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インタビュー

2013-09-07 23:12 追加

最後の、スーパーエース (後編)

SV男子 / 全日本代表 男子

――世界のバレーと仰いましたが、どんなことが主流になっている?
日本もやろうとしていますけど、真ん中のバックスパイクを増やしていこうとしていますよね。それをすると、今言ったようにウイングスパイカーの負担が多くなります。ブラジルなんかでも、ウイングスパイカーの打数の方が多いし、ロシアとかもそうですし、世界の強豪はオポジットだけじゃなく、上手く真ん中を見せながらのサイド攻撃をやっていると思います。

――真ん中ということはもちろん速攻とかも入れて?
もちろん入れてますね。常に4枚、ないしは5枚攻撃で同時に仕掛けようとしているんですね。

――それは日本もやろうとしている?
やらないと勝てないでしょ。

――なるほど。
今までのバレーは結局、真ん中の本数が少なくて、終盤にサイドサイドになるから、ブロックでふさがれて、今まで決まっていた攻撃も決まらなくなって終わるという負けパターンが多かったから。今は逆に、今回(ワールドリーグで)3勝しかできなかったけど、終盤でもサイドへのマークは薄くできていたので、真ん中を効果的に使うということはできていたんじゃないかなと思いますね。

VBWSQ130905_05109kondo――全日本の今のトスについてもう少し教えてもらえる? あえてやっていたということを。
短くしているというやつ? 

――そうです。
あれはただ、1メートルくらいトスを短くして、スパイカーが回り込まずに打てるようにしているんです。

――アンテナが視界に入らないようにすることによってストレートを切りやすくするって仰ってましたよね。
それはハイボールについてね。
普通のコンビでもトスを1メートル短くして、ブロックの基準をまず中側に寄らせて、ライン側を空けさせるというのが一つの狙い。それと、今まで日本のスパイカーっていうのは、外からぐるっと回り込んで打っていたんですね。極端に言えばネットに対して体が90度くらいになってたのを、そうじゃなく胸がネットと並行になるくらいに入って、スパイカーの判断で打つっていうのが今の考え方。

それがうまくいけば、相手ブロックも基準つくりづらいし、ラインもある程度勝負できるのかなと。少々崩れたラインを打ってもブロックをはじきやすくなるし。きれいに抜く必要がなくなるっていう。逆にアンテナまで伸ばしてたら、本当にきれいに抜かないとラインなんか打てない。結局そこでセッターのトスが短くて、今までだとクロスクロスで勝負になって止められてというパターンだったので。そういうシーンが減るのかなと。

――短くしても打てるということ?
短くなると思って入ってますからね。

――ロンドンOQTまで2年くらいやっていた速いバレーというのはどんな感じだったの?
あれはあれでメリットもあったんですよ。デメリットとして、スパイカーの最大の技量を発揮できないということが言えます。セッターによって打つコースをあらかじめかなり限定されてしまうんですね。ゲーリーさんは逆のパターンを選んだという感じですね。

――どっちもいいところと悪いところがあるけど、ゲーリーさんはそうでないバレーを選んだということ?
そうですね。別に一本で決めろといわれている訳じゃないんで、リバウンドもらったり、次切り返してとっても、その攻撃は一点なんで。それが今までみたいに高速バレーしていいると、そういう判断もできなくなっちゃうんですね。

IMG_2456inta――2000年くらいに宇佐美君と隆弘君と二人でいるところで私が聞いたコメントで、宇佐美君は速くて低いトスをやろうと思っていたんだけど、宇佐美君がいうには、「隆弘が高いトスが好きだから、結局高いトスにした」みたいな話をきいたことがあるんですよ。隆弘君も「そうそう」って。

それいつのことですか?

――2000年のワールドリーグが終わる頃くらい。
その当時はスパイカーが2枚ブロックに対してどう勝負するかというのが主流のバレーだったじゃないですか。あのときは本当に自分一人で打っていたので、自分一人で勝負するのであれば、ある程度高いトスをもらって勝負した方がいいのかなと思って高いトスをもらっていたんです。

――じゃあ、場合によっては低くて速いトスも打つ?
低くて速いトスなんてのは簡単に打てるんですよ。ただ単に速く打てばいいだけなんで。ブロックとどう勝負するかは別ですよ。でも逆にいえば、若い奴らなんかは、速いトスでやることでごまかしてきちゃって、ハイボールが打てなくなっちゃってるんですね。
高いトスの方がボールをずっと見なきゃいけないんで、難しいんですよ。

――なるほど。そういったところも、山本さんらしい解説でうかがえるといいですね。
頑張ります(笑)。

大古誠司、田中幹保、中垣内祐一、山本隆弘と続いてきた「エース」のポジションは、冒頭で述べたように中垣内の時代に「スーパーエース」と呼ばれることになった。アンドレア・ジャーニ、ラファエル・パスクァル、イヴァン・ミュリコビッチら、世界にも名だたるスーパーエースが輩出された。

しかし、山本が植田監督のもとで全日本に復帰した頃には、そうしたバレーは、世界では時代遅れなものとなりつつあった。それとともに「スーパーエース」という呼称もなりを潜め、セッターの反対のポジションという意味のオポジットとのみ呼ばれることになる。日本のラスト・スーパーエース。かつてその左腕に、日本男子バレーの全てを負っていたこともある。山本隆弘の第二の人生に幸多かれ。

聞き手:中西美雁
写真:Michi Ishijima、Mikari

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