2014-02-22 13:14 追加
Evidence-based Volleyball事始め 第7回 サービスエース考
今回も前回に引き続き「サーブ効果率」のエビデンスについて考えていきたいと思います。
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はじめに
またまた前回より間が空いてしまいましたが、今回も前回に引き続き「サーブ効果率」のエビデンスについて考えていきたいと思います。サーブ効果率の計算式は、以下のようになっています。
サーブ効果率= {(100 × ノータッチエース+ 80 × サービスエース+ 25 × 効果)} ÷ 打数
この各指標にかかる係数の妥当性はいったいどこに?というのが主なテーマなのですが、今回はなかでも、ノータッチエースとサービスエースに注目してみたいと思います。
この2つの指標を選んだ理由は、
「サーブによる得点であることには変わりがないのに、分けて考える必要があるの?」
という疑問からです。また、ノータッチエースには100の、サービスエースには80の係数がかかっています。これは1本当たりの価値がノータッチエースのほうが1.25倍高いことを意味しています。
1.25倍という数値の厳密性はともかくとして、同じ本数であれば、ノータッチエースの価値が高いことを意味する計算式なのですが、本当にそうなのだろうか?というのが今回のテーマとなります。
分析データ
分析にはVプレミアリーグ2006/07大会から2012/13大会までの男子1480チーム、女子1634チームのデータを使用しています。
基礎統計値
まずは、各指標の基礎統計値として平均値、標準偏差、最小値、最大値のデータを以下の表1に示します。
このデータより、各指標の平均値±標準偏差の範囲を普通の成績と見てもらえればと思います。平均値のデータを見ると、男女ともにノータッチエースのほうが低いことがわかります。
次に、各指標の分布を以下の表2と図1に示します。
女子の場合、大半の試合でノータッチエース率が1%未満であることが確認できます。その分、2%以上のエースの試合が男子より多いことがわかります。ノータッチエース率の平均は男子のほうが高く、エース率の平均は女子のほうが高いのはこうした分布の違いを反映したものといえます。
以上のデータは、試合中に起こる頻度がノータッチエースのほうが稀であることを示しています。この傾向は女子のほうが強いようです。ただし、稀だから重要であり、価値があるとは限りません。
ノータッチエースとサービスエースと勝敗の関係
それでは、ノータッチエースとサービスエースの価値の違いについて考えてみたいと思います。一言で価値といっても、何に価値を見出すかは人それぞれです。今回はその価値について「勝利にどれだけ貢献するか」ということから評価していきたいと思います。
というわけで、ノータッチエース率とサービスエース率が上昇することでチームが勝率する確率がどう変化するかをまとめてみました。まずは男子のデータを以下の表3-1と図2-1に示します。
続いて、女子のデータについて以下の表3-2と図2-2に示します。
男女ともに、ノータッチエース率とサービスエース率が高くなるほど勝率が高くなることを確認できます。仮にノータッチエース率のほうが勝敗への貢献度が強ければ、同じだけ成績が上昇しても、勝率の上昇幅は大きくなるはずです。図でいえば、折れ線の上昇の角度がより急になります。しかし、実際のところデータを見ても勝率の上昇に差があるようには見えません。
一応確認のために統計解析でも勝率への影響度を比較しましたが、勝敗への貢献度の高さはサービスエース率のほうがわずかに上でした。ここであまりその過程を詳しく説明するとややこしいので、以下に簡単に結果だけ示しておきます。
分析方法としてはロジスティック回帰分析という手法を用いてオッズ比(勝敗への影響力)を計算しましたので、これを以下の表4に示します。
これは数的な根拠として、こんなものかと思っていただけると助かります。
まとめ
以上の分析結果より、少なくともノータッチエース率のほうに重みをつけて評価する現行の方法には問題があるのではないかと思います。統計的に見れば、勝敗への影響力が強いのは、わずかではありますがサービスエース率のほうだし、この差も殆ど無いといってよいものです。
わざわざ別にして、しかも係数を変えてまで評価する必要はないのではないか。
というのが今回の結論になります。
今回は勝敗への影響の強さという観点から分析しましたが、次回は個人の能力としてのノータッチエース率とサービスエース率という観点からデータを見てみようと思います。
引用データ
文責:佐藤文彦
「バレーボールのデータを分析するブログ」http://www.plus-blog.sportsnavi.com/vvvvolleyball/ の管理人
Coaching & Playing Volleyballにて「データから見るバレーボール」も連載中
バレーボール以外にも、野球のデータ分析を行う合同会社DELTA にアナリストとして参加し、「プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクス・リポート」や、「セイバーメトリクス・マガジン」に寄稿している。
第1回Evidence-based Volleyball事始め
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