡単に下部カテゴリでは結果が出るのかもしれない。

東京オリンピックに向けて、インスタントな比較的短期間で出来る技術、戦術だけではなく、トップ・カテゴリでも通用するような技術・戦術を育成・強化の段階で意識して選手に伝えることも大切であることは言うまでもない。 高校カテゴリの集大成として、春の高校バレーが見せる感動は疑いようもないものであるが、一方で「インスタントな育成・強化」になりがちであるという側面を指導者や観戦者も意識すべきであろう。 日本のトップ・カテゴリのバレーボールの育成・強化を考えるとき、実は多くの強豪国で「日本のように頻繁に全国規模の大会が行われていない」という事実がある。 ここから先は別の機会に述べることにし、素晴らしい試合を展開した両チームのメンバーに敬意の気持ちを示し、筆を置くことにする。

文責:手川勝太朗
神戸市立大原中学校教諭・日本バレーボール学会員

 
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