全日本バレー、Vリーグ、大学バレー、高校バレーの最新情報をお届けするバレーボールWebマガジン|バレーボールマガジン


バレーボールマガジン>ゲームレポート>リオ五輪女子~データによる日本チームの振り返り~

ゲームレポート

2016-09-23 17:35 追加

リオ五輪女子~データによる日本チームの振り返り~

~データによる日本チームの振り返り~

Others / 全日本代表 女子

2016年リオオリンピックバレーボール女子は既報の通り中国が優勝し、日本は予選はA組4位で準々決勝に進出し、アメリカに敗れ5位という結果となりました。本記事では、日本のデータを詳細にみることによりリオオリンピックの振り返りをしたいと思います。

まずは、前回筆者が注目したスパイク、セットのデータを試合別に統計を取ったものを示します。(クリックすると拡大します)

%e5%9b%b32-1_%e3%83%ad%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%b3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%82%af%e5%9b%b32-2_%e3%83%ad%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%b3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%bb%e3%83%83%e3%83%88

 

 

 

 

 

%e5%9b%b32-3_%e3%83%aa%e3%82%aa%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%82%af%e5%9b%b32-4_%e3%83%aa%e3%82%aa%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%82%af
アタックについては、ロンドンではアタック決定率が大会平均を上回っている試合が半分程度あるのに比べ、リオでは1試合もありません。アタック失点率はそれほど変わらなかったので、リオではアタック決定率が下がったため、アタック効果率も下がってしまったといえそうです。(アタック失点率が低い試合もあったので、大会平均を上回っている試合もあります)
ロシア、ブラジル戦に関してはロンドン、リオともにアタック効果率、アタック失点率が15~20%の間でほぼ近い結果になったのは興味深いところです。
セットのランニングセット率に関しては、アタック決定率とほぼ同じ傾向でした。こちらもリオでは1試合も大会平均を上回っていません。ランニングセット本数は前回でも触れたとおり「ブロックが1枚orつかない状態でアタックが決まったもの」でありアタックが決まらなかった時にはカウントされません。ですので本数が少ない(率が低い)のは
・単純にブロックが1枚orつかない状態が少なかった
・ブロックが1枚orつかない場合でもアタックが決まらなかった
と2つの可能性があります。

次にポジション・選手別のアタック占有率について統計を取りました。
%e5%9b%b33-1_%e3%83%ad%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%b3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%a2%e3%82%bf%e3%83%83%e3%82%af%e5%8d%a0%e6%9c%89%e7%8e%87%e5%9b%b33-2_%e3%83%aa%e3%82%aa%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%a2%e3%82%bf%e3%83%83%e3%82%af%e5%8d%a0%e6%9c%89%e7%8e%87
筆者はデータを集計する前はMBの本数が少なかったという所感を持っていたのですが、実際はロンドン19.24%→リオ17.28%とそれほど落ちてはいませんでした。ただリオでは全てのセットに出ていた荒木選手が6.23%とロンドンでほぼ出ていた大友選手の10.78%に比べ少なくなっています。荒木選手が前衛の際の本数が少なかったことにより実際より本数が少ないという印象を与えたのかもしれません。また木村選手はロンドン、リオ全セットに出ていますが、31.51%→23.80%と下がっています。WSとOPに関しては占有率がかなり変わっていますが、これにはからくりがありロンドンではWSの江畑選手、迫田選手がレセプションに入らない変則のフォーメーションでした。この2人の合計は31.23%でありリオのOP32.15%とほぼ同じ数字です。総合してみるとロンドン、リオともにそれほどポジションによる占有率は変わっていないといえます。

最後にポジション・選手別のアタック関連の統計を取りました。
%e5%9b%b34-1_%e3%83%aa%e3%82%aa%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%82%af%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3%e3%83%bb%e9%81%b8%e6%89%8b%e5%88%a5%e5%9b%b34-1_%e3%83%ad%e3%83%b3%e3%83%89%e3%83%b3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e3%82%b9%e3%83%91%e3%82%a4%e3%82%af%e3%83%9d%e3%82%b8%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3%e3%83%bb%e9%81%b8%e6%89%8b%e5%88%a5
ロンドンでは選手別、ポジション別ともにそれほど波はなく大会平均前後をマークしていますが、リオについてはWSの数字がかなり落ちています。WSスパイク占有率が50%近くあるのでWSの数字が落ちたことにより全体のスパイク関連の数字が落ちたようです。

ここからは前回見た数字も合わせてリオで成績を上げられなかった理由について考えてみたいと思います。
日本が目指していた四つの世界一のうち評価が可能な「サーブ」「サーブレシーブ」「ディグ」に関してはロンドン、リオともに相対的に優位に立っていましたが、それよりもアタックの決定力を上げるほうが得点の機会が増え勝利に近づくのではないかということです。実際ロンドンの総合のアタック決定率は平均より上回っており、試合毎で上回っている試合はすべて勝利をしています。逆にリオに関してはアタックの決定力が下がっており、アタック決定率が低い試合は敗戦という結果となっています。
アタック決定力が下がっている理由を考えてみると、前回取り上げたサーブが全体的に強化され、レセプション率が下がっている流れがある中でAパス主義で緻密なコンビを組み速いセットで相手を振るという日本のコンセプトがマッチしにくくなっている点がまず挙げられます。「レセプションが崩された場合」のオプションがないと手詰まりになり後手後手に回ってしまいます。次にランニングセット率が低かったことから、コンビを組んでも相手を振れず、振れたとしてもスパイク力自体がなく決められなかったことも考えられます。(レセプションを崩されてコンビを組むに至らなかった可能性もあります。)最後に選手選考で守備力を買い鍋谷選手、レシーバーの座安選手を最後の1人に入れ守備重視のチームを作ったことが挙げられます。WSが3人となり木村選手が調子が上がらないケースでも交代できるメンバーがいませんでした。WSのアタック決定率が上がらなかった要因の一つになったと思います。

ロンドン→リオと時代が進みデータから見ても変化がみられる中、日本は4年間の中でいろいろなことを試しながらもオリンピックの2大会としてはほぼ同じコンセプトでより守備的な方向に進んだように思います。このままのコンセプトを突き詰めていくことで本当に世界に追いつけるのか、考えなければいけない岐路に立っていると筆者は考えます。

 

黒羽白

引用データ
・FIVB http://www.fivb.org/
・Rio2016 Volleyball https://www.rio2016.com/en/volleyball

>> ゲームレポートのページ一覧へ戻る

同じカテゴリの最近の記事

コメント

Sorry, the comment form is closed at this time.

トラックバック