2016-07-17 17:26 追加
リオ五輪へ向けてブラジルチームの監督や選手の意気込みは
ブラジル男女代表の現在の心境を聞く
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グループ分け、試合順も決まり、いよいよリオ五輪がそこまで来た。チームの鍵となるのは誰か、12人のメンバー入りに向け国際試合に望む。
【女子チーム】
昨年はベテラン勢が休暇をとり若いチームで1年戦った。今年はベテラン勢が戻りロンドン五輪のメンバーとほぼ同じ顔ぶれとなった。しかし、W杯は不参加、五輪予選なしということで試合感覚がまだ取り戻せていない印象のグランプリのスタートとなった。
■大打撃MBカロルの離脱、控えセッターは誰に?
昨年、急成長し、スーパーリーグでも優勝の立役者となったMBアナ・カロリーナ・ダ・シルバ(カロル)。彼女が五輪でもチームを引っ張っていくと見られていたが、グランプリ開始前に背中と足首を痛め、全治6週間の診断。監督は回復を待ってからコンビを完成させるのは時間的に難しいとあきらめた。ベテランのファビアーナ・クラウジノ、タイーザ・メネゼスがどこまで調子をあげ彼女の穴を埋められるかに、ブラジルらしいMB中心のチームの完成はかかっている。
Sはダニエラ・リンスの控えが誰になるかが問題だ。リンスとコンビを組んでいたファビオラ・ダ・ソウザが昨年、妊娠、5月19日に出産という厳しい状況だ。6月20日より既にリオで練習を再開しているが、チームに合流するのはグランプリ後になる。本人の調子、技術はどうか気になるが、産後わずか1ヶ月で五輪のメダルを目指す激しい練習に戻ることに世間の批判も多い。グランプリはロベルタ・ラツケが控えに入っている。スーパーリーグ優勝チームのメンバーだが、なんといっても国際経験が不足している。
■監督、選手は五輪の組み合わせをどうみるか、チームの調子は。
ジョゼ・ギマラエス監督
「Bグループに昨年のW杯の1~3位の中国、セルビア、アメリカが入りました。こちらの組み合わせが楽なように見えるかもしれませんが、違った難しさがあります。粘りの日本、高さのロシア、そして拾ってくるアジアでありながら世界最高のスパイカーであるキム・ヨンギョンのいる韓国と違ったタイプのチームと戦わなければならないからです。後の2チームは失うものは何もないという勢いでくるでしょう。グランプリで手の内を隠すようなことはしません。一つでも多く戦ってもっと調子を上げなくてはいけません」
WSナターリア・ペレイラ
「ロンドンの時は、自分が選ばれるのか、チームのために何ができるか迷いがありました。今は自信を持って、自分がチームを引っ張らなくてはと思っています。」
Sダニエラ・リンス
「グランプリ前に親善試合が2試合だけだったので、試合感覚、コンビがまだまだです。試合を重ねていく中で、もっと調子をあげなくてはいけません。ポジション争いはどの試合でも大会でもあります。ギスギスした感じではなく、みんな本当に仲良しなんです。家族みたいです。全員の最高の力がだせるようにトスを上げる覚悟です。グランプリの日本戦は拾われて苦しい時に、MBタイーザ・メネゼスがブロックでうまく切ってくれて、サーブもこちらが走っていました。日本は五輪本番はまた別の選手でスタートでしょうが粘り負けしないように、連続得点を許さないように気をつけたいです。リオで開催なので、家族や友達の近くで素晴らしい応援と共に戦えるのが嬉しいです。本当に楽しみです。」
■ブラジル人記者の予想は。
新聞やサイトでバレーボール担当のブラジル人記者15人に女子のメダル予想を聞いてみた。全員そろった意見は残念ながら「ブラジルの3連覇はない」だった。優勝はアメリカか中国、3位はセルビアかブラジルというのがほとんどの意見で、やはり最後はロシアがメダルを取るだろうという人もいた。ブラジルにとっては準々決勝の組み合わせがかなり厳しくなるため、ここで敗退もあり得ると厳しい意見が相次いだ。
では、メダル争いに日本の名前があがらないのはなぜか聞いてみると、「Sem Takeshita(タケシタがいないから)」とチームの核となる選手がいない事と、ブロックで点が取れなければいくら拾っても勝てないというものだった。
【男子チーム】
