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コラム

2013-12-23 17:19 追加

世界のバレー会場から 第一回 ロシアリーグ

海外バレー観戦の楽しみをつづる連載

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これが常識? ロシア男子バレー「スーパーリーグ」観戦

「身長218cmのロシアのミドルブロッカー、ムセルスキーの靴のサイズは35cm!」、「イタリアのオポジット、ザイツェフの父はロシアのナショナルチームで活躍していた!」…そんな選手情報を織り込みながらのTV放送や会場DJ。この秋日本で開催された「ワールド・グランド・チャンピオンズ・カップ(通称グラチャン)」が、海外バレーへ目を向けるきっかけになった、という方も多いのではないでしょうか。華麗なコンビバレーに、2段トスからの豪快なスパイク、連続する強烈なサーブ…。目を奪われるプレーの数々はもちろん、試合後のファン対応も紳士的な選手が多い海外チーム。低迷から脱却しようともがいている龍神ニッポンの向かいのコートで、目指すべきバレー形やその魅力をたっぷりと日本国民に見せてくれました。

そんな海外諸国でバレーという競技はどのように親しまれているのでしょうか。実際に観戦しに行ってみると、日本の常識では考えられない場面に遭遇します。

グラチャンでは惜しくも優勝はできなかったものの、ここ数年各タイトルを総なめにしてきたロシアでは、サッカーやアイスホッケーには人気ランキングの上位を譲りながらも、バレーボールは年配男性の娯楽として親しまれています。

O私の訪れたニジニ・ノヴゴロドのチーム「Gubernija」、ヤロスラヴリのチーム「Yaroslavich 」、それぞれのホーム体育館でもある試合会場は地元市民が利用する一般施設であり、馴染みのある日本の施設に例えるなら、堺ブレイザーズのホーム「新日鐵住金堺体育館」程の大きさでした。

驚くべきなのは入場料です。この2つの会場はどちらも無料で観戦可でした。試合開始の1時間半前には早くも観客が集まり始め、開始までの時間を、新聞を読んだり談笑したりのんびりと過ごしています。休日の夜、誰でも自由に観戦できることで、試合開始時には立ち見も出るほどの盛況ぶりなのです。公共交通機関では訪れにくい場所だけに、ほぼ地元住民で賑わっていました。

集団でのサポーターや応援団はみられず、小規模なグループや個人が自由に声を出し応援するスタイルです(時には審判の判定に納得できず、ヤジが飛ぶこともありました)。ボードやフラッグなども見られず、会場でのグッズ販売等もこの2箇所では見られませんでした。カメラさえも試合中に構えているのは観客のわずか数%ほどで、少数の若い女性のみ。休日の夕刻にふらっと訪れたような観客は、あえて最前列を避けながら、アトランダムに座席を埋めてゆきました。

Oナショナルチームのレベルに比例するように、非常に質の高いロシアスーパーリーグ。イタリア、ポーランド、セルビア、ドイツ、アメリカ…それぞれのチームには世界各国から優秀な選手が集まり、国際色豊かな顔ぶれです。ナショナルチームで活躍してきた名セッターや、小柄な190cm代のアタッカーも活躍し、高さ+技術を堪能できる贅沢なリーグといえるでしょう。会場や座席によっては日本のスーパーシートよりも至近距離で観戦でき、高い打点から放たれる殺人的なスパイクの勢いを肌で感じることができるほど。バレーは格闘性の低い競技だという思い込みは打ち砕かれ、恐怖すら感じました。

Oそんな観戦の最後に待ち受けていたものは、選手との自由な接触でした。試合終了と同時に観客が土足でコート内へとずかずか入り込む光景に、日本人としてはためらいを感じずにはいられません。カメラを片手に選手へ押し寄せる観客は若者だけでなく、年配の男性も多数いました。中でも衝撃を受けたのは、MVP常連のムセルスキーへの密集度。試合終了時、両チームの握手が終わるやいなや会場の観客半数以上が押し寄せ、あっという間に3重4重もの輪に。写真なり握手なりの全ての要望に応えるまで、2、30分を要していました。それも、たった一人、介添えのスタッフ等なしで。ムセルスキーは、自分に近寄って来る観客がいなくなったのを確認してから、控え室へと戻っていったのでした。

最高峰のバレーが無料で観戦できるロシアは、スーパーヒーロー達と触れ合える機会もあり、バレーが身近なものとして生活の中の娯楽のひとつとなっていました。ホーム&アウェイの戦いを隔週で行うロシアリーグですが、ロシア国民にとってバレー観戦は決して特別なイベントではなく、隔週末の定例行事だといえます。試合のTV放送も合わさって、バレーを気軽に楽しめる環境が整っていました。

バレーボールは、サッカーや野球に比べて、観客と選手・チームとの距離が近いですよね。ワールドリーグやワールドカップなど、2014年、2015年と日本で開催される国際大会は続きます。龍神ニッポンのみならず海外チームへの興味を持つことで、「バレーボール」という競技をワールドワイドに捉えられると、また違った面白さに気づくことができるかもしれません。

来年5月のワールドリーグですが、幸運にも出場資格を与えられた全日本男子は、アルゼンチン、フランス、ドイツと戦うことになりました。レベルの高いプレイを堪能できるチャンスです。これまで海外チームに興味がなかった方も次回は注目してみてはいかがでしょうか?

文責:宮﨑治美
1976年長崎県生まれ。2007年ワールドカップをきっかけにバレー観戦を始め、2009年頃から徐々に海外へも観戦に行くように。海外観戦数はヨーロッパを中心に4年間で計50試合以上。バレー未経験ながらも、コートの中で繰り広げられるドラマ、選手の人間性に魅了され観戦し続けている。

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