2019-03-29 12:00 追加
JT・深津旭弘「控えの選手があれだけやってくれたことは良かった」 豊田合成・高松卓矢「アンディッシュはバレーボールの父で、イゴールは兄のような存在」
SV男子
■豊田合成トレフェルサ
●古賀幸一郎主将
シーズンの最後ということ、 また、(クリスティアンソン)アンディッシュ(シニアヘッドコーチ)とイゴールが最後の試合ということで、本当は勝利で飾りたかったのですが、それができなかったのは自分たちの今の実力だと思います。 また来年プレーできるチャンスがあるのであれば、 しっかりチームとしていい結果が出せるようにしていきたいと思います。
●高松卓矢選手
古賀さんも言った通り、二人の最後の試合だったので、しっかり勝って二人を送り出したいという気持ちが強かったのですが、残念ながら試合は負けてしまって、これが今の僕らの現状というところです。 この現状をしっかり見つめ直して、また来年、自分たちがやらなければならないことを再認識して、しっかり頑張っていきたいなと思います。
●イゴール・オムルチェン選手
トータルで7年間、日本でプレーしましたが、まず、今日は素晴らしいセレモニーを企画していただき、ありがとうございました。7年間、素晴らしい思い出がたくさんあります。
今日の試合は、 我々もいい準備をして臨みましたが、今シーズン、JTさんが素晴らしいプレーをされていますので、それが我々を上回ったということだと思います。我々はいい試合をできたと思います。
――古賀選手、高松選手に。アンディッシュ、イゴールと一緒にバレーができたことにより、ご自身のキャリアの中でいちばん影響を受けた部分はどのようなことでしたか?
高松:イゴールは JTさんにいた頃から凄みのある選手だと思っていました。豊田合成に移籍してきて、その凄みがさらに上がって、どんな球でも決めてくれる本当に素晴らしいプレーヤーになったと思います。でもその凄さを全然鼻にかけない、人間性もしっかりしている選手でした。
印象に残っているのは、5年前、イゴールが豊田合成に来た年は、僕は持病の腰痛が大爆発して、プレーが何もできないシーズンでした。試合に出てもパフォーマンスが出せない、トレーニングしても腰が痛くなるという状態。僕はトレーニングがベースでバレーボールができているので、 トレーニングができないと全然パフォーマンスが上がらないんです。それで無理してトレーニングしようとすると腰が悪くなるという悪循環に陥っていました。でも、そのシーズンの前のシーズンは調子がよくて、翌年も結果を残せそうだと思っていたのに腰痛のせいでこのような状態になっていたんです。そんな僕を見かねたイゴールが「お前はチームの元気印で、チームの太陽みたいな存在なんだから、お前が下を向くとチームが暗くなってしまう。お前がつらいのはわかるけど、俺がしっかりカバーしてやるから、しっかり元気を出して、声出しして頑張ってくれ」と言ってくれたのを今でも憶えています。
その時からイゴールはプレーだけでなく人間性も素晴らしいプレーヤーで、本当に尊敬できる、僕のバレーの兄貴みたいな存在と思うようになりました。
アンディッシュについては、皆さんもご存知のように、僕はアンディッシュが来るまではプレーも安定せず、守備も今よりひどかったですし、攻撃力はあったかもしれないですけど、ジャンプ力があるだけで安定感も全然ない選手でした。僕自身もバレーボールのレベルの頭打ちというものを感じていて、「ここらへんが頭打ちなんだろうな」と思っていた時にアンディッシュが来ました。
僕はチーム内でもいちばんアンディッシュとの喧嘩が絶えない選手だったと思います。最初にチームに来た時は自主練の最中だったのですが、彼は英語でコミュニケーションをしてきました。アンディッシュは来る前から選手たちに英語を勉強するように伝えてきていたのですが、僕は「どうせ通訳がつくからいいだろう」と思い、全然英語の勉強をしていなかったんです。するとアンディッシュはコーチの藤田(和広)さんに「おい、どうなってるんだ? こいつは全然英語の勉強をしてないじゃないか!」と英語でまくしたてました。そして、僕に「お前は去年までレギュラーだったのか知らないけど、英語をしゃべらないなら二度と使わないからな」と。これは本気で言っている。まずいなと思いました。