■Sはブルーノ・レゼンデと37歳ウイリアム・アルジョーナ。
早々に五輪行きが確定したのがSとOPだ。ブルーノ・レゼンデと組むウイリアム・アルジョーナは37歳で初の五輪となる。クラブチームでコンビを合わせている選手も多く、安定性は抜群だ。OPは技とスピードのワラセ・デ・ソウザと高さのエバンドロ・ゲラ(元サントリー)になった。
サーブで崩し、ブロックで止めるというのは、ブラジルだけではなく世界の常識である。それだけでは勝てない。では逆に崩された時にどうするか。Sにパスが入らない時は、主にLセルジオ・サントスがトスを上げる。オープンに高く上げるだけではなく、縦パスでMBへ、OPのバックアタック、WSへ低めの平行トスと幅広いトスに驚かされるとともに、アタッカー陣もそこに入る準備ができている。サーブで崩されるだけではなく、相手がSブルーノに攻撃を集めてくる場面も多く、そこからいかに相手に的を絞らせない攻撃ができるかが鍵になる。
■悲願の金メダル奪回に向けた意気込みは
ベルナルド・レゼンデ監督
「厳しいグループです。最後に出場が決まったカナダ(第2戦)がひとつのポイントです。ここをしっかり勝ち切ってその後に勢いをつけたいです。世界のトップチームはどこも紙一重の差だと思いますが、個人的にはフランス、アメリカ、イタリアが優勝候補だと思います。自国開催のプレッシャーはありません。応援を自分たちの力に変えて戦っていくつもりです」
MBルーカス・サアットカンプ
「とても厳しいグループの組み合わせです。フランスがここ最近はとても勢いがあるので、予選の最後まで集中していきたいです。でもここまでくると、どことやるうんぬんより、金メダルをとるには全部勝つしかないんです。体育館がちゃんとできてくれればそれでいいです(注:4月に体育館の支柱に亀裂が見つかり補修中。完成は7月半ばの予定)。1シーズン初めてイタリアで戦ったことは自信になりました。五輪前にスパイというより、色々なタイプの選手と対戦して、自分の幅を広げられたと思います」。
先日、長男が誕生した。名前について、「妻はベルナルドにしたかったんだけど、ベルナルド(ベルナルド・レゼンデ監督のこと)はバレーだけでたくさんです。家の中にまでいるのは勘弁してほしいです」と、テオくんと名付けたそうだ。
五輪後に代表から退くことを発表しているWSムリロ・エンドレス
「そうですねえ、最後の五輪、代表になりました。五輪という意識より、ワールドリーグをまず戦って、それから、と、いつもと同じ気持ちです。終わった後にどう思うか、まだわかりません。五輪の試合順がブラジルが最後の試合なので終了が午前1時位になるでしょう。それから遠くの選手村に帰るので、翌日は休みといってもちょっと大変ですね。チームで誰がリーダーというより、全員が引っ張る。受け身で引いてしまわないで、最後までアグレッシブに集中していきたいです。」
■こちらも厳しい記者の目
ブラジル人記者の男子の予想は、優勝はフランス、準優勝ポーランド、3位はアメリカかブラジルというのが大方の意見だ。五輪はプレッシャーも半端ではない、女子同様に最後はやはり勝ち方を知っているロシア、ザイツェフの出来次第でイタリアがでてくるだろうという予想もあった。準々決勝でポーランドは避けたいが、ワールドリーグでなかなか勝ちに結びついていないアルゼンチンとイランも病人やけが人が調子を戻して加わればまだ力は上がる。決して気を抜けない相手だ。
■リオ五輪観戦にいらっしゃる方へ
バレーボールはマラカナン・サッカー場の隣りの体育館(通称マラカナンジーニョ)で試合があります。サッカー場で開・閉会式といくつかのサッカーの試合が予定されており、五輪期間中はサッカー場、体育館の周りの道路が一般車両通行止めの予定です。まだ、具体的な内容、例えば、サッカー場を使う日だけ閉鎖するのか、夜間は通れるのか、タクシーは認めるのかなどは発表されていません。治安を考えてタクシーを行き帰り利用する予定の方も多いと思います。必ず入場前に帰りのタクシー乗り場を確認して、暗くなってから迷わないように気をつけてください。
文責:唐木田真里子(サンパウロ在住)
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