アンディッシュは、「私が今から日本語の勉強をしても何の役にも立たない。それよりも君たちが英語を勉強した方がこれからの人生に生きてくるから、英語を勉強して、通訳を介さずにコミュニケーションを取れるようにしなさい」と。そこから僕も英語の勉強を始めましたが、アンディッシュからはいろいろなことを教えてもらいました。
そして、このシーズンは目に見えて出来が違い、今でも憶えているのは記者の方に「今年全日本に選出されたら、どんなプレーをしたいですか?」と質問されたことです。それまではそんな質問を一度もされたことがなかったのに、僕の勘違いではなくて、皆さんが見てわかるレベルで、僕のプレーのレベルの質が3つも4つも5つも上に上がった。僕のレベルをそこまで上げてくれた。彼は僕にとってバレーボールの父のような存在です。
古賀:本当にチームを助けてくれた、大きな存在の二人がいなくなるという実感が徐々に湧いてくると思います。イゴールはJTから数えて、日本に約7年いて、豊田合成には5年間いてくれました。外国人としてのエゴとかそういうものではなく、チームのために本当に献身的にプレーするその姿勢に心を打たれた選手やファンも多かったと思いますし、先ほどのセレモニーもそうですが、あんなに愛される外国人選手はなかなかいないのではないかと思います。僕は彼の大きな力により初めて優勝も経験させてもらいましたし、 感謝の言葉も何度言ってもきりがないくらいですが、 それよりも「こんなに日本人に愛された特別な存在の外国人選手はいない」というのが彼に対する一番の言葉ではないかと思っています。
アンディッシュに関しては、彼がチームに来てから6年間一緒にやってきて、自分がキャプテンを務めてチームを作り上げてきたり、いろいろなことをやってきました。彼は日本人以上に「和」を尊重するイメージがあります。外国人は個を尊重したり、自己中心的な発言が多いイメージがあったのですが、彼は試合に出ている選手、出ていない選手に限らず、自分から一生懸命会話して、その人の人間性であったり、いろいろなものを探ろうとして、 どうやったらチームに還元できるのかということを常に献身的に考えて、指導してきた6年間でした。
我々選手のバレーボール人生において、この6年間というのは今後、間違いなく大きな宝物となっていくのではないかと思います。僕らは彼らがいなくなることをまだ現実的に受け止められていないのが現状なので、このくらいにしておきますが、後々、そういった思いがふつふつと湧き上がってくると思います。 そのくらい「もっと一緒にいたかったな」と思わせる、偉大な外国人選手とスタッフが日本を離れるので、できるだけ大きな記事にして送ってあげてほしいなと思います。
――イゴール選手に。いろいろなクラブでプレーしてきた中で、最後となった日本の豊田合成というチーム について、どのように思われていますか?
イゴール:プロのキャリアを始めて20年になりますが、 豊田合成に来て思ったこと、そして今もずっと感じていることは、スタッフ、選手全員が素晴らしい人たちばかりだということです。 自分とアンディッシュは1年違いでチームに来ましたが、最初はほぼゼロからのスタートでした。今ほど輝かしい成績ではなく、5~6位辺りを行ったり来たりしているチームでしたが、ここから全員が力を合わせて今まで築き上げてきました。今では素晴らしい、輝かしい成績をおさめられるチームになりました。ファイナル、今年は残念でしたが。お互いに過ごした時間は何の疑いもなく素晴らしいものでした。
我々のチームにはスーパースターはいません。でも、戦術を重視して、みんなで力を合わせ、この輝かしい成績を残してきました。
―― 古賀選手と高松選手に。アンディッシュとの出会いにより、ご自身が変化した部分は?
高松:間違いなく僕が言えるのは、アンディッシュが来て、バレーボールの知識、戦術、スキルなどいろいろなものを教わったことにより、バレーが好きになりました。30歳を超えた今もバレーボールが上手くなっているという自覚がありますが、上手くなれている要因のひとつとしてバレーボールが好きになったことが挙げられると思います。
ケガがなく、コンディションがいい時は「明日の練習でこんなことをやってみよう」とか、「今日はこのプレーができていなかったから、もっとこういうことを明日やってみよう」とか、 練習以外の時でも自分がどうやったらバレーボールが上手くなるかということを考えるようになりました。それ以前は練習があまり好きではなかったですし、バレーに対してポジティブに向き合うことが少なかったのではないかと思います。
アンディッシュにバレーボールを教わり、上手くなるにつれて、 もっとこういうことをやってみたいという意欲や向上心が芽生えました。結局、 向上心がなければバレーボールも上手くならないですし、 バレーボールが上手くなればもっと好きになる。そういう意味でアンディッシュはどうしたらバレーが好きになれるか、もっとうまくなれるかというのを本当の意味で教えてくれた人だと思います。
古賀:アンディッシュがもたらしたものは大きいと思いますが、彼を連れてきたから簡単に強くなったというものではなく、恐らく日本人一人ひとりが「このままじゃダメだ」という思いが強くて、そういう中でいい化学反応があって、イゴールが来てという流れがある中で、一概に「自分たちはこうやって強くなったんだ」と説明できるような軽いものではないと思います。
多分、いろいろなものが複雑に絡み合った上で、結果としてチームとしていいものができあがっている。その中心部にいるのはアンディッシュやイゴールであるのは間違いなく、みんなで作り上げたチームの真ん中に二人がいたというイメージです。
これが答えになっているかどうかわかりませんが、そんな簡単に答えられるレベルの質問ではないかなと思います。
――イゴール選手に。今後について教えてください。クロアチアでバレーボールに携わるのでしょうか?
イゴール:二人の子どもがクロアチアの家で待っているので帰国します(笑)
今後については、コーチはしたくない(笑) まずは体を休めて、ゆっくりしたいです。その後、今後のことについては家族と決めていきたい。特に妻と話して決めていきたいです。コーチはしたくないと言いましたが、バレーには何らかの形で関わっていきたいと考えています。例えばクロアチア協会関連の仕事なども考えられると思います。
――日本での思い出は?
イゴール:たくさんあります。特に優勝した年のことは印象に残っています。あの年は出来がよすぎるほどで、 かなりの確率で決められましたし、勝てていました。そのシーズンのことはひとつのことだけでなく、いい思い出になっています。Vリーグでも天皇杯でも勝てましたし。
●ティリカイネン・トミー監督
結果にはあまり満足していないのですが、ベスト3に入ったチームには本当に敬意を表し、「おめでとうございます」と言いたいです。バレーボールに関わるすべての方々がシーズンをいい形で終われるように願っています。
――今シーズン、いろいろな形を強いられましたが、そうだったからこそ来季につながる部分は?
トミー:先ほども申し上げたように望んだ結果ではなかったのですが、チームワークもよく、いいプレーがかなりできていたので、それが役立つと思います。困難な状況の解決策もできたので、今後の財産になるのではないでしょうか。個々のこと、チームのこと、いろいろ生かしていけると思います。また我々に陽が当たる日がきっと来ると思います。
――アンディッシュ監督と一緒にやってきた2シーズンを振り返って。
トミー:バレーボールだけでなく、人生のこと、生活のことなども腹を割ってオープンに彼と一緒に話ができました。彼からは特にチームワークをどのように作っていくかについて学びました。
写真:黒羽白、大塚淳史
